Category Archives: 学生

たたずむ

5月23日(月)

今週は、アートウィークです。腕に覚えのある学生が、作品を展示したり演奏などを披露したりしてくれます。去年はなかった、クラブ活動の発表も予定されています。

展示会場で作品を見てみると、私の知っている名前もいくつか。Aさんってこんな趣味を持っていたのか。Bさんの感性はなかなか鋭いなあ。Cさんは芸術系志望だから、これくらいは当然かな。…などと、勝手な感想を抱きつつ、鑑賞させてもらいました。

私には芸術的素養というものが欠如していますから、絵を描くとか写真を撮るとか動画をつくるとか、そんな活動は一切しません。でも、ほかの人の力作を見るのは好きです。私の「素晴らしい」と、多くの人たちの「素晴らしい」とが一致するかどうかはわかりませんが、私なりのポイントで芸術作品や文化財を見てきました。

そういったものを見てしばらくその前から動けなくなったのが、ルーブル美術館のモナ・リザと、吉野の金峯山寺の金剛蔵王権現です。モナ・リザは、ルーブルの中では小さい部類に入る絵ですが、オーラというよりは引き付けて放さない何物かを強く感じました。金剛蔵王権現は、青い仏像です。数年前の御開帳で見て、その前に座り込んでしまいました。何かを願ったり祈ったりするのではなく、ただその前から離れがたかったのです。

そんな私の目で見て、じっとたたずんでしまったのが、Dさんの写真とEさんの絵です。この手の作品をもっと見てみたいなあと思いながら、会場を後にしました。明日もまた、見に行くつもりです。

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EJUじゃなくて

5月19日(木)

理科系のGさんは、6月のEJUも受けますが、現時点で第一志望の大学の入試は、EJUが不要です。日本人の受験生と同じ試験を受けて、同じ合否基準で判定されます。共通テストは不要で、独自試験で合否が決まるようですが、外国人留学生にとってはかなり難関です。

理科系ですから、独自試験は数学や理科です。筆記試験ですから、マークシート方式のEJUとは問題の作りが違います。一問一答とか、誘導に従っていけば答えにたどり着くとかいった問題ではなく、自分で論理を作り上げていかないと答えに到達しません。そうすると、EJU対策だけでは不十分です。数式を変形したり、化学反応式を書いたり、日本語で書かれた長い問題文を読み解いたりしなければなりません。

最近、留学生入試ではない入試を通って大学に入る留学生が増えています。Gさんのように、志望校の志望学部学科に留学生入試が設定されていない場合もあれば、留学生入試にはつきものの面接試験を避けるために一般入試を選んでいることもあると聞いています。しかし、Gさんは日本語を話す力は十分にありますから、それを活用しない手はありません。

ですから、志望校の入試方式を詳しく調べるように指示を出しました。私が受験生だったころとは違って、今は大学1年生の半分かそれ以上が一般入試以外の方式で入っています。Gさんの特色が生かせる入試方式がないとも限りません。少しでも有利な戦場で戦うことも、受験に勝ち抜くには必要なことです。

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硬い教室

5月17日(火)

中間テストがありました。私が試験監督に入ったクラスは、諸般の事情で、いつものクラスをばらして再組成したクラスでした。今までなら、こういう場合でも、前の学期は同じクラスだったとか、クラブ活動で顔なじみだとかという組み合わせがいるものですが、今学期はそういうパターンがほとんどありません。先学期はほぼオンライン授業でしたから、たとえ同じクラスだったとしても生身の接触がなく、クラブ活動もなく、しかも来日したばかりの学生が結構な割合で含まれているというわけで、違うクラスの学生≒知らない学生でした。国籍も多様だったという要素も、これに拍車をかけていたかもしれません。

だから、朝、教室に入った時、いつもの試験監督の時とは違った空気に包まれていました。試験に対する緊張感のほかに、初対面の人に対して様子見をする硬い雰囲気が漂っていました。そういうのを感じると、顔と名前の一致する学生がいないだけに、こちらまでピリピリしてきます。

