Category Archives: 学生

模範解答と面接

11月19日(水)

いろいろとしなければならないことが多く、上級クラスの中間テストの採点が延び延びになっています。どうにかしなければと午前中奮起しようとしたのですが、このテストの模範解答がありません。せっかく時間に少し余裕ができ、やる気も湧いてきたのですから、ここで挫折するのは癪です。

こういう時は、よくできる学生の答案用紙に頼るに限ります。候補として、Aさん、Zさん、Yさん、Bさんを選びました。最初の問題の答えを比べると、Aさんが全問正解で、他の3名はいくつか間違っていましたから、Aさんの答えを土台に模範解答を作ることにしました。次の問題以降もAさんの答えを参考にしながら解いていくと、すらすら問題が解けました。最終的にAさんは93点で、模範解答選びは大正解でした。

さあ採点に移ろうと思ったところに、午後のレベル1のクラスの学生が面接に来ました。午後クラスは授業後にたくさん面接をするわけにはいきませんから、午前中に持ってきます。いつの間にか、最初の学生Cさんの面接の時間になっていました。Cさんの次はXさんが控えています。Xさんの面接が終わるころには、午後の授業の準備を始めなければなりません。採点はまたも延期になりました。模範解答ができたという大きな進歩がありましたから、多とすることにしましょう。これさえあれば、意外と短時間で採点できそうな気もします。

面接では、2人とも、クラスの雰囲気がいいと言ってくれました。確かに、マイナスのオーラを出している学生はいませんから、教える方も楽しいです。でも、楽しい、楽しいで勉強が上滑りしてはいけません。そこのところは引き締めていかなければなりません。ためになる授業もしなければね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ちゃんと読んでね

11月18日(火)

先週の火曜日の選択授業小論文は中間テストでした。その中間テストを1週間かけて添削し、成績をつけ、学生に返却しました。学生は、当然ながら、私の評価を一番気にしますが、私が本当に気にしてもらいたいのは、添削の部分です。自分の書いた文章がどのように直されたか、しっかり見届けることで、次の小論文の質を上げてほしいとずっと思っています。しかし、学生は見てくれないんですよね。すぐに新しい課題を与えると、同じような間違いを繰り返し、こちらも同じような直しをしなければなりません。

こんなことを続けていては進歩が見られないと思い、今週は各学生の小論文からいただけない文を抜き出し、それについて解説しました。言いたいことはわかるけど表現がおかしい文、何が言いたいかさっぱりわからない文、やたら長くて意味不明になっている文、小論文の結論としては全くパンチのない文、文意はわかるけど表現レベルが初級にとどまっている文、そういった文を取り出して、なぜそれではいけないのか、どう直せばいいのか、あるいは手の施しようがないのか、などを細かく解説しました。

「この文は、大学入試の採点官は絶対理解できません。ここから先、読まないで不合格にしちゃいますよ」なんて調子でボコボコにした文もありました。そう評された学生は、さぞかし耳が痛かったことでしょう。そして、私が入れた赤を参考に、返却した小論文を清書してもらいました。いつもより取り組み方が真剣でしたから、少しは心に響いたのかもしれません。

終業のチャイムが鳴って清書を提出してもらい、教室の片づけをしていると、KさんとSさんが質問に来ました。中間テストはイマイチの成績だった2人ですが、質問の内容は当を得ていました。気が付いてほしいと思ったことについて質問してきました。

まだ清書を読んでいませんが、期待できそうな感じがします。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

油断大敵

11月17日(月)

レベル1のクラスで初めての漢字テストがありました。レベル1は中間テストの少し前から漢字の勉強が始まり、中国人以外の学生たちも少しずつ漢字に慣れてきたころです。

毎学期のことですが、レベル1の漢字テストで悪い点を取るのは中国人の学生です。彼らにとっては易しすぎて勉強する気にもならないのでしょう。しかし、「このほん(     )は、三千円(     )です。」などという問題に、中国の簡体字を書いたり“さんせんえん”と答えたりしてしまうのです。Cさんは90点でしたが、間違えた問題は手紙と時計の読みでした。ちなみに、中国人以外の学生たちは、満点かそれに近い点でした。

