Category Archives: 生活

暖房?

6月29日(水)

トイレに立ち、職員室出入り口のドアの所まで行くと、半袖の腕と首筋に風が柔らかく当たりました。冷房特有の、肌を刺すようなひんやりとする風ではありません。暖房のように体をふわっと包み込むような生暖かい風でした。“えっ、この部屋、暖房入ってんの?”と、思わず天井を見上げてしまいました。見上げたところで、暖房か冷房かなんてわからないのにね。

換気用に開けてある本棚の上の窓から入った空気が、ドアからロビーを吹き抜けて玄関から出ていく、その風に襲われたのです。夕涼みの風なら“気持ちいい”となるところですが、明らかに不快感を伴う温風とも熱風ともつかない中途半端な風でした。涼風なら風の通り道で仕事をしたいところですが、こんな風だったら仕事の能率がかえって下がってしまいます。

私がトイレに立ったころ、東京は最高気温を記録したようです。またもや猛暑日で、この分だと明日もそうでしょうから、6月末は6連続猛暑日で締めくくられそうです。梅雨明けが異常に早かったのも、その後半端じゃない猛暑が続いてるのも、ラニーニャ現象が原因です。ラニーニャ現象は、エルニーニョ現象の裏返しで暑い夏になります。でも、その影響がこれほど顕著に現れるとなると、地球の破滅に1歩近づいたのではないかと、心配にもなります。

このところ、最高気温の予報に40度というのがよく現れます。明日の熊谷もそうです。私は中国の砂漠で40度を超える気温を味わったことがあります。砂漠だけに乾燥していたせいか、それに短時間だったので、どうしようもないという暑さではありませんでした。でも、日本の40度はどうでしょう。その気温に長時間さらされるとなると、体が受けるダメージは相当なものに違いありません。

これから2か月半ぐらい、こういう暑さに加えて電力綱渡り状態も続くのかと思うと、げんなりしてきます。でも、受験生にとっては実力を伸ばす夏です。そのお手つだをしなければ…。

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1日早いです

6月22日(水)

参議院選挙が公示されました。投票日の7月10日から逆算すると、公示日は明日・6月23日になるはずでした。みなさんは6月23日が何の日かご存知ですか。沖縄慰霊の日です。1945年6月23日に、太平洋戦争における沖縄での組織的な戦闘が終わりました。心静かにこの日を迎え、犠牲になった方々に思いをはせるべきだと考えたのでしょう。明日の沖縄本島地方の予報は晴れ。すでに梅雨が明けていますから、夏至の翌日の、まさに頭の真上から照り付ける太陽の下で、慰霊の儀式が行われるのでしょう。

沖縄戦は、もっとずっと早く終わってしかるべきだったと言われています。最後の何か月間かは、本土決戦を遅らせようと、米軍を足止めするために降伏せずに戦ったとのことです。この、しなくてもいい戦いによって、多くの一般庶民が道連れにされました。沖縄戦が2か月ぐらい早く終わっていれば、原爆も落とされなかったのでしょうか。

学校の近くの、40枚ぐらい貼れるポスター掲示板は、10枚分ちょっとが埋まっていました。東京選挙区の立候補者は34名だそうですから、半分弱と言ったところでしょうか。34名がどんな考えを持ち、どんな政策を掲げているか、私にはよくわかりません。なぜ公示日が1日前倒しになったか知っている人がどれだけいるでしょうか。そもそも選挙戦が1日長くなったことに気付いていない方も少なくないんじゃないでしょうか。

東京選挙区選出とはいえ国会議員なのですから、沖縄のことにも真摯に向き合ってくれそうな人に票を投じたいです。

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倒れた鳥居と、暑さに耐える

6月20日(月)

能登半島で地震が相次いでいます。震度5~6ですから、“ちょっと揺れたね”ぐらいでは済みません。現に、昨日の地震では震源地近くの神社の鳥居がばったり倒れました。崩れ落ちたのではなく、根元からぽっきり折れて、そのまま90度のめったみたいですね。志賀原発は異状なしとのことですが、震度6弱だったらねじ1本緩んでも困ります。

