Category Archives: 学校

素晴らしい学生

11月29日(水)

授業後、Aさんの面接をしました。Aさんは今学期の新入生で、毎日非常に熱心に授業に参加しています。そのAさんがどんな考えを持っているのか、私たちの授業にどんなことを望んでいるのか、そんなことも探ってみようと面接に臨みました。

Aさんは、日本では進学しません。国で大学院に進学します。ちょうどギャップイヤーのような時間を利用して、あこがれていた日本に留学しました。ですから、日本での生活を精いっぱい楽しもうとしています。授業後の生活の様子を聞くと、友達と食事に行ったり、初級レベルの休み時間にラウンジで待ち構えて初級の学生たちとおしゃべりしたり、時には昼カラオケにも興じています。「クラスの学生は?」と聞くと、「みんな優しいです」と答えていました。今のところ、東京の空気が乾燥し過ぎていて風邪気味なのを除けば、ほぼ満点の留学生活ではないでしょうか。

勉強について聞くと、始業日にもらった文法や語彙の問題などは、もうすべてやってしまったそうです。読解の教科書も、授業で取り上げたものはもちろん、興味を持った文章はどんどん読んでいます。「Aさんは勉強が好き?」という問いには、間髪を入れずに「はい」という答えが返ってきました。勉強が嫌いなくせに大学や大学院に進学しようともくろんでいる学生たちとは正反対です。

読解の教科書は1回読んだだけでほぼ理解できるとのことですから、もともと頭がいいのでしょう。しかも勉強が好きで、どんどん先回りするのですから、成績がいいのも当然の結果です。好奇心も強いので、学校外でも毎日新発見の連続に違いありません。教師にとっては理想的な学生です。

でも、喜んでばかりはいられません。教師としては、Aさんの学力をさらに伸ばし、好奇心も満たすような授業が求められます。来週は何を出せばいいのかな…。

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みどりの窓口閉鎖

11月25日(土)

先日、所用があり、JRの有楽町駅を通りがかりました。すると、「有楽町駅にはみどりの窓口はございません」という大きな張り紙が目に留まりました。大阪まで新幹線などといった指定席券は券売機で買える、割引切符も券売機で対応可能、どうしても窓口で買いたい人は東京駅か新橋駅へ行ってくれ、という意味のことが書かれていました。

感染症対策の在宅勤務で、都心の駅は乗降客数が減りました。それでも有楽町駅は20万人を数えます。そういった多くの利用客がいる駅からも、みどりの窓口は消えているのです。もっとも、今はスマホやパソコンから指定券の予約・購入ができ、一部はチケットレスで改札を通過できます。ですから、みどりの窓口の需要が減っていることもまた確かです。

そうはいっても、有楽町駅は銀座の最寄り駅であり、最近激増している外国人観光客も数多く利用しているはずです。そういった人たちは、券売機を操作して指定券などが買えるのでしょうか。

夏休みに四国へ行ったとき、JR松山駅のみどりの窓口で、わずか30秒足らずの用事のために、20分以上も待たされました。窓口は2つ開いていましたが、1つは日本人が複雑な切符を作ってもらっていて、もう1つは外国人が窓口の係員と相談しながら指定席の予約をしてもらっているようでした。銀座あたりを歩いている外国人観光客で駅員と相談したい人は、みんなJTBみたいな旅行代理店か東京駅に回るのかな。

10年ぐらい前は、松山駅のみどりの窓口は2つではなかったように思います。JR四国もJR東日本も、最近の経営状況はよろしくないという噂ですから、人減らしに励んでいるのでしょうか。単なる人減らしなら、経営が回復したら元に戻る可能性もあります。しかし、人手不足のためだったら、有楽町にみどりの窓口が復活する目はなく、松山駅だって窓口が1つに減らされるかもしれません。

