課題山積

8月24日(月)

新聞報道によると、留学ビザを持っている人たちの入国制限が、近い将来、緩和されるかもしれないとのことです。まずは国費留学生からとなるようですが、これが私費留学生にも及べば、日本語学校にとってはありがたい限りです。久しぶりに新入生がやってきそうな気配がわずかながら立ち始めました。

とはいえ、国が正式に発表した内容ではなく、憶測の範囲を出るものではありませんから、喜び過ぎは禁物です。それに、たとえ入国ができるようになったとしても、2週間の自宅待機が義務付けられるでしょうし、そもそも日本政府が「緩和」を発表したところで航空便がないかぎり入国もままなりません。今すぐに政府決定がなされたとしても、10月期の始業日に間に合うかは非常に疑問です。

それに、中途半端な時期に入国し日本語学校に入学すると、日本で思うように進学できないおそれも伴います。日本語学校に在籍できる期間は最長2年間ですが、大学など高等教育機関の入学時期が4月のままだと、来年1月に入学した留学生は再来年の4月にどこかに進学しなければなりません。本来だったら丸2年日本語を勉強して十分に日本語力を伸ばした上で入試に臨めるのに、その前に勝負しなければならないかもしれません。秋入学のテンションがぐっと下がってしまいましたが、今からでもどうにかならないものでしょうか。

とはいえ、これは日本で新規感染者が少なくなることが前提です。毎日1000人とかというレベルで推移していたら、海外から日本への渡航が禁止されるかもしれませんし、親御さんが大事なお子さんを送り出そうとは思わないでしょう。そう考えると、まだまだ道のりは遠そうです。

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猛暑日

8月21日(金)

それにしても、暑い日が続きますねえ。今年は立秋を過ぎてから暑くなり、暦の上の秋が盛夏となっています。残暑が猛暑で、ことわざ通り本当に彼岸まで暑さが続くかもしれません。本来ならそろそろ甲子園の決勝戦で、そのころになると、中継のアナウンサーが「秋風が立ってまいりました」なんて言うのですが、今年はそんな気配など、みじんも感じられません。

8月10日から、毎日、全国で100か所以上が猛暑日を記録しています。最多は15日の278か所です。真夏日に至っては、最多が11日の778か所で、最低でも18日の586か所です。全国の観測地点は921か所ですから、778か所とは85%に当たります。北海道の北半分や本州の高地のような暑くなりにくいところを除くと、人の住んでいるところはすべて30度以上になったと考えいいでしょう。

そのため、熱中症で命を落とす方が多くなっています。日々の死者数だけで物を言えば、今は肺炎よりもこちらの方がはるかにこわいです。KCPでも、学生たちに熱中症の予防に心がけるよう呼び掛けています。校内だけでなく、家の中での注意点も伝えています。

いざとなったらマスクを外せと言われ始めたのものも、わからないではありません。そのためなのか、最近はマスクを外して街を歩いている人を見かけるようになりました。ただ、困ったことに、外で口を出している人を見ると、見てはいけないものを見てしまったような気になり、目のやり場に困ってしまうのです。そのたびに心臓がどきんとし、熱中症よりも体に悪いんじゃないかとすら感じます。

午後5時までの最高気温、36.0度…。

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通じない

8月20日(金)

今週面接をした指定校推薦入試の推薦者を発表しました。順当に上級の学生が選ばれました。受け答えもしっかりしていたし、自分を語るだけの日本語力も備わっていました。選ばれなかった学生は、コミュニケーションが成り立っていないという感じが強かったです。

推薦することにした学生たちに出願手続きや入試の内容とそのための準備に関する話をしていると、推薦されなかったJさんが、その結果に不満を持っているという話が聞こえてきました。Jさんは、面接開始1分後に×を付けた学生です。まず、Jさんの日本語がよくわかりませんでした。それから、私の質問の意図がまるっきり伝わっていませんでした。コミュニケーションが成り立たない典型例です。

また、先生方の話を総合すると、指定校推薦の制度そのものを誤解しているようです。推薦に値する学生がいたら推薦するということを、各クラスで学生にわかるように説明してもらったのですが、Jさんは募集人員は必ず満たすと受け取っていたようです。また、KCPでの面接に通れば自動的に入学が決まるとも思っていた節があります。致命的なのは、自分の日本語が通じていると信じ込んでいるところです。

