Category Archives: 学生

心配性?

11月22日(金)

Sさんは、昨日のJさん同様、進学先が決まっています。そして、これまたJさん同様、オンラインの事前教育が始まっています。5分の動画に2時間というJさんほどではありませんが、20分の動画にたっぷり1時間はかかるそうです。動画の視聴が義務付けられているかどうかわからないけれども、心配だから見ないではいられないと言っていました。そういうまじめな学生だからこそ、指定校推薦で受かったのでしょう。

年内に合格が決まる大学や専門学校は、入試が行われた時点での日本語力で合否を決めるわけではありません。入試時には“まだまだ”という感じの日本語力でも、3月の日本語学校卒業まで日本語の勉強と練習を続ければ、進学先の授業について行けるだけの日本語力を身に付けるだろうという見込みに基づいて合格を出します。ですから、合格したからと言って喜びすぎて遊んでばかりいると、進学してからひどいしっぺ返しに遭います。毎年、その辺のことが理解できない学生がいて困っています。

Sさんは決して成績がいい学生ではありませんが、自分自身でそれをよく自覚しています。だから、どんなに時間がかかっても事前教育の動画をすべて見ようとしているのです。それだけではなく、話す力も伸ばさなくてはと、授業中も一生懸命話そうとしています。3、4人のグループで議論するのが一番面白いと言っています。

その一方で、Wさんはダメ元で受けた有名校に合格してタガが外れかかっています。今はSさんよりも日本語力が上ですが、この調子だと先行き心配でなりません。

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勉強法

11月21日(木)

中間テスト後の学生面接が始まりました。

Jさんはすでに専門学校の合格が決まっています。驚いたことに、オンラインの事前教育が始まっているそうです。さらに驚いたことに、5分の動画を見終わるのに2時間かかるときもあるとのことです。日本語の講義にも慣れていないし、専門用語もわからないし、大変すぎると言いつつも、Jさんは笑顔たっぷりの表情でした。

Jさんは完ぺきを目指す性格です。細かいところまでがっちり予習して、わからなかったことは教師にどんどん質問します。どれもが的を射た質問で、答える側にとっても意外な気付きが得られることが稀ではありません。そのJさんの質問数が、最近減ったのが気になっていましたが、裏にこんな事情があったんですね。Jさんが2時間かけて見る動画も、他の新入生は1回通しで見て終わりにしてしまうんじゃないでしょうか。

でも、そういうJさんの勉強に対する姿勢が、今のJさんの日本語力を形作っているのです。そして、入学前からこんなに準備(予習?)に余念がないのですから、専門学校に進学してからも、知識や技術をどんどん身に付けていくことでしょう。

Jさんはまだ中級ですが、会話力だけなら上級の学生と比べても決して見劣りしません。だから、アルバイトで鍛えられているのかと思ったら、全然したことがないとのことでした。Jさんは、教科書や聴解教材にあった語彙や表現を、例文や会話の中で積極的に使おうとします。もちろん使い方が間違っている時もありますが、そうやって間違えながら身に付けていくというのが、Jさんの流儀なのでしょう。初級の頃からの積み重ねが、“上手”につながっているのです。

来年の3月の卒業まで、Jさんはこの勉強法を変えずにいくでしょう。そして、さらに大きな成果を手にして進学していくに違いありません。4月からの専門学校では、日本人学生以上の成績をあげるのではないかと期待しています。

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自分の文章を読む

11月20日(水)

初級クラスのKさんが、昨日の宿題となっていた今学期の目標訂正版を提出しました。中間テストが過ぎ、学期初めに書いた目標を見直して、改めてスタートを切ってもらおうという発想です。

Kさんは目標そのものを変えたというより、目標の文言を直しました。私たちは学生からもらった今学期の目標を、一字一句直さずそのまま保管しておきました。それを、学期の半ばで読み直してもらい、変更すべきところは変更してもらおうというわけです。だから、Kさんのように、目標の軌道修正はせずに、その表現方法を変える場合もありうるのです。

学期初めのKさんの目標は、日本語になっていませんでした。Kさんは、昨日一時的に返却された今学期の目標を見て、愕然としたのかもしれません。“つい1か月半ほど前の私って、こんなに日本語が下手だったの?”なんて思ったかもしれません。再提出された目標は、だいぶまともになりました。Kさんは翻訳ソフトの手を借りるようなことはしませんから、自分で間違いに気づき、自分で直したのだと思います。

自分で書いた文章の誤文訂正は、できそうでできません。例えば、作文の時間に、自分で書いた文章を読み返して変なところは直して提出しろと言っても、そんなことをする学生はまずいません。読んでも間違いに気がつかないのです。思い込みが激しいので、誤用も正しく見えてしまうのです。

ところが、数週間時間が経つと、自分の文章でも自分の文章も相対化して見られるようになります。そうすると、目を曇らせていた思い込みもありませんから、間違いが見えてきます。これに加え、Kさんは、自身の日本語力の向上も、“あ、変な文を書いていたもんだ”という気付きにつながっているに違いありません。この進歩の実感が大切なのです。

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寒!