駅員さんに限らず、近ごろ至る所で働き手がいないという話を聞きます。運転士がいないからバスが減便されたとか、医師不足で地方の中核病院の診療科が閉鎖されたとか、80歳を超えた介護士が在宅介護に回っているとか、大阪万博だって建設業界の人手不足のために開催が危ぶまれています。働き方改革で働き手がさらに必要なのに、募集してもさっぱり集まらないという現象が、全国的に見られます。

日本語教育業界も人が足りません。ご興味のある方、ぜひどうぞ。

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怪しい学生

11月14日(火)

朝6時半、「金原先生、おはようございます」と、ロビーから呼びかけられました。真っ暗な中から顔を出したのはEさんでした。「勉強したいです」「2階のラウンジ、開いてなかった?」「はい、閉まってました」ということなので、鍵を持って一緒に2階へ。ドアに鍵を差し込んで回すと、なんとなく開いてるっぽい感じがしました。逆向きに回すとカチャッといって、レバーを押してもドアはびくともせず、鍵がかかってしまいました。何のことはない、Eさんはドアが閉まっているのを見て、鍵もかかっていると思い込んでしまったのです。

中間テストや期末テストの日には、こういうふうに朝非常に早く出てくる学生がいます。ラウンジで勉強する学生もいますが、中には夜更かししてそのまま登校し、ラウンジでひと眠りという輩もいます。昨日昼まで寝ていて欠席したEさんは、そういう疑いが濃厚です。

試験監督に入った中級クラスは、成績停滞気味の学生が多いと知らされていました。最初の試験科目・作文の原稿用紙を配り、課題を提示すると、学生たちは一斉に書き始めました。ここまではいつもの試験監督と同じですが、このクラスは試験特有の良い意味で張り詰めた空気に欠けています。その原因は、貧乏ゆすりでした。教室のあちこちで膝が揺れています。教室内を見て回ると、小刻みに上下にだったり、左右に大きくだったり、机の下でうごめく生物が目についてなりませんでした。

「貧乏」ゆすりと呼ぶくらいですから、日本人はこれをみっともないものとみなしています。しかし、学生たちの生まれ育った社会では、必ずしもそうでもないようです。面接練習でもよく見かけます。でも、しっかりした学生は、きちんと座っているものです。体を動かさずにはいられないという落ち着きのなさが、このクラスの停滞の一因ではないかと思いました。

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朝一の香り

11月13日(月)

朝、鍵を開け、誰もいない真っ暗な職員室に入ると、甘酸っぱいような芳香がほのかに漂ってきました。あ、やっぱり。実は、土曜日に、F先生のご実家から、毎年恒例のりんごが届きました。F先生がお休みだったので、届いた箱のまんま、机の上に置かれていたのです。1日半の間密閉されていた職員室に、りんごの香りが広がっていたというわけです。これをかぐと、晩秋というか初冬というというか、季節の移ろいを感じます。

ついこの前まで「暦の上では冬なのに、夏日を記録しました」などと言っていたのに、週末あたりから暦通りどころか暦を先取りする勢いの寒さが続いています。今朝は、北海道から沖縄まで、今期最低の気温を記録した観測地点が多かったようです。雪も北海道の朱鞠内や青森県の酸ヶ湯のような常連地点だけではなく、鳥取県の大山でも結構積もっています。ただし、雪がたくさん降るのは、日本海の海水温が高く、そこを吹き渡る季節風がたっぷりと水蒸気を吸い込むからでもあり、地球温暖化の結果でもあります。

さて、明日は中間テスト。こういう定期試験の前日の日本語プラスの授業は、自主休講する学生が大勢いるのですが、今学期私が担当している文系数学クラスは、全員出席しました。うち1名は、昨日のEJUの数学があまりに手応えがなく、また一からやり直したいということで出てきたとのことですから、喜んでばかりもいられません。でも、6月に向けて再スタートの初日としては、出足好調で期待が持てます。

鞄の中にはりんごが入っています。大切に持ち帰って、部屋に置いて、気持ちが安らぐ香りを部屋に満たしてもらってから、いただくつもりです。

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我が道を行く

10月16日(月)

