Monthly Archives: 5月 2021

共同作業

5月17日(月)

現在、KCPの中級で使っている読解の教科書に、私が書いた文章が入っています。iPS細胞の入門講座みないなもので、これぐらい知っていればiPS細胞に関しては恥をかかないだろうという程度の内容です。

それを書いてからだいぶ時間が経ちましたから、最近はその後のiPS細胞的な、もう少し掘り下げた話を、読解のそのセクションが終わった後でするようにしています。一般論ではなく、最新の研究も交えて話しますから、毎回iPS細胞界(?)の動向を調べます。

今学期はオンライン参加の学生を加えても、いつもの学期より少ない学生に向かって話をしました。少人数ですから毎日先生の厳しい目が隅々まで行き届いているのでしょうか、学生たちは全員真剣に私の話を聞いていました。メモを取っている学生も少なくありませんでした。これだけ鋭い視線が集まると、話す方もおのずと気合が入ります。「20分ぐらいでも行けますよ」と先週末に話していましたが、気が付いたら30分を超えていました。また、質疑応答もいつになく熱がこもっていて、結局、40分以上時間を使ってしまいました。

教科書の文章を書いた本人とすれば、読んだ学生にiPS細胞に興味を持ってもらいたいことはもちろんそうですが、さらに科学の少しでも広い範囲に目を向けてもらいたいと切に思っています。ですから、今回のように私の話を真正面から受け止め、それに関して熱く議論してくれることは大歓迎です。一番たくさん質問した学生は文科系大学院志望だそうですが、そういう学生にこそ、話を聞いてもらいたいのです。

授業は学生・教師の双方で作り上げるものです。そういう意味では、“いい授業”ができたのではないかと思います。

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安くてもろい

5月15日(土)

JR各社をはじめ、鉄道会社が軒並み赤字決算です。JRは大都市で稼いで地方路線が出す欠損を補うという内部補助を行ってきましたから、大都市路線や新幹線など今まで高収益だった部門が調子悪くなると全体として赤字なのは、まだわかります。しかし、大都市内やその近郊しか走っていない大手私鉄までもが赤字というのはどうしてでしょう。盤石に見えても、その経営基盤は意外にもろいのです。私たちの足は、やじろべえのような、微妙なバランスの上に乗っかっているのです。

巨額の赤字を出していても、こういった鉄道会社は事業をやめるわけにはいきません。そんなことをしたら、日本中の交通が大混乱を起こします。道路が大渋滞となりますから、人が自由に行き来できなくなるばかりか、物流も止まってしまいます。電気自動車はまだ普及していませんから、CO排出量削減目標など、一瞬で吹き飛んでしまいます。

日本の鉄道会社は私企業ですが、担っている仕事は、上述のように、公的性格が非常に強いです。国民、県民、市民の足の確保をしてもらっているのですから、国や地方自治体はお金を出してもおかしくはありません。上下分離をして、固定資産は国や自治体が引き受け、鉄道会社は列車運行に集中するというのも一つの手です。これは実際に一部の地方では実施されていますし、ヨーロッパではこちらの方が普通です。

最近、「安いニッポン」という本を読みました。日本は物価がほとんど上がらない代わりに賃金も上がらないので、諸外国に比べるとなんでも安い国だというお話です。ディズニーランドの入園料も、世界一安いそうです。一見好ましく見えますが、これが日本停滞の主原因だと言われると、考えてしまいます。JR本州3社は、1987年の創立以来、消費税増税以外で運賃を値上げしていません。企業努力のたまものだと思いますが、それが日本の国力伸長の足を引っ張る結果になっていたとしたら、皮肉なものです。

この本を読んで、日本は国を挙げてお金の使い方を考え直さなければならないと思いました。鉄道など公共交通機関をどうするかもそうですし、いわゆるエッセンシャルワーカーに、私たちの生活を支えてくれているだけの報いができるしくみを築いていくべきです。

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次々宿題

5月14日(金)

私が担当しているクラスはオンライン授業ですから、テストや宿題もオンラインです。答案用紙や作文などが、何らかの方法で電子的に送られてきます。テストはほぼ一斉に届きますが、宿題となると、授業の直後から翌日の授業の直前まで、だらだらと入ってきます。“〇時まで”と締め切りを伝えますが、だからといってそれ以降着のを無視するわけにもいきません。初級ですから、変な癖がついてしまったら困ります。