でも、試験が始まってしまえば、学生たちは、おのおの、まわりを一切気にせず試験問題に向き合います。そこには初対面がどのこうのという様子はなく、いつもの試験の教室になりました。

ところが…。「はい、あと10分です。もう終わっている人は提出して、次のテストの準備をしてもいいですよ」と声を掛けると、普段なら2人か3人ぐらい、待ってましたとばかりに出すものなのですが、誰も立ち上がりません。明らかに問題を解き終わっている学生が何人かいるのに、ちらちらっと教室を見渡すばかりで、提出の意思を示しません。私が目で誘っても、下を向いてしまいました。学生たち、シャイなんですね。

入試会場で友達を作ったという話を、毎年何人かから耳にします。この臨時クラスの学生たちも、あと数か月でそんなつわものになって、志望校へと旅立っていくのでしょうか。

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まな板は何をするのに使いますか

5月13日(金)

まな板は肉や野菜を切るのに使います。この例文は○ですか、×ですか。

みんなの日本語42課に、「のし袋はお祝いのお金を入れるのに使います」という練習があって、O先生がその応用で学生に作らせたら出てきた例文です。

肉や野菜を切るのは、やはり包丁ではないでしょうか。「まな板は肉や野菜を切る『とき』に使います」だったらいいでしょうが、『のに』だったら包丁の代わりにまな板を使うイメージがあります。

「『この』まな板は肉や野菜を切るのに使います」「『あの』まな板は魚を切るのに使います」というように、ある特定のまな板で、何かとの対比があれば、「のに」でもいいような気がします。また、まな板に調理以外の斬新な、意外な、みんなに知らせたい、注目してもらいたい用途があって、それを述べる際には、「のに」が適しています。

「のし袋はお祝いのお金を入れるのに使います」というのは、のし袋を初めて見る外国人には意味がある情報であり、ですから伝えるだけの価値があります。しかし、日本人に向かってそんなことを言っても、何をいまさらと思われるのが関の山でしょう。

まな板も同様で、まな板の上で肉や野菜を切ることを伝えても、新しい価値は生みません。だから、私はここをやる時には、身の回りの物の意外な用法、自分はこんなことに使っているというのの紹介をさせます。「AはBするのにも使えます」とか、「私はAをBするのに使っています」とかという文にしています。まあ、なかなかこれはっていう文は出てきませんけどね。

みんなの日本語も終わりが近づくと、単なる文型のまねごとではなく、意味のある情報を伝えることに重きが置かれるようになります。そう考えると、まな板は何をするのに使うのがいいのでしょう。

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早いですね

5月10日(火)

各クラスで中間テストの範囲が発表されました。来週の火曜日・17日は中間テストです。始業日以降も毎日のように新たに来日した学生が登校してきました。そういう学生たちの面倒を見ているうちに、学期の半分が過ぎようとしています。気が付いたら、レベル1の教室から「あります」とか「います」とかの声が聞こえてきました。教科書のその辺まで進めば、多少はまとまったことが話せるようになります。もう、学期も半ばなんだなあと感じさせられています。

今までオンライン授業を受けてきた学生たちも、日本へ来て学校に通い、教室で大勢のクラスメートと顔を合わせて授業を受けるとなると、勝手が違うようです。オンラインでは元気だった学生がおとなしくなってしまったという報告も聞いています。日本での生活や教室での授業に慣れていけば、また元気に発言するようになるのでしょう。後半戦に期待しています。

去年から日本にいる学生たちは、その多くが受験リベンジ組です。入管の特例を活用してKCPの在籍期間を1年延長して、自分の目指していた大学・大学院に改めて挑戦します。今度こそは成功するぞ、失敗は許されないぞという意識が強く、早め早めに動こうとしています。この気持ちを忘れないでいてほしいです。もちろん、気持ちだけでは合格しませんから、実のある努力を続けることが肝心です。

気になる情報もあります。Cさんが燃え尽きてしまったのではないかという声もあります。志望校に落ちた3月の時点では気持ちを切り替えて前に進もうとしていましたが、今学期に入ってから失速気味だと言います。早くも中だるみじゃ困るんですけどね。