11月19日(火)

寒かったですねえ、今朝は。都心の最低気温は7.9度で、昨日より2度余り低かったです。今季の最低気温は9日(土)の7.8度ですが、それに迫る気温でした。でも、これで平年並みです。今までが暖かすぎたのです。これからしばらく、最低気温が一ケタ台の日が続くそうですから、ようやく気温が季節に追い付いたようです。

もちろん、コートにマフラーで出勤しました。手袋はしませんでしたが、してもおかしくない風の冷たさでした。コートは重かったですが、その威力は絶大で、そんな風に吹かれても寒さは感じませんでした。ヒートテックなしでも、もう少し頑張れそうです。

職員室の鍵を開けて中に入ると、少しひやんとしました。思わず、暖房のスイッチを入れました。朝一番で表玄関のドアを開け放つのが毎朝の私の仕事ですが、今朝は他の先生がいらっしゃる直前まで開けませんでした。でも、もう保温のためにドアを閉めておいてもおかしくない時期ですよね。

教室に入ると、欠席4名。うち2名が遅刻で来ました。その2名に理由を聞くと、異口同音に「寒くて起きられませんでした」と答えました。毎年そんな学生が現れますが、今年もそういうシーズンになったのだなあと思いました。そういう答えに対して「バカ者!」と言ってやるのが冬の風物詩です。

日本語プラスが終わると外は真っ暗です。受講生のSさんは、フード付きの暖かそうなオーバーを着込みました。「先生、さようなら」と言って、帰っていきました。その後を追って、私も外階段を下りました。スーツの上着を突き通して肌に刺さる外気は、10度を割り込んでいるかもしれません。一気に冬ですね。

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メモ魔歓迎

11月16日(土)

中間テストの聴解を採点しました。すべて記号(番号)で答える形式でしたから、採点そのものは楽でした。できると思っていた学生は高得点を取り、授業中からダメっぽかった学生はせいぜいぎりぎり合格点で、結果はおおむね予想通りでした。

高得点の学生とできない赤点の答案用紙を比べると、メモの量が全然違いました。100点だったSさんも95点だったCさんも90点だったGさんも、みんな細かい字で聞き取った情報をメモしていました。80点以上だった学生は、ほとんどが、母国語であったとしても、メモ欄を大いに活用していました。

一方、最低点だったLさんをはじめ、不合格になった学生は、メモ欄がほぼ白紙でした。何も聞き取れなかったのかもしれません。Jさんは、授業中の様子を見る限り、満点に近い成績だろうと思っていたのですが、80点に届きませんでした。メモ欄は真っ白でした。Jさんもきちんとメモを取っていれば、高得点組に名を連ねたのではないでしょうか。

授業で聴解をするときは、メモを取るようにと口を酸っぱくして注意しています。しかし、ボーッと聞いているだけの学生は、どのクラスにも必ずいます。聴解問題には何を聞き取るのかという指示がありますが、それすら理解できず、だから何をメモすればいいかわからないという可能性もあります。そうなると、どこから指導していけばいいかわからなくなります。

とはいえ、中には聴解の天才がいます。数年前の学生Kさんは、ずっと集中して問題を聞き、決してメモを取りませんでした。そして、問題が終わるや否や、自分の答えの番号をマークしました。最後に採点すると、正答率は、悪くて9割でした。爪の垢をもらっておくべきでした。いや、聴解ですから、煎じて飲むなら耳の垢の方が効き目があるでしょうか。

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思い出

11月15日(金)

教科書に中学・高校の思い出を語る場面が出てきました。それに関連して、数人のグループで自分の中学・高校の思い出を語ってもらいました。すると、どのグループもスマホの写真を見せあったりしながら、話を打ち切るのがかわいそうなくらい盛り上がっていました。

中国の学生は、ほぼ全員が、朝7時頃から夜は9時か10時まで勉強させられたそうです。昼休みが2時間あったので、うちに帰って食べていたという学生もいました。韓国の学生は、学校は3時か4時に終わるものの、毎日やはり9時か10時頃まで塾に通っていたと言っていました。