数学の時間、過去問を配るとみんな一斉に解き始めました。改めて問題文を読んでみると、1か所だけ授業で扱わなかった言葉がありました。問題に取り組んでいるのを中断するのは心苦しかったのですが、この言葉の定義をきちんと伝えないと、そのあとの問題は解きようがありません。偶然正解したとしても、そこに至るまでの道筋を論理的には説明できないでしょう。「なんとなくこれだと思ったから…」となるに違いありません。

私の説明を聞いていたDさんやLさんは正解が得られました。しかし、私が説明している間も解きつづけていたTさんは、そこから先ががたがたでした。Tさんは一番よくできる学生ですが、こういうことで変な方向に進んでしまうことがたびたびあります。

数年前の卒業生Qさんも、“思い込んだら試練の道を”突き進むタイプの学生でした。ほんのちょっとの勘違いなのですが、その誤差がどんどん拡大していって、ついには取り返しのつかないことになってしまうのです。Qさんは知識があり、その知識を組み合わせる力も持っていましたが、問題文を読み解く点に難があり、持ち前の能力を点数に結び付けられませんでした。Qさんは6月のEJUで痛い目に遭いました。そこで大いに反省し、11月にはどうにか軌道修正が間に合い、結果的には目標としていた“いい学校”に手が届きました。

Tさんはどうでしょう。6月にそこそこの点を取り、今回はそれに上積みしようと思っていますが、うまくいくでしょうか。残り1か月弱でそういうミスをなくせるかどうかが、運命の分かれ道です。

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ペットボトル

10月13日(金)

学生がみんな出た後、教師は教室をざっと確認します。机の中をのぞいて忘れ物がないか見ます。机の中に限らず、教室中を見まわします。もちろん、授業の最後に忘れ物がないかどうかよく見てから帰れと注意します。傘の忘れ物はそのまま傘立てに置いておきますが、机の中に突っ込まれたごみは回収するほかありません。次に教室を使う学生たちにも気持ちよく使ってもらいたいです。ごみに紛れて、返却したテストや宿題が丸まっていることもあります。こういうテストや宿題は、概して成績が悪いですから、他のクラスの学生には見せるわけにはいきません。このクラスの恥です。これも回収して、翌日の先生から説教の上、本人に渡していただきます。

午後の授業が始まって受付が落ち着いた頃、Eさんが来て、「教室にペットボトルを忘れたんですが、届いていませんか」と尋ねられました。水筒ならきちんと回収して翌日本人に返すようにしていますが、飲みかけのペットボトルは、回収して中身を流してボトルも捨ててしまいます。大量生産の飲み物なら翌日誰のか聞いてもわからないでしょう。翌日まで取っておいたら、中身が発酵してそれを飲んだ学生がお腹を壊したなどということも起こりかねません。すぐお腹が痛くなって休む学生たちですから。

そういうわけで、Eさんのものらしいペットボトルもありましたが、すでに処分してしまいました。そう伝えると、たった一口しか飲んでいなかったのにと、盛んに残念がりました。そんなに残念がるのなら、なおさら机の中や周りをよく見て、忘れ物をしないようにしておいてもらいたかったです。

おとといは、Wさんが財布を丸ごと机の中に置いて帰りました。本人も気づいて、メールを送ってきました。飲み物なら100円台ですが、Wさんの財布は、カードも入っていましたから、全財産だったかもしれません。こういう忘れ物は困りますが、1学期に何人かいるんですよね…。

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入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。このように世界中の国々からたくさんの若者がこの学校に入学してくれたことをうれしく思います。

日本語に限らず、語学の勉強は、それを専門にしようと思っている人、あるいは外国語の勉強が趣味だという人以外、それ自体がゴールになることはありません。ある言語を身に付け、それを使って何かをするところにゴールが設定されるものです。みなさんは、日本語で何をしようと思っていますか。