しかたがないので、Jさんが受けている受験講座の後で職員室に寄ってもらい、選ばれなかった理由をきちんと説明することにしました。ところが、受験講座を終えたJさん、職員室の前を通り過ぎて帰宅するではありませんか。私も、その後受験講座が控えていましたから、呼び戻すまではしませんでした。

こんなにまで日本語が通じないのなら、どう考えて指定校推薦は無理です。それどころか、面接のある大学はほぼ合格不可能でしょう。Jさんはペーパーテストの成績鵜は優秀ですが、このままではその優秀さが生かせないでしょう。

明日、説明を試みますが、果たして納得させられるでしょうか。

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温暖、死亡、変換、巨大、河川

8月19日(水)

超級クラスの語彙の練習問題に、同じような意味の漢字を2つ重ねた熟語をあげなさいというのがありました。オンライン授業でしたから、画面を見て最初に目についたSさんを指名しました。「はい、温暖」という答えがすぐに返ってきました。すばらしい答えです。ばっちり予習してきたのでしょう。共有画面のホワイトボードに書いて、次にCさん、Jさん、Yさんと指名しましたが、「わかりません」でした。

たとえ予習をしていなくても、「温暖」という文字が画面に出ているのです。いやしくも超級の学生なら、それをヒントに「寒冷」ぐらい思いついて当然だと思うのですが。この3人は、先週の語彙の中間テストではそれなりの点を取っていましたが、暗記のたまものだったのかもしれません。それとも、クラスメートの答えからすぐに導き出される答えを口にすることを潔しとしなかったのでしょうか。

でも、その後は、死亡、変換、巨大、河川など、順調にしかるべき答えが出てきました。どうやら、たまたま気の利かない学生を3人続けて指名してしまったようでした。やっぱり、全体を見渡せば、力があるなあと思いました。

はっきり言って、日本人だって、同じような意味の漢字を2つ重ねた熟語を挙げろと言われても、とっさに答えられる人は多くないと思います。そう考えると、Sさんが偉くて、Cさんたちの方が普通だとも言えます。でも、このクラスの学生たちには入試が待ち構えています。入試を勝ち抜くには、豊富な語彙力が不可欠です。だからこそ、こういう問題をやらせているとも言えます。

日本語学校は変なガイジン養成機関だとも言われます。このクラスのみんなを早くその域に送り込みたいです。

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大学に入ってから困らないように

8月18日(火)

Cさんは、理科に関しては優秀な学生です。受験講座でこちらが一通り説明をすると、EJUの過去問はだいたい解けます。まだ中級ですから、問題文を読むのに時間がかかることがありますが、11月まで訓練を続ければかなりのところまで伸びるでしょう。数学も筋がいいという話を聞いていますから、11月に予定通りEJUが実施されたら、理系科目では高得点が期待できそうです。

Cさんに弱点があるとすれば、応用力です。知識を組み合わせたり想像力を働かせたりして答えを導き出すことが苦手のようです。単一の知識に基づいて答える問題には強いのですが、いくつかの知識を総合して答える必要がある問題となると、勢いが止まってしまいます。EJUの選択問題には答えられても、そこから発展した質問をすると、考えをまとめられないようです。

EJUなら、平均点など軽く上回る点が取れるでしょう。80点台も夢ではありません。しかし、大学の独自試験はどうでしょう。点数になる答案が書けるか心配です。口頭試問も、理路整然と説明できるかとなると、不安を感じずにはいられません。

Cさんの志望校がEJU+面接という大学なら、今のCさんでも勝負できます。しかし、それ以上の試験があるとなると、かなりの鍛錬が必要です。いや、たとえEJUだけで入れる大学であっても、Cさんがこのまま進学したら進級できないかもしれません。大学で壁にぶつかって身動きが取れなくなるなどということのないように、KCPにいるうちにマークシートでない発想法も身に付けさせておきたいです。

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進学への道

8月17日(月)