「手紙」はCさんだけではなく、中国人の学生の半分ぐらいが「てかみ」と書いていました。こういう学生は、話すときも「てかみ」と発音しているケースが多いです。「さんせんえん」も同様です。Tさんは「中国」に対して「ちゅうごう」と書いていました。Tさんの発音は、確かに「ちゅうごう」に近いです。「てかみ」でも「さんせんえん」でも「ちゅうごう」でも、話し言葉の中なら文脈がありますから、誤解が生じることはまずないでしょう。しかし、聞き手の日本人に違和感を生じさせ、“下手!”という印象を与えてしまうことだってあるでしょう。

漢字テストは、これから期末テストまで、数回予定されています。初回の漢字テストで思わぬ不成績だった中国人学生たちも、きっと巻き返してくれることでしょう。ここできちんと気を引き締めれば、十分に間に合います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

重症患者

11月13日(木)

中間テストの試験監督クラスは、その学期に授業を受け持っていないクラスです。しかし、そのクラスに前の学期までに受け持ったことのある学生がいることはよくあります。というか、必ず何人かいると言ったほうがより正確でしょう。

午前中に入ったクラスは、半分ぐらいが先学期私が受け持った学生でした。9時のチャイムと同時ぐらいに滑り込んできたFさんは、先学期もギリギリセーフかアウトかが多かった学生です。相変わらずだなあと思いました。出席する日は朝早く来るCさんも、そのまんまでした。

「学生証を机の上に、ケータイ・スマホはカバンの中に。テストを提出しても教室の外に出ないでください。教室の中で勉強するのは構いません」など、テストの注意を伝えて、テストを始めました。上級クラスともなれば、“勝負”に出る学生はめったにいません。監督者として教室の中を歩き回りはしますが、カンニングの現行犯逮捕というより、未然防止が主たる目的です。

聴解テストの最中に見回りをしていたら、一番後ろの席のYさんがスマホを見ていました。ちらっと見えた画面からすると、SNSを見ていたようです。聴解問題の音声が流れていますから声を出すわけにいかず、スマホを指さして机の中にしまわせました。他の科目だったらスマホを取り上げるところですが、他の学生への迷惑を考えるとこの辺で妥協せざるを得ませんでした。

Yさんは先学期も授業中はスマホに集中し、依存症ぶりを遺憾なく発揮していました。中間テストの最中でも我慢できずにいじってしまったとなると、病状はさらに悪化したようです。これでは入試でもやりかねません。もちろん、失格・不合格です。その大学に“KCPの受験生は要注意”なんて思われるようになってしまったら、個人レベルの問題ではなくなります。

Yさんはスマホ断ちをしない限り、日本中どころか、世界のどこへ行っても、大学進学など無理です。火曜日のこの稿で取り上げたJさんも重症だと思いましたが、Yさんはそれ以上です。残念ながら、スマホ依存症回復コースは、KCPにはありません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

リストに追加

11月11日(火)

上級の選択授業の中間テストがありました。あさってが読解や聴解など、クラス授業の科目の中間テストですが、選択授業はそれに先立って行われます。

私の担当科目は小論文。まず、先週の授業で書いた小論文を添削したものを返し、簡単に講評。その後、中間テストの課題を配り、書いてもらいました。スマホを見るのは厳禁ですが、上級各レベルで使っている文法や語彙などの資料ファイルは見てもいいことにしました。授業で勉強した表現を実際に使ってみることも勉強のひとつですから。上級の授業で取り上げる表現は硬いものが多く、小論文で事実を叙述したり自分の意見を主張したりするのにはちょうどいいです。上級まで上がってくる学生は、くだけた表現、初級中級で勉強した文法や語彙はそこそこ使えますが、フォーマルな文章語となると、まだまだなところがあります。それを少しでも何とかするのが、この授業の役割のひとつです。

学生たちはスマホをかばんにしまい、課題に取り組み始めました。課題文を印刷した用紙の空白にメモをしながら構成を練る学生、課題文の難解なところを母語に直して理解しようとする学生、いきなり原稿用紙に書き始める学生、しばらく考え込む学生、実に十人十色でした。