そういうわけで、時間がちょっとでも空いたら、学生から宿題が来ているんじゃないかと、メールチェックをしています。宿題メールを見つけたら、採点したり添削したりしています。ついさっきもメールボックスを見てみたら、昨日の宿題が出されていましたから、急いでチェックして返信しました。対面授業だったら授業中に集めてそれで終わり、授業後にチェックして翌日の授業で返すっていうパターンなんですがね。

この宿題チェック、世の中に流通しているいろいろなツールやアプリを比較検討して、私たちにとって一番使いやすいのを選んだらだいぶ合理化できると思います。しかし、走りながら考えている状態なので、現状で最適化されているかと言えば、程遠いというのが正直なところです。

緊急事態宣言が、さらに3道県に出されました。新入生の自由な来日は、また一歩遠のいたようです。国で授業を受け宿題に取り組んでいる私のクラスの学生たちも、そんな不安を抱えているに違いありません。その不安を少しでも和らげるために、日本語を勉強する気持ちを切らさないために、せめて宿題の添削ぐらい、丁寧にやろうと思っています。

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あ、いない

5月13日(木)

私が担当している初級クラスも、ようやく存在の「あります/います」までたどり着きました。オンラインですから、カメラを持って教室の中を駆け回り、「カレンダーがあります」とか、「時計があります」とか言わせました。学校の中を回ってもよかったのですが、他のクラスの授業の邪魔をしてはいけないし、wifiがどうにかなったら元も子もなくなってしまいますから、教室の外には出ずにおとなしくしていました。「学校の前にホテルがあります」は、窓の外の景色がうまく伝わらなかったようで…。KCPから見える側は、あんまりホテルっぽくないですからね。

次は学生たちの自身の部屋や住んでいる街について語り合うという、定番のタスクです。「机の上にパソコンがあります」「うちのとかという、パッとしない文が並びました。ぬいぐるみをたくさん持っているXさんが休みだったのが、何より残念でした。そのぬいぐるみの多様性で、形容詞の復習もできると踏んでいたのですが、当てが外れてしまいました。

存在の動詞を勉強するときには、セットで上とか前とか右とかの、いわゆる位置詞も勉強します。位置詞は、最終的には使えるようになるものの、初級前半には荷が重い面もあります。力の差が表面化する文法項目でもあります。YさんやOさん、Bさんなど、クラスの下位グループの学生は、ここを乗り切っておかないと、進級が危うくなります。この先、アイガー北壁をよじ登るような難関が待ち受けていますから。この難関を攻略するのは、学生と教師の共同作業です。

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耳学問

5月12日(水)

「この紙のこことここに必要なことを書いて、担任の先生、K先生ですか? にハンコをもらって、また持って来てください。今日じゃなくてもいいです。明日でもあさってでもいいですよ」と、Tさんに説明して事績に戻りました。椅子に腰かけて目を上げると、私を呼んでいるTさんが目に入りました。再び受付カウンターまで行くと、「先生、これは今日じゃなければなりませんか」とTさん。「さっき言ったじゃないか!」という言葉を飲み込んで、「いいえ、明日でもいいですよ。あさってでもいいです」と答えました。最初に説明した時、中級のTさんに対して、誤解がないように、初級の前半並みにゆっくり話したんですけどね。

その直後、Tさんと同じレベルのSさんが、物理の問題について質問に来ました。まず、問題文の意味がつかめていないようでした。それを説明した後、解き方がわからなさそうでしたから、「これは浮力の問題です。浮力がどう働くか考えれば、答えがわかります」とヒントを出しました。しかし、Sさんはまだわからない顔を続けています。どうやら“フリョク”が何かわからないようでした。受験講座で説明していますから、文字や図で示せば絶対に通じるはずです。しかし、耳からの音声情報だけではわからないんですねえ。