午前中は、中級の学生に向けて進路指導のオンライン授業をしました。現在残っている学生たちは、ほぼ全員が進学希望で、なおかつ来年3月にはKCPを卒業しなければなりません。それまでに、絶対どこかの大学や大学院への進学を決めければなりません。いつまでも夢を見ているわけにはいかないのです。

というわけで、学生たちにとっては厳しい内容の話になりました。ちょっと前に行った実力テストの結果を示して、「超級レベルの学生とみなさんとの間にはこんなに大きな実力差があります。超級レベルの学生と同じ大学を受験して合格できると思いますか」と問いかけました。オンラインでしたから反応がはっきりとはつかめませんでしたが、ショックを受けた学生もいたのではないでしょうか。でも、ここを直視しないと、最終的に泣きを見るのは、学生自身です。

午後は、指定校推薦の学生を決める面接をしました。こちらは上のレベルの学生ばかりでしたから、わりとスムーズに進みました。それでも、認識が甘いところがあり、ちょっと突っ込むと答えられなくなる場面が、推薦希望学生全員に見られました。出願・入試までには少し時間がありますから、これから鍛えていかなければなりません。正確には、鍛える時間も見込んで、早めに学内面接を設定したのです。

それから、土曜日に添削したW大学過去問の答案をDさんに返しました。大筋では間違っておらず、そこそこの点は取れるでしょうが、合格に近づくにはもうひとひねり必要です。そのもうひとひねりを中心に、答案の書き方を指導しました。

夜になっても汗が噴き出る日が続いていますが、暑さになんか負けている暇などありません。

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公私混同はいけません

8月15日(土)

W大学を受験するDさんから頼まれた過去問の答案の添削と、受験講座理科の上級の学生に出した筆記問題の答えのチェックをしました。どちらも、昨日うちへ仕事を持ち帰っていれば、わざわざ学校まで出てくることもありませんでした。しかし、うちで仕事をするというのはどうも好きになれないので、いつものように職員室の机に向かっています。

前に勤めていた会社で、職場も社宅・独身寮も厚生施設の体育館などもすべて同じ敷地にあるという勤務地がありました。寝床から事務所まで、KCPからせいぜい区民センターぐらいまでの距離だったでしょうか。まさに職住接近で、通勤に要する時間はほんの数分でした。

でも、その代わり、公が私に、時間的にも空間的にも、情け容赦なくめり込んできました。逃げ場がなく、常に仕事とともに暮らしているような感じでした。この息苦しさはたまりませんでした。もう二度と味わいたくないですね。だから、私は仕事をうちへ持ち帰るのに抵抗があるのです。まあ、時間をだらだらと使い、きちんと区切りが付けられないだけなのでしょうけど。

そういう意味で、私は毎日学校に通うことをさほど苦に感じていません。往復の通勤電車で本を読む時間が、精神の健康を守る格好の防波堤になっています。もちろん、日本語や教育問題のような、学校にかかわる本を読むこともあります。でもそれは趣味の延長線上で、仕事に生かすつもりで読んでいるわけではありません。こんな私は、どうやら、個人商店の店主には向いていないようです。

今、在宅勤務が広まりつつありますが、聞くところによると、私が襲われたような、一般とは逆の意味の公私混同がそこかしこで起きているようです。この問題が解決して初めて、働き方改革と言えるのではないでしょうか。

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名誉の負傷

8月14日(金)

感染者が増えたとか広まったとか言っているうちに、中間テストの日になってしまいました。オンライン授業だったり対面授業だったり日本語教師養成講座をしたり受験講座をしたり、毎日右往左往していたら、もう学期の半分です。早いものですね。

最上級クラスの漢字の問題に、「…夕日に映えて美しい」の「映えて」の読みを書くというのがありました。採点しみると、「うつえて」などというのは問題外ですが、「ばえて」という誤答が目立ちました。老眼の私は、最初、濁点を見落としていました。でも、「は」の上が何となく汚れているような答案がちょくちょく出てきましたから、メガネを外して近眼の目をその字に近づけて注意深く確かめると、明らかに「は」に濁点が付いていました。答案用紙を再点検すると、濁点付きがザクザク現れました。