終了15分前ぐらいに、Jさんが手を挙げました。行ってみると、書き終わったので提出してもいいかと聞いてきました。読んでみると、1段落目に2つの間違いがありました。それを指摘し、最後まで読み直すようにと指示しました。しかし、机の下に隠した左手にはスマホがしっかり握られており、推敲に関してはあまり期待しませんでした。

Jさんは、1段落目の間違いは直したようですが、私が他を見回っている間に、案の定、スマホを始めました。読み直しよりもスマホを優先したようです。

テスト終了後、真っ先にJさんの小論文を読みました。予想どおり、1段落目は直されていました。しかし、結論の段落は意味不明でした。志望校不合格間違いなしの出来でした。感情的にはF評価ですが、結論の手前までは内容がどうにか理解できるので、お情けのC評価としました。

そして、Jさんをスマホ依存症者リストに加えました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

 

入れませんでしたが…

11月10日(月)

昨晩、テレビをつけると、東北地方で地震が発生し、太平洋沿岸に津波注意報が発表されているという緊急情報が画面の隅っこに出ていました。大船渡、釜石、久慈などで10~20センチの津波が観測されたという観測結果も出てきました。幸いにも、それ以上大きな津波は来襲することなく、海面は沈静化していきました。大勢の方が避難したようですが、被害は出なかったとのことで何よりです。

昨日の津波避難に合わせたわけではありませんが、午前中、避難訓練を行いました。地震が発生し、まず、各教室で机の下に身を隠しました。その後、近隣で地震に伴う火災が発生したため校舎から避難するという想定で、教師・学生が教室から校庭へ下りてきました。今回は人員確認を行っただけでそのまま引き返しました。

私はその人員報告を受けるという立場で、校庭に立っていました。避難してくる様子を見ると、学生たちはわりとまじめにやっていました。スマホを見ながらたらたらと歩いてきたなどという不届き者はいませんでした。頭部を保護するために鞄を頭にのせてきたり、煙を吸わないようにとハンカチで口や鼻を覆ってきたりと、一工夫加えて避難してきたクラスもありました。

午後は、教室内で机の下に入るところまでしました。もっとも、私のクラスのKさんは体が大きすぎて机の下に入れませんでしたが。

日本で暮らすのなら、いつ大地震に遭遇してもおかしくありません。本当に3.11並みの大地震に襲われたら慌てるでしょうが、1度でも体を動かしたことがあるのとないのとでは、その後の行動に大きな違いが出るはずです。それが運命の分かれ目になるかもしれません。机の下に入れなかったKさんも、それ以外の方法で身を守るんだという発想をしてくれれば、訓練を実施した甲斐があるというものです。

でも、そういう日が来ないのが、一番いいんですけどね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

勉強したいこと

11月8日(土)

来週、指定校推薦の面接を控えている学生2名の面接練習をしました。2人とも入試の面接は初めてだと言いますから、面接室の入り方から教えました。この辺は常識的に振る舞えば、失礼に当たることはないでしょう。とはいえ、不安の芽は1つでも摘んでおくに限りますから、きっちり指導しておきます。

Pさんは先学期私のクラスにいた学生です。いくら注意してもタメ口で話す癖が直らない学生でしたが、今学期の担任H先生の厳しいご指導のおかげで、みごとに“です・ます”で話せるようになっていました。意地悪をして、絶対に答えを用意していないだろうと思われる質問をしてみても、崩れることはありませんでした。これは、本物になったのかもしれません。

Qさんは課題の小論文の出来があまりパッとしませんでしたが、面接の受け答えはしっかりしていました。本番でもこれくらいやってくれれば、小論文でマイナスがあったとしても、面接で挽回できるでしょう。

指定校推薦の面接は、落とすための面接ではありません。大学側としては、受け入れた後どのように指導していけばいいか、そのヒント、方向性をつかむという面もかなりあります。ですから、大学で勉強したいことや留学の目的・目標、卒業後の計画などを明確に述べる必要があります。これができないと、大学側は目の前の受験生に何をどう指導していけばいいかわからず、そんな学生には来てもらっても困るという結論にもなりかねません。そんな状況に陥らないように、何を勉強したいかはっきり伝えろと指導しておきました。