中間テストが終わると、EJUまで1か月です。

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はじめまして

5月7日(土)

朝から仕事をしていて目が疲れてきたので、ちょっと息抜きにロビーに出たら、「すみません。M先生はいますか」と、話し掛けられました。年格好からすると学生なのですが、あまり見かけない顔です。私もすべての学生の顔と名前を知っているわけではありませんし、つい最近入国したばかりの学生なのかもしれません。また、ちょうどJLPTやEJUのための受験講座が始まる時間帯でしたから、その関係の用事なのかなと思い、M先生を呼びました。

しかし、M先生もその学生(?)の顔に見覚えがない様子でした。「お名前は?」とM先生が聞くと、「Hです」と答えるではありませんか。M先生も私もびっくりしました。この稿にも何回か登場している、教師のだれもが1日も早く教室で会いたいと願っていた、あのHさんが目の前に立っているのです!!

2人同時に思わず「えーっ」と声を出し、M先生が「ねえ、Hさん、ちょっとマスク、取ってみて」と促すと、Hさんはマスクを外しました。その口元は、オンラインの画面で見慣れたHさんのものです。でも、何か違います。そう、メガネをかけていなかったのです。髪型もオンラインの時とは違っていました。でも、声は確かにHさんです。

Hさんは、これから行われるウェルカムミーティングで代表あいさつをします。その練習をしに、早めに学校へ来たのでした。「やっとここまで来たねえ」と声を掛けると、少し笑みをこぼしながら軽くうなずきました。

Hさんのあいさつは立派なものでした。去年の漢字が「待」だったHさん、今年は飛躍の年にしてくださいね。大いに期「待」していますよ。

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いい大学とは

5月6日(金)

午前中、F大学の留学生担当の方がいらっしゃいました。この大学は、卒業するまでそれぞれの学生がどんな学生生活を送っているか知らせてくれます。送り込んだ学生を一人一人きちんと見てくれているんだろうなと思います。こういう大学は、安心して学生に薦められます。

それと、F大学は進学した学生が、異口同音にいい大学だと言っています。これは大きいです。大学の教職員があれこれ言うよりも、そこで学ぶ学生の一言の方が重みがあります。レストランや観光地などと同列に並べてはいけないかもしれませんが、その場に身を置いた人からの口コミは無視できません。まして、顔も人となりもよくわかる卒業生の言葉は、単なるうわさとは信頼度が桁違いです。

そういう点では、H大学も“いい大学”です。東京から見ると僻遠の地と言ってもいい所にありますが、進学した学生は充実した学生生活を送り、卒業後もH大学での勉強や経験や人脈を生かして、各方面で活躍しています。H大学に入ると決まった時には都落ちという風情を醸し出している学生もいましたが、次に顔を合わせたときは生き生きとしていました。学生のほうも、自分の大学生活を誇らしく思っていますから、私たちに知らせたくてたまらないのです。

留学生の場合、便りがないのは元気な証拠とはなりません。せっかく進学した大学や大学院をやめて帰国している例もまれではありません。そういう情報が、だいぶ経ってから元同級生などを経由して伝わってくると、その学生の顔を思い出してはどんな進路指導をすればよかったのだろうかと、心が少し重くなります。

F大学は、この春入学の留学生は少なかったようです。すると、来年春はチャンスかな…。

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思いを語る

5月2日(月)

JASSOの奨学金受給者として推薦する学生を決める面接をしました。学生の自己推薦を受け付ける形で募集し、出席率や成績などで一次選考し、そして面接です。

まずは初級の学生が2人。どちらも勉学の意欲があり、日本の大学・大学院に進学しようと一生懸命なのはわかりましたが、残念ながらそこまででした。自分の気持ちや考えを一方的に訴えることはできても、それに関連する質問をすると、その質問の意図がつかめず、話がかみ合わなくなりがちでした。私がジェスチャーを交えてかなりかみ砕いて質問内容を説明すると、ようやくそれっぽい答えが返ってきました。これじゃあちょっとね。