大学院や大学への進学を考えている人は、その進学先での研究や勉強が当面のゴールでしょう。専門性を身に付け、磨き、その後、仕事を通して世の中に貢献しようと考えているのではないでしょうか。芸術系志望の人は、先生からの教えを吸収して自分の技量を上げるために、日本語を学ぶという人も多いと思います。

このように、みなさんにとって日本語は、そしてそれを学ぶ場であるKCPは、人生における通過点に過ぎません。勉強の時期が過ぎたら日本語はそれ以上必要なくなるかもしれませんし、KCPは学歴としてみなさんの履歴書を飾るわけでもありません。しかし、私たちはみなさんにKCPで濃密な日々を送ってもらいたいと思っています。

日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、さらにはアルファベットまで加えれば4種類の文字で構成されるという、世界に類を見ない言語です。それだけに難しくもあり、挑戦のしがいがある言語です。語彙面では擬音語擬態語、文法面では敬語や授受表現など、上級になっても学ぶことが多い、奥深い言語です。

最近は自動翻訳が発展し、レベル1の学生も立派な日本語で欠席理由をメールしてくることもあります。私たちも、時には翻訳ソフトを便利に使わせてもらいます。だからといって、進学先での勉学において日本語の重要度が下がることは考えにくいです。勉強内容が高度になればなるほど、日本語学習の重要度は増します。

日本で就職しようと思っている人は、仕事を円滑に進める上で、日本語は必要不可欠です。大きな仕事をなすためには、良好な人間関係が欠かせません。日本語が理解できずに良好な人間関係を築くことは不可能です。それも、表面的な日本語力ではありません。相手の心の内を推し量れるレベルの日本語力です。

KCPは、このような、いくらでも深掘りできる日本語を、みなさんの実力に合わせて、みなさんが満足するまで教えていきます。みなさんが設定したゴールによっては、みなさんに嫌がられてもそのゴールに到達できるレベルの日本語力にまで、みなさんを鍛え上げていきます。覚悟していてください。

それと同時に、KCPでの生活がみなさんの人生を彩るものとなるように、様々な企画を用意しています。みなさんのクラスには、みなさんにとっての外国人が必ずいます。みなさんが今までに在籍した学校よりも幅広い年齢層の同級生がいます。そういった人たちと刺激し合って、みなさんの人間性を豊かにしていってください。

また、クラブ活動や学校行事も、みなさんの留学生活を豊かにするものと信じています。それらを通して、交友関係を広げたり日本に対する理解を深めたりしてください。こうしているうちに、日本語もKCPも、みなさんにとって単なる通過点ではなくなっていきます。これこそが、有意義な留学生活なのです。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

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書類不備

9月27日(水)

O先生のところにJさんから電話がかかってきました。Jさんは先月末にK大学に出願しましたが、K大学から受験料を返すというメールが届きました。そのメールについてO先生に聞こうと電話を掛けたのです。O先生が席を外していたので、A先生が対応しました。

A先生がいろいろ聞き出すと、K大学は、Jさんの書類に不備あるので受理できず、したがって受験もできないので、受験料を返還するということのようでした。Jさんはそのメールの内容が理解できず、学校に電話を掛けたという次第です。

K大学に出願したJさんの友だちにはK大学から連絡が来て、足りない書類を追加で送ったりした人もいたそうです。でも、Jさんは締め切り日ぎりぎりに出願したので、K大学の書類チェックが遅れたのでしょう。

「願書をK大学に送る前に先生に見てもらいましたか」「はい」。O先生がチェックしたのにこのざまだとしたら、大問題です。「O先生に?」「いいえ、塾の先生に」。ということで、Jさんは担任のO先生をスルーして塾の先生に最終チェックをしてもらったのですが、結果的に書類不備のまま送ってしまったのです。

出願の時には塾を頼るのに、問題が発生するとこちらに持ち込みます。学生によくあるパターンです。塾の先生は国の言葉を話しますから、学生にとっては相談しやすいです。しかし、学生の進路に関して最終的な責任を持つのは、日本語学校です。責任を持つからには、学生にもすべての情報をこちらに回してもらいたいものです。