地震、原発と言えば3.11ですが、先週、あの事故で国には責任はなかったという最高裁判決が出ました。国や原発推進に関わる人たちは喜んでいるようですが、それは皮相的な物の見方だと思います。考えようによっては、国には責任能力がなかったという判断だとも言えます。つまり、国には原発に対してどうのこうのと言えるだけの知識も判断力もなかった、当事者能力が備わっていなかったということです。

あれから11年余り、国はそういった能力を磨いてきたか、許認可を与える責任能力をつけたかと言ったら、大いに疑問です。そういった方面においては何の進歩もなく、温暖化防止には原発がいちばんと旗を振っているに過ぎません。私にはそう見えます。

原子力発電は、原理的にはすばらしいと思います。デコピンをしただけで巨大なエネルギーが生まれるのですから。しかし、現在の科学技術をもってしても、その制御ができているとは言いかねます。エンジニアリング的には非常に大きな不安があります。つまり、原理の高尚さにエンジニアリングが追いついていないのです。

国が原発に責任を負えるようになるのがいつなのか、私にはとんと見当がつきません。この夏は電力事情がひっ迫するとのことですが、だれも責任が負えない怪しげな電力に頼るよりは、汗をだらだら流しながら、猛暑日と熱帯夜に耐えましょう。

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新しい食生活

6月15日(水)

学期末が近づくと、アメリカの大学のプログラムで来ている学生への発話力テストがあります。それぞれの学生のレベルに合わせて質問に答えさせたりまとまった話をさせたりしながら、文法や語彙の定着具合や発音などをチェックします。テストと言いつつも、雑談の中からそういった力を測っていきます。

Jさんは自炊をしています。日本料理が作れるというので何が作れるか聞いたら、カツ丼という答えが返ってきました。カツ丼が日本料理かなあと思いながらも、ハンバーグやスパゲティを食べてきた人から見たら、ご飯粒の上にしょうゆ味のたれがかかった料理は、十二分に日本料理何だろうと納得することにしました。

Rさんは全く料理をしません。毎日、コンビニ弁当でお腹を満たしています。国にいた時は、仕事をしながらお菓子を食べるのが食事代わりでした。不健康なにおいがプンプンしますが、目の前のRさんは顔色もよく、私の質問に積極的に答え、弱々しい感じはしませんでした。

さて、この2人、食生活が正反対でした。Jさんは朝ごはんと昼ごはんをしっかりとり、晩ごはんは食べないことが多いと言っていました。宿題をしたら、そのまま寝てしまうそうです。一方、Rさんは、朝はコーヒーだけで、昼は抜き、晩ごはんをたっぷり食べます。その晩ごはんが、コンビニ弁当なのです。夜食も少々とのことでした。

2人とも、お金がないわけではありません。Rさんなんか、ゴールデンウィークにしまなみ海道でサイクリングをしたくらいですから。最近の若者は、1日3食じゃなくても平気なのでしょうか。食事は集約して、自分のしたいことに時間を振り向けようとしているのかもしれません。すると、料理をしないRさんなんか、口が寂しくなったらサプリなんて方に進むんでしょうかねえ。

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未納

6月14日(火)

急激に進んだ円安やらロシアのウクライナ侵攻やらの影響で、中小規模の100円ショップが閉店に追い込まれているそうです。取扱商品全般の仕入れ値が上がって、100円で売っていては商売が成り立たなくなってしまったそうです。飲食店も原材料費高騰で、値上げに踏み切るところが増えています。

そんな中、Kさんが来学期の学費をまだ納めていません。KCPは学費の値上げはしていませんが、アルバイトをしているKさんには、諸物価の上昇は相当痛いようです。もしかすると、Kさんのアルバイト自体も危うい状況かもしれません。時給が下がるということはあまり考えられませんが(というか、最低賃金付近でしょうから、下がりようがないとも考えられます)、時間数を削られることはあり得ます。そうすると、ぎりぎりのところで生活しているKさんにとっては辛いでしょう。さらに、病弱なKさんはアルバイトを休んでいるかもしれません。担任の先生によると、成績も思わしくないようです。Kさん、八方ふさがりの感すらあります。

Kさんは挫折してしまうかどうかの瀬戸際に立たされています。せっかく嵐のような2021年を乗り切ったのに、思いもよらぬ経済情勢、世界情勢の余波をかぶって沈没してしまっては、泣くに泣けません。根がまじめなKさんですから、私たちも何とか助けてあげたいです。しかし、私たちにできることは限られています。