この2人にとどまらず、ゆっくりしゃべっても易しい言葉を選んでも話が通じないという場面が増えたように感じます。中級でこの程度だと、先行き明るくないです。TさんもSさんも志望校は決まっていますが、これからグーンと伸びないと手が届きません。受験講座に出ているRさんもQさんも、真剣に勉強に取り組んではいますが、私の言葉が一発では捕まえられない場面がよくあります。早くも受験講座から脱落したPさんも、このせいだったかもしれません。不安が募ります。

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明るくて考えすぎました

5月11日(火)

私のうちの前に、小ぶりのショッピングモールがあります。そこの駐車場を斜めに突っ切っていくと、駅からうちまでの時間がちょっと短くなります。しかし、早朝・深夜のショッピングモールが閉まっている時間帯は、通路にシャッターが下りていて、このショートカットが使えません。

昨日は会議などで遅くなり、そのショッピングモールまで来たのが10時半ごろでした。4月の緊急事態宣言以来、ショッピングモールの中核店舗であるスーパーが閉まるのが9時になり、10時ごろにはシャッターが下りてしまうようになりました。「あーあ、遠回りか…」と足取りが重くなりかけたところ、なんだか明るいのです。なんと、スーパーがやっているではありませんか。昨日から、夜11時までの平常営業に戻ったのです。確かに、営業短縮は5月8日までと言っていました。店の入り口の掲示を見る限り、9時閉店を続ける気はなさそうです。

緊急事態宣言の効き目が薄れていると、各方面から言われています。1年前の初めての緊急事態宣言は、うろたえ過ぎという面もありました。また、態勢が全く整っていないところへ急に始められてしまったという感じもしました。1年でずいぶん図太くなったものです。10時半にスーパーが開いているだけで、普通の生活に戻ったような気がしてきました。9時15分ごろに明かりの消えたスーパーの前を通ると、いかにも緊急事態という感じだったんですけどね。

私の街だけじゃなくて、東京中、日本中がこうなのでしょうか。これもオリンピック開催に向けた布石だとするのは、考えすぎかな。

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無反応

5月10日(月)

「じゃ、Bさん」と指名しましたが、反応がありません。10分ほど前に出席を取った時には「はい」という返事があったのに…。ずっと待っていても時間の無駄ですから、別の学生に答えてもらいました。

それから20分ほど後に、もう一度Bさんを指名しました。しかし、「……」でした。さらに30分後にまた指しましたが、zoomの画面上にはいるのに、答えが返ってきませんでした。

授業後、Bさんを残して話を聞きました。と言っても、一番下のレベルで、やっと形容詞を勉強したところですから、話せる内容はたかが知れています。Bさんは「マイクが悪いです」(形容詞の過去名は未習)と、自分の行動を正当化しようとしました。「どうしてチャットに書きませんでしたか」と突っ込んでみても、Bさんはそれに対して答えられる日本語を持ち合わせていませんでした。「明日は大丈夫ですね」と、引き下がるほかありませんでした。

Bさんは、自分ではできると思っていますが、実際にはそれほどではありません。宿題などを提出させると、かなり穴があるのがわかります。何となくはわかっているのですが、正確には身に付いていないのです。多少いい加減でもコミュニケーションが取れれば救いようはありますが、上述のようにそういうわけでもありません。ここを打破しない限り進級もおぼつかないのですが、本人は全く感じていません。

こういう学生は、オンラインに限らずいつでもどこにもいます。こういう学生は、進級できなかった場合、非常に駄々をこねます。オンラインだと、そのせいにしてさらに話がこじれるのではないかという気がしています。そうならないように、今から手を打っていかなければなりません。

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変わった?

5月8日(土)

朝、パソコンを立ち上げると、だいぶ前にKCPをおやめになったW先生からメールが届いていました。大学院に進学しようと思っている留学生の面倒を見ているそうです。KCPでの経験が、多少は役に立っているのでしょうか。文面からはお元気なご様子がうかがえ、いつもにこやかでやる気満々だったW先生のお姿が頭の中に浮かび上がってきました。同じ釜の飯を食った仲というよりは、同じ学生に悩まされた仲とでもいうべきW先生です。ずいぶんとお会いしていませんが、太い絆の連帯感がよみがえってきました。