そんな彼らにとって、午前中で終わってしまうKCPは楽勝みたいです。何の縛りもないと不安だから、塾に通ったり家庭教師を頼んだりしている面もあるように感じました。3.11の前あたりまでは、学生は授業後アルバイトに励むのが常識でしたが、今は塾に通うのが当然のようです。

かつてのアルバイト疲れが、塾疲れ、勉強疲れに置き換わっただけで、朝から辛そうにしている学生、ぎりぎりまで寝ていて遅刻寸前に教室に飛び込んでくる学生が多いことは変わりありません。学生にはのびのびとした留学生活を送ってほしいですが、その結果進学できなくなってしまっては困ります。

授業の最後に、私の中学時代の思い出を言いました。Jさんよりも少し長い坊主頭だったと言ったら、学生たちは「えーっ」なんて言っていました。半世紀も昔のことですから、今もその学校の男子生徒が坊主頭かどうかはわかりませんが…。

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漢字難しい?

11月14日(木)

中級間テストの試験監督に入った上級クラスの最初の科目は作文でした。といっても、今学期の上級の作文は選択授業ですから、学生によって試験内容が異なります。20人のクラスに3種類の試験問題が混在していたため、最初はあわただしかったです。

そのあわただしさが落ち着いた後も、昨今はスマホ中毒の学生が増えていますから、試験時間が終わるまで教室中を油断なく見回らなければなりません。悪気がなくても、手が無意識のうちにスマホに伸びているということがあるのです。机の上に右手しか出していない怪しい学生が1人いましたが、近づいてみると、左手は太ももと椅子の間に挟み込んでいました。指先が冷たかったのでしょうか。

Kさんの横を通過した時、Kさんに呼び止められました。「先生、消しゴムを貸してください」とねだられました。「消しゴムも持ってこないで試験を受けるとは何事だ」と説教したいところですが、試験中ですから、「揚げます」と言って、黙って消しゴムを手渡しました。こういうことも予期して、試験監督に入るときは、消しゴムを数個持って行きます。それが役に立ちました。“備えあれば憂いなし”というのとはちょっと違う感じがしますが、ペンケースに忍ばせておいた消しゴムがKさんの元へと巣立っていきました。

せっかく消しゴムをあげたのに、その後のKさんの答案は空欄が目立ちました。最後の科目、漢字・語彙に至っては、試験用紙の裏側が真っ白でした。帰ろうとするKさんを呼び止めて「裏側は?」と聞くと、「全然わかりません」と言い残して、結局帰ってしまいました。

Kさんの、漢字・語彙以外の中間テストの答案用紙を見ると、気の利いたことを書いているではありませんか、ひらがなで。また、Kさんはこなれた日本語を話します。でも、漢字がここまで書けない読めないとなると、進学にかなり分厚い暗雲が垂れ込めていると言わざるを得ません。

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野分のまたの日

11月11日(月)

朝、教室に入ると、Yさんの姿がありません。Yさんは昨日EJUを受けているはずです。若干不吉な予感がしました。同じくEJUを受けたはずのGさんも9時にはいませんでしたが、そのうちこっそり教室に入ってきました。明るい表情で授業を受けていましたから、こちらはまあまあだったのでしょうか。

Yさんは、後半の授業が始まった直後に来ました。授業には普通どおりに参加していました。しかし、授業が終わってみんなが帰った後、「先生、もうダメです」と声をかけてきました。数学も理科もうまくいかなかったようです。でも、6月の点数が使える成績でしたから、それで勝負をかけることになるでしょう。

そこに加わってきたZさんも、数学で解けなかった問題があったという、あまり景気のよくない話をしてくれました。「理科はほぼ完璧だと思いますが、これでS大学に行けますか」「S大学は独自試験を重視するから、そっちの数学や理科ができれば可能性はあると思うよ」などという、進学相談もどきをしました。

職員室に戻り、メールをチェックすると、Bさんから志望校について相談したいというメールが来ていました。日本語プラスの授業後なら時間があると返信すると、すぐにそれでお願いしますと返事が来ました。

Bさんも、思ったほど点が取れないのではないかという心配をしていました。Bさんの志望学部は特殊ですから、出願できる大学が限られています。さらに成績が伸びなかったとなると、さらに可能性が狭まります。過去のデータを基に、最悪の場合、この辺の大学でどうかというアドバイスをしました。

うわさによると、理科系志望のWさんは、数学コース1を答えてしまったとのことです。これはもう絶望的です。幸いにも6月の成績が使えそうですから、最悪のパターンには陥らずに済みそうですが、Wさんはさぞかし気落ちしていることでしょう。今度会ったら慰めてあげることにします。