毎月100万円ものお小遣いを国からもらっている議員さんたちには、こういった留学の苦労などわからないでしょうね。票につながらない留学生のために汗をかこうなど、微塵も思っていませんよね。

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健康の源

6月7日(火)

午後3時ごろでしょうか、Xさんの姿を見かけました。「体調、良くなった?」「はい、どうにか」。実は、昨日の朝、Xさんから学校に電話が掛かってきました。

「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「おはようございます。もしかすると、金原先生ですか」「はい、そうですが、あなたはだれですか」「Xです。すみませんが、M先生はいらっしゃいますか」「はい、少々お待ちください」「はい。M先生を呼んでくださってありがとうございます」

その後のM先生とXさんのやり取りを聞いていると、どうやらXさんは体調がイマイチですが学校に出てこようとしているようでした。M先生に説得され、結局休むことに。きっと、進学フェアで志望校の話を聞きたかったのでしょうね。でも、こういう時期ですから、少しでも体調が悪かったら休んでもらっています。

「はい、どうにか」と答えたXさんの顔色はよく、声もしっかりしていました。100%ではないにせよ、体調も回復したのでしょう。それに比べて、昨日の進学フェアの会場にいたHさんはなんだかむくんでいました。前から大きかった体がさらに一回り膨らんだ感じがしました。ジャージがはちきれそうでした。聞くところによると、Hさんは何かというとすぐ休んでいるとか。骨と皮になっているよりはましかもしれませんが、見たところ締まりがなく、不健康な感じがしましたねえ。あの体をスーツに包んだとしても、面接官に与える印象は芳しくないでしょう。

Xさんは校舎の掃除のアルバイトをしています。夕方、ぱきぱき働いてゴミ捨てなどをしてくれました。体を動かすことをいとわないところが、Xさんの長所であり、少しの病気ぐらい跳ね返してしまう原動力になっているのです。Hさんにも見習ってほしいですね。

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5倍、8倍、10倍、12倍‥‥

5月27日(金)

私のうちの近くにあるドラッグストアAは、税抜き100円ごとに1ポイントもらえるポイントカードを発行しています。これは普通のことですね。私もそのカードを作りました。Aは、時々ポイント10倍セールをします。そうすと、私のようなけちんぼは、10倍セールの日を狙って買い物します。何が何でもAで買わなければならないものもなければ、急にAで売っているものが必要になることもありませんから、10倍セールの幕が出ていたらAに入ってみるのです。仕事帰りにふらっと立ち寄って、これはと思うものがあれば買います。

ところが、去年、Aは10倍セールをやめてしまいました。その代わり、8倍セールと5倍セールを始めました。10倍だとポイントをあげすぎて、もうからなくなったのでしょう。私はAに寄らなくなりました。10倍セールの存在を知っていますから、8倍や5倍で買うのは忌々しい感じがします。うちの近くには、AのほかにドラッグストアBや、ホームセンターCもあります。マスクなら、スーパーDにも置いてあります。

私みたいな客が多かったのか、いつの間にかAは10倍セールを復活させました。幕が新しくなったような気もします。入ってみると、以前と同じようににぎわっていました。そういえば、1割引きの日が、月に1日から3日に増えていました。

そして、3月ごろでしょうか、なんと、Aの店先に12倍セールの幕が出ているではありませんか。10倍では客が戻ってこなかったのでしょうか。12倍の日に店をのぞいてみましたが、ほしい物は特になく、何も買いませんでした。こうなると、15倍セールを期待したくなります。

こんなことをしている人が多いから、日本の景気って良くならないんですね。でも、本格的なインフレが来そうだと聞くと、15倍どころか20倍セールまで待ちたくなります。岸田さん、こんな私は非国民ですか。

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テーブルを挟んで

5月24日(火)

5月も下旬となれば、かなり高い位置から日が差してきますから、ビルの谷間にあるKCPの校庭も、昼は太陽光の恵みにあずかることができます。半袖だと風が肌寒く感じることもありますが、日が当たっていればそんなことなど忘れさせてくれます。このところ、校庭で勉強する学生が出てきました。うちで宿題をするよりも図書室で教科書を広げるよりも、校庭のほうが気持ちよく、はかどるのかもしれません。