W先生は、現校舎ができてからまだいらっしゃったことがないとのことですから、おやめになったのは震災の直後ぐらいだったのでしょうか。そのころと比べると、確かに教師の顔ぶれは変わりました。でも、毎日学校へ来ていると、その変化に気づかないんですよね。私自身はどれくらい変わったでしょうか。毎朝一番に出勤し、日本語を教え、理科を教え、養成講座を担当し、行事のたびに天気予報をし、…というあたりは、W先生がいらっしゃった頃と変わりありません。オンライン授業をするようになった点が変化といえば変化ですが、いろんな機材を使いこなしているわけではありませんから、進歩とは言えませんね。

緊急事態宣言が解除されたら旧交を温め合いたいと思いますが、いつのことになるやら。ついに1000人を超えてしまいましたからね。他県でも過去最多が目立っています。まずはこれからさらに大きくなりそうな波を乗り越えなければなりません。

ということで、W先生にお会いしていない間に一番大きく変わったのは、世の中そのものですね。

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EJUで横綱相撲

5月7日(金)

EJUまで1か月半ほど、受験講座理科では過去問を使った模擬テストをしました。始める前にマークシート方式の解答用紙の書き方から説明しました。みんな、今回が初めてのEJUですから、こちらにとっては常識でも、学生たちには新発見なのです。数年前に、この説明を怠ったために、理科2科目のうち1科目が白紙扱いにされてしまった学生がいました。そういう悲劇を繰り返さないために、最初にがっちりしつけるのです。

2科目を80分で解くには、わからない問題を考え続けるわけにはいきません。解ける問題を確実に正解に結び付け、点数を増やしていくことをまず考えるべきです。また、1番から順番に解いていく必要はありません。おしまいの方に易しい問題や得意分野の問題があったら、それを得点化しておいた方がよい結果につながることもあるでしょう。

実際にやってみると、思ったより難しかったようです。80分をフルに使っても解けなかったり計算が終わらなかったりしていました。あれほど注意したのに全然違うところにマークした学生もいました。これで、時間配分も実感できたでしょうし、ミスも今のうちにしておけば本番で同じことはしないでしょう。そのための模擬テストです。

理科で満点を目指すOさんは、6問間違えたとか。満点を取るには、点数を増やす努力だけではいけません。ミスを減らす、なくすという発想も必要です。勘違いとか度忘れとか、そういうことも許されません。どんな攻められ方をされてもすべて受けて立ち、最後には勝つという、横綱相撲みたいな取り組みが求められます。容易なことではありません。そういうことを指摘すると、そこまでの覚悟はしていなかったようです。これまた、あと1か月余りで鍛え直さねばなりません。

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寝連休

5月6日(木)

この連休は、実に何もしませんでした。去年の連休はずっとオンライン授業でしたから毎日学校に通いましたが、今年はカレンダー通りの休みで、しかも旅行の予定を全面キャンセルしましたから、5日間完全オフでした。仕事をしようと思えばできたでしょうが、4月30日の夜に学校を出た瞬間から、今朝学校のシャッターを開けるまで、完全に忘れていました。

こういうご時世だからと、献血に協力しに池袋まで行ったのが、唯一の遠征です。あとは、自宅から歩いていける範囲をうろちょろしていました。でも、献血ルームはずいぶん混んでいましたねえ。みんな、行く場所もないしすることもないから、献血でもしてやろうかと思ったのでしょうか。

自宅近辺でくすぶっていましたから、お金も使いませんでした。5日間で1万円使ったかなあ。あ、そうだ、献血に行った日に本をまとめ買いしましたから、書籍代で1万円使いました。それを除いたら、たとえ1万円を超えていても、2万円は絶対に使っていません。旅行に出ていたら、交通費と宿泊代を含めると1日平均2万円ぐらい使っていたかもしれません。それがどう多く見積もっても3万円ですから…。日本国民がみんなこんなことをしていたら、景気が悪くなるはずです。だから菅さんは1日も早く緊急事態宣言をやめにしたいのです。

さて、連休明け。毎日、腰が痛くなるまで寝ていたので連休ボケが心配でしたが、zoomの画面に映った学生を見たら、スイッチが入ってしまいました。気が付いたら、いつもと同じように学生のいない教室で声を張り上げていました。

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