今シーズンの進学指導は、難問山積のようです。

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オリンピックの陰に

11月9日(土)

昨日の作文の添削と採点をしました。私が担当している中級クラスでは、文章で意見を述べる型を身に付けてもらうことに力を入れていますから、作文の時間には型を示し、型に合わせて使って(覚えて)ほしい表現もパワーポイントで見せています。

昨日は、自国でオリンピックやワールドカップのような世界的なスポーツ大会を開催することについての賛否を述べてもらいました。作文を書く前に数名のグループで意見を言い合って、自分とは違う意見の人の考え方も聞いてもらいました。この話し合いが思いのほか盛り上がり、いろんな形で議論を続けさせたくなりましたが、それでは授業の趣旨と全くかけ離れてしまいますから、泣く泣く打ち切って、作文に移りました。

教室内を回っていると、あちこちから声がかかって、こういうことを言いたいんだけど、どう書けばいいかとか、こういう書き方でいいかとか聞かれました。議論が盛り上がった余韻なのかなと思いました。

作文の時間は、勉強した語彙や表現を実際に使ってみるという考えから、教科書やノートは見てもいいことにしています。その代わり、スマホの辞書などは厳禁です。私が教室をうろちょろするのは、辞書代わりでもあるのです。もちろん、スマホを使わせないように監視もしています。

学生がスマホの辞書を使うと、概して難しい表現を見つけ出し、それを使うのですが使いこなせずに文をぎくしゃくさせてしまいます。その結果、文章全体に害毒が回り、添削も採点も難しくなるのです。書いた本人だって、書いた直後ならまだしも、作文が返却された時に読み返しても、何が書いてあるのかわからないと思います。

その作文を、朝から添削しました。Kさんの作文が妙にこなれていました。Kさんは絶対知らないだろうなという単語もありました。こちらが示した型を全く無視していました。おそらく、私が他の学生と話している隙に、AIに文章を考えてもらったのでしょう。

Kさんが大学を出て就職するころには、文章はAIが書くのが当然になっているのかもしれません。だから、教科書・ノートを参考にしながら手書きで原稿用紙のマス目を埋めていく文章作成法など、時代遅れだと言えないこともありません。しかし、AIに指示を出すにしても、読み手に訴える力のある文章とはどんなものかということぐらい知っておかないと、結局何も描けないのと同じことになってしまいます。

Kさんの作文は、こなれていますが、よく読むとツッコミどころ満載です。それをことごとくツッコんで、しかも型を守っていないということで、Fにしました。これを返すときに、Kさんからじっくり話を聞きましょう。

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寒かったですね

11月8日(金)

最低気温8度という予報が出ていましたから覚悟して目を覚ましたら、窓がうっすら結露していました。クローゼットからコートを引っ張り出し、ポケットに手を突っ込むと、防虫剤の包み紙だけ出てきました。夏の間に全部飛んでしまったのでしょう。でも、虫に食われた形跡はありませんでした。

今シーズン初登板のコートを着込んで外に出ると、その威力はすさまじく、コートに包まれた肩から下は全く寒さを感じませんでした。しかし、首はひんやりとしていて、マフラーもしてくればよかったかなと、少し後悔しました。これで下着がヒートテックになったら、もう真冬装束です。秋の“気温”はつるべ落としですね。

9時5分前ぐらいに教室に入りましたが、スカスカでした。寒さでベッドから出られない学生が現れ始めたのでしょうか。その一方で、Sさんは半袖Tシャツ姿でした。ジャケットは着て来たみたいですが、授業中はずっとジャケットを脱いだままでした。

そのSさんはニュースの発表の当番でした。よく通る声で、語りかける口調で発表してくれました。クラスの学生たちの評価も最高点に近く、「とてもわかりやすかったです」とか、「話すスピードがちょうどよかったです」とか、コメントもすばらしい系ばかりでした。私は辛口ですから、時々母音が脱落した点を減点しました。

これに対してRさんはスマホをチラ見しながらの発表でした。この発表は、アナウンサーのようにとまではいいませんが、ニュースを「話す」ことを目標としています。ですから、スマホの画面を「読む」のは大減点です。学生もよく見ていて、「覚えたほうがよかったです」などというコメントが目立ちました。声も小さかったですから、厳しい評価が大半でした。

Rさん自身もあまり上手な発表ではなかったことは自覚しているでしょう。今年一番の寒さがより一層身に染みたのではないかと思います。

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