談笑している学生もいます。校庭のテーブルにはいつの間にか椅子が2脚ずつ配置され、授業後のひと時を過ごすにはうってつけの場所となっています。去年は椅子を1脚ずつにして、学生同士が集わないようにしていました。それを思うと、笑い声こそ聞こえてきませんが、テーブルの周りでいかにも楽しそうにしている学生たちが現れたのは、日常復帰への第一歩か二歩です。

このところ、屋外などではマスクを外そうという動きが少しずつ出てきました。談笑だとマスクを取るわけにはいきませんが、校舎の外ならもっとはしゃいでもいいのかなあと思います。今までの自分の世界よりも広い世界から来た友人と知り合うことは、留学の主要な意義の一つです。2階のラウンジではしてほしくないですが、校庭はどんどん活用してもらいたいですね。

ある程度の新規感染者を出しつつも、日々の活動を可能な限り元に戻していくという流れができつつあります。この流れが滞ることなく太くなっていってほしいです。最初はほんのちょっとの間だけ我慢すればと思っていたのが、もう3年目ですからね。

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季節外れの卒業証書

5月20日(金)

夕方、卒業証書を渡しました。もちろん、5月20日などという中途半端な時期に卒業する学生はおらず、今年の3月の卒業生でもありません。なんと、2年前の学生です。

2年前の3月は海外からウィルスが入ってきて感染が広がり始めたころです。卒業式は中止になり、日時予約制で学校へ来た卒業生に証書を渡していました。「不要不急の外出は避けましょう」という時期でしたから、学生たちには無理に証書を取りに来いとは言っていませんでした。そのため、取りに来る時機を逸してしまった学生もいました。そんな1人のSさんに渡したというわけです。

Sさんは進学先を卒業し、明日、一時帰国するそうです。3年ぶりに家族に会って充電したらまた日本に戻ってきて、仕事を始めると言っていました。国へ帰る前に証書をもらってけじめをつけようという気持ちが、Sさんの心の中にあったのかもしれません。

バタバタしているうちに過ぎてしまった2年ですが、Sさんのような若者にとっては重い意味を持つ2年だったはずです。現に、どうにか日本語が使えるだけだったSさんが、仕事を始めるだけの能力実力技術力を付けたのですから。そして、一時帰国してすぐに戻って来られるくらいにまで、海外との行き来が復活しつつあるというのも、驚きであり、うれしくもあります。

2年前に職員室の片隅で証書を渡した卒業生たちは、どんな学生生活を送ったのでしょう。専門学校や大学院に進んだ学生たちは、Sさんと同じ立場です。苦しみながらも新たな道を歩み始めていると信じたいです。

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50年

5月16日(月)

昨日は、沖縄の日本復帰50周年の日でした。報道機関の論調は、基地負担や経済面での格差が埋まらないままだと、厳しいものが多かったです。

沖縄へは何回か行ったことがありますが、一番印象に残っているのは旧海軍司令部壕です。那覇市と豊見城市の境界線上の小高い丘にあります。地下壕にこもって戦っていたのですが、本土決戦を引き延ばすためのような戦いは悲惨を極めました。そして、ここを守っていた大田實少将は、昭和20年6月13日、沖縄戦終結の10日前、自決しました。その際に海軍次官に宛てて打電した電文が、壕の中に掲示されています。

電文の最後に、食料もない中必死に戦った沖縄「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコトヲ」という文があります。現状を見る限り、“御高配”は米軍基地です。大田少将の最後の言葉は全く無視され続けてきたと言っても過言ではありません。これを読んだ時、本土に住む日本人として恥ずかしかったです。

摩文仁の丘もひめゆりの塔も行きました。それほど有名ではなくても、沖縄はいたるところに戦跡があり、街角でよくハッとさせられます。同時に、米軍基地も普通にあります。首里城から普天間基地まで、どう測っても10キロ弱、琉球王国の陵墓・浦添ようどれからなら5キロ足らずです。皇居を基準に考えると、新宿が5キロを少し切るくらい、お台場が7キロ、高円寺で10キロです。

50年前の日本は上り坂でした。その時に“御高配”ができなかったかなあと思います。“御高配”をしなかったことで某国の覚えがめでたく、繁栄が多少なりとも長続きしたのでしょうか。昨日はニュースを聞きながら、そんなことを考えました。

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