次は中級の学生たち。粒ぞろいだなと思っていたのですが、総じて期待外れでした。面接室に入った時から緊張している雰囲気でしたから、私が見つめるとそれがなお一層高じるのではないかと、あえて目をそらしたくらいです。その甲斐もなく、初級の学生よりいくらかいいかなという程度で終わってしまいました。

満を持して登場したのが上級のXさん。文法や語彙の間違いがないとは言えませんが、自分の意見を堂々と開陳していました。もともと積極的な性格だということもありますが、去年1年間、私も含めたKCPの教師からさんざんたたかれ鍛えられた経験がものを言っているのです。

初級・中級の学生たちは日本へ来たばかりと言ってもいいくらいですから、教師に囲まれて大学・大学院の志望理由や将来設計を聞かれたらビビる方が普通でしょう。そういう意味ではちょっと気の毒ですが、これからこういう場を次々と迎えるのですよ。ガンガン鍛えていきましょう。

3連休の後、6日(金)に、面接第2陣があります。

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連休前なのに

4月27日(水)

M先生は、出勤するなり、仕事をしていた私に、「先生、Hさん、明日出発するんですよ。待機期間が終わるのが来月の6日か7日で、そうしたら学校へ来るんですよ」と声をかけてきました。Hさんは、去年の4月からオンラインでずっと勉強を続け、昨年末、来日できそうになったとたん再度の鎖国でそれが流れ、そして、ようやく、もう間もなく、KCPに姿を現します。

Hさんはまじめな努力家で、毎日の授業に全力で取り組んできました。だから、所属したどのクラスの先生も、高く評価しています。私も、クラスに入ってHさんに教えるのが楽しみでした。これはHさんに質問してみようなんて、Hさんを中心に授業を組み立てることもよくありました。

先月から留学生の入国が再開されましたが、いつまで待ってもHさんの順番が来ませんでした。Hさんにこそまっ先に入国して学校へ来てもらいたかったのに、Hさんの渡航日程はなかなか決まりませんでした。オンラインでやる気があるのかないのかわからないような学生が、お前なんか日本で勉強する意味があるのかと言いたくなるような輩に限って、さっさと入国してきたんですよね。

そのHさん、今学期は数学の受験講座を受けています。午後、数学の問題が届いていませんなんていうメールがHさんから来ました。おとといの講座で宿題を出したつもりだったのですが、メールに添付されていなかったのです。日本行きの準備で忙しいので今週は期日までに提出できないと添えられていました。こういう、勉強を第一に考える姿勢が、教師の心をくすぐるんですね。

5月7日に行われる歓迎イベントで、Hさんに会えそうです。終わるのが楽しみな連休なんて、初めてです。

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よく降りますね

4月26日(火)

また雨が降っています。傘を持って来なかった学生の方が多いみたいですが、歩いて帰って行きます。さほど強い雨でもなく、気温も20度を上回っているので、御苑の駅か富久町ぐらいまでなら、ぬれても風邪をひくことはないでしょう。いや、今の学生たちはやっとの思いで入国していますから、東京で降られる雨もまた、感激の一要素かもしれません。梅雨時になったらさすがにうんざりするでしょうけどね。

それにしても、この4月はよく雨が降ります。3月までは平年よりも若干少なめでしたが、4月はすでに平年よりも50ミリほど多い降水量です。連休中もパッとしない天気の予報が出ていますから、もう少し上積みがなされそうです。学生たちは梅雨の前に雨に飽きちゃうかな。

この雨で、昨日せっかく校庭の上空に飾り付けられたこいのぼりが引っ込んでしまいました。本物の鯉なら水は大歓迎でしょうが、布製の鯉はそんなことは言っていられません。しかも古いですから、大いにいたわってあげなければなりません。あさってはお天気が回復しそうですから、また青空に泳ぐ雄姿が見られることでしょう。3連休は再度引っ込めて、端午の節句の行事を予定している5月2日は、どうやら日差しが望めそうですから、またご登場願いましょう。

端午の節句が終わったら、今学期はアートウィークが待っています。鯉の滝登りほど苦労してKCPまで来てくれた学生たちに、精一杯日本を味わい、学校で勉強することを楽しんでもらいたいと思っています。

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