それはともかく、K大学からのメールも持て余しているようだとしたら、たとえK大学を受験しても受からなかったでしょう。むしろ、受験料を返してもらってラッキーと思わなければならないかもしれません。

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遅延証明書

9月13日(水)

9:10ごろ、Yさんが教室に入ってきました。月曜日の私の授業でも、10分ちょっと遅刻でした。ディクテーションをしている最中でしたから、Yさんを無視して文を読み上げ、答え合わせをして…と授業を続けました。遅刻の理由は聞くまでもありませんし。

10:30、休憩時間になると、Yさんは真っ先に私のところへ来て、丸ノ内線の遅延証明書を渡そうとしました。

「これは受け取れません。Yさんは月曜日も遅延証明書を持ってきましたよね」

「でも、地下鉄が遅れました」と、いかにも自分は悪くないという風情。

「月曜日だけじゃなくて、今までに何回も遅延証明を持って来ていますよねえ。毎日のように遅延証明をもらうということは、朝は丸ノ内線は遅れるものだと思って、何か対策を立てなければならないんじゃないんですか」

「毎日じゃありません。1週間に2回ぐらいです」

「1週間に2回でも、5回の2回だから40%の確率でしょ。1年に2回ならともかく、確率40%で起こるなら、そのために何かするのが当然です。早起きして早い電車に乗るとか」

「でも、この遅延証明をもらうのに5分かかりました」

「じゃあ、こんなのもらってくるなよ。駅から学校まで走れよ。階段を駆け上がれよ」

「走りました」とYさんは言いましたが、教室に入ってきたとき、汗もかいていなければ、息も乱れていませんでした。急いだ様子は、露ほどにも感じられませんでした。その後、遅刻と欠席のルールを説明し(新入生ガイダンスの際に説明済み)、5分遅刻と10分遅刻都では扱いが大きく違うことを改めて教えると。

「私は出席率が悪いですから、この遅延証明をもらってください。明日から遅刻しません」と、Yさんは泣き落としにかかってきました。

「受け取るわけにはいきません」と、あくまで受け取りを拒否しました。受け取って破り捨ててやろうかとも思いましたが、それは穏やかじゃなさすぎますから、やめておきました。

明日のYさんの登校時刻に注目しましょう。

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進歩は退歩

8月26日(土)

おとといから、学校にかかってくる電話が急に増えました。電話の相手は、何語かよくわからない言葉で一方的にまくしたてます。こちらは海外からの入学希望者かもしれないので誠実に対応しようとしますが、それには一切反応を示しません。昨日あたりからは、「あ、またか」という感じで、まともに取り合わないことにしています。

各方面からの情報によると、同様の迷惑電話は官公庁をはじめとして、日本中にかかってきているようです。処理水の放出に対する抗議の一端のようですが、KCPのような処理水とは全くかかわりのないところにも“攻撃”の手が伸びているようです。福島県の一般商店・飲食店も同様の電話で迷惑をこうむっているとなると、この電話の発信者を恨む気持ちしか湧いてきません。

発信者は、自分たちの行為によって処理水の放出が止まると思っているのでしょうか。確かに、処理水放出に関する日本政府の議論の進め方には感心できないものがあります。また、岸田さんは、ご本人の言葉とは裏腹に、他人の意見、特に反対意見など聞く耳を持たない人です。しかし、だからと言って、岸田さんや日本政府に向けるべき攻撃の矛先を、迷惑電話という形に変形して、処理水放出決定とは縁もゆかりもないところに向けるというのは間違っています。

昔、チェルノブイリ原発が事故を起こした時、放射性物質の拡散を恐れて世界中が縮こまりました。でも、このような迷惑行為はなかったと思います。当時に比べると、今は、通信技術の進歩によって、世界中どこからでも、どこへでも、気楽に電話がかけられるようになりました。進歩の悪用は、人間の退歩につながります。電話をかけている人(かけるように機会に命じた人?)は、こんなことすらもわからなくなっているのです。

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