明らかに「インスタ映え」の影響です。日本人なら、インスタ『ば』えであっても、「夕日に映えて」は「『は』えて」と答えるでしょう。しかし、この問題を間違えた学生たちは、そこまでには思いが至らなかったのです。でも、この学生たちは「映え」という流行語を使いこなしているに違いありません。

その1つ下のクラスのテストに、「化石」の読みが出されました。中国の学生に「かし」という誤答が目立ちました。「石」の発音は、中国語では「shi」です。他の国の学生はちゃんと「かせき」と答えていましたから、母語の干渉であることは疑う余地がありません。

この2つの誤答を比べると、片や日本語に慣れ過ぎて間違え、片や母語を引きずって失点しています。そう考えると、「ばえて」は名誉の負傷のようにも見えてきます。「さすが最上級クラス、立派な間違え方をした」とほめてあげたくすらなりました。

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雷雨のち虹

8月13日(木)

受験講座の終わり近く、突然の低い雷鳴に驚き窓の外に目をやると、真っ暗ではありませんか。激しい雨も降っています。受講生たちは不安そうな顔をしていました。きっと、傘を持って来なかったに違いありません。「通り雨だから、すぐにやむよ。授業が終わったら、ラウンジで休んでいきな」と声をかけると、少し安心したようでした。

授業が終わって廊下に出ると、なんという蒸し暑さ! 換気のため外階段に通じるドアを開放していますから、雨の湿気をたっぷり含んだ熱気が廊下に充満しています。結露するんじゃないかなあと思ったくらいです。

教室の後片付けを済ませて1階に下りると、傘を借りに来る学生が続々と。あっという間に貸し出し用の傘が消えていきました。午前中の青空を見ていたら、傘を持ち歩こうとは思いませんよね。でも、天気予報は午後雨が降ると言っていました。それに、昨日も雷でしたが、夏の雷はしばらく続くものです。この週末も、同じような時間帯に雷雨があるのでしょう。

昨日もそうでしたが、雨が降ったのにいっこうに涼しくなりません。気温はたいして下がらず、湿度はぐんと上がって、毛穴がふさがりそうな暑苦しさです。いや、下がってはいるのですが、元の気温が高かったため、下がってもそれなりに暑く、湿度が上がったので素肌に水蒸気が絡みついているような感じです。

でも、ほんの短い時間でしたが、職員室の窓から虹が見えました。ビルの隙間のほんのわずかな空に、角度にして30度ぐらい、七色の橋が架かっていました。何かいいことがありそうだなと、勝手に信じています。

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進路指導

8月12日(水)

現在中級の学生は、ほぼ全員、来年の3月にKCPを出なければなりません。日本語学校に在籍できるのは、最長で2年までですから、どうしても進学しなければならないのです。でも、去年の10月に入学した学生は、去年11月のEJUは出願できなかったし、今年6月のEJUは中止になったしで、自分の実力を公平に測ったことがありません。7月入学の学生も、「まだまだ」と思って去年の11月に出願しなかったり、受験しても玉砕だったりで、参考になるデータは、やはりありません。それゆえ、志望校を決める手掛かりがなく、右往左往するか動くに動けないか、いずれにしても宙ぶらりんの状況です。

志望校一つにしても、自分の実力がつかめていませんから、憧れが先行したり、知っている大学名を列挙しただけだったりという学生が少なくありません。どんな大学があるか知らないということも見逃せません。また、大学で勉強するとはどういうことなのかということすら、はっきりと見えていない気がします。

そんな学生たちに進学についての柱となる考え方を植え付けてほしいと、中級の先生方から言われています。そういう話をするのは必要だというか、遅いくらいですが、どんな話をすればいいかとなると、私もこういう状況を経験したことがありませんから、難しいものがあります。ここでぎゅっと押さえておかないと、年が明けてから苦労するのは教師の側もですからね。

だけど、来年の4月には大学が通常の授業ができるくらいに、日本の国自体が回復しているでしょうか。オンラインばっかりだったら、受かったけど帰国する何という学生も出てくるのではないでしょうか。それが学生自身のためになるなら、気持ちよく帰すのも、私たちの仕事だと思います。

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