来週の後半ぐらいに、直前練習をしておけば安心でしょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

教師も勉強

11月7日(金)

あさってが11月のEJU本番ですから、日本語プラスの生物も最後の模擬試験でした。解き終わったYさんに模範解答を渡すと自己採点して、「先生、5番の問題がわかりません」と、できなかった問題について質問してきました。PPTなどを用いて解説すると、わかってくれました。

「先生、塾ではこの辺の知識は勉強しませんでした。でも、よくわかりました」とYさん。塾の教育内容と日本の高校生物のシラバスには若干違いがあるようです。塾の先生はYさんと同国人の大学院生ですから、自分が勉強していないことは教えなかったのでしょう。

教師と言えども得手不得手はあります。でも、広く浅くのEJU生物ぐらいなら、不得手でもどうにかできると思います。どうにかするのが、教師だと思います。たとえ学校で勉強してこなくても、自分で勉強して教えるのが、仕事に対する責任ある態度だと思います。

数年前大活躍したPCR法などというのは、私が若いころにはなかった技術です。RNAワクチンも新しい技術です。私はそういうものも勉強して、少なくとも受験生に教えられるくらいにはなりました。私のような年寄りでもそうしているのですから、学問の第一線で活躍している大学院生なら、自分の習ってこなかったことを勉強してEJUの問題に対抗できるくらいになるなど、朝飯前のはずです。

Yさんは来年6月のEJUで好成績を挙げて、国立大学に進むという計画を持っています。十分可能性があります。私も後押ししていくつもりです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

名前だけの自己紹介

11月6日(木)

Eさんは、今度の土曜日にJ大学を受けます。午後、その面接練習をしました。本当は先々週あたりにする予定だったのですが、Eさんが病気になったり、こちらがBBQの準備で忙しくなったりで、ずっとできずにいました。初めての入試ですから、何回も何回も練習を繰り返すことが必要です。でも、上述のような事情で、本番直前にようやく初練習となってしまいました。

Eさんは、日本語を話すことに関しては、ほとんど問題ありません。発音・イントネーションもきれいだし、複雑な事柄でも筋道立てて話せるし、聞き取りも完璧に近く、コミュニケーションに支障を来すことはありません。しかし、内容を伴わないことがあります。

「簡単に自己紹介をしてください」と聞くと、「A国から参りましたEと申します。……どうぞよろしくお願いいたします」と答えました。これは、レベル1の学生の、入学直後ぐらいの内容です。「急な質問で、何の準備もしていませんでしたから…」と言い訳していましたが、本番でもこんなやり取りだったら、日本語はできないと判定されてしまうでしょう。

面接は、受験生が自分自身を大学側に売り込める数少ないチャンスです。そのチャンスが生かせないようだと、合格への道のりは遠いと言わざるを得ません。他の質問も、Eさんは誠実に答えましたが、パンチが足りません。J大学は毎年受験生が多いですから、このままではその他大勢にされてしまいます。

こんな図が予測できましたから、もっとずっと早くに練習を始めたかったのです。答え方のポイントは教えましたから、あとはEさんに気張ってもらうほかありません。私は祈るのみです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

凶兆?

11月5日(水)

レベル1のクラスはカタカナディクテーションから始まりました。テニス、サッカーなどという言葉とともに、フォークが出てきました。カタカナの拗音はさんざん練習しましたが、フォとかディとかという、もともと日本語になく、欧米語が大量に流入してから生まれた音に関しては、今まで練習してきませんでした。案の定、学生たちは“フォーク”が何物かはわかったものの、それをどのように表記すればいいかはわかりませんでした。このクラスで一番よくできるPさんですら、“プオク”と書いていました。音的には当たらずとも遠からずだった点はさすがですがね。

正解を板書し、“ファ、フィ、フ、フェ、フォ”でファ行を形成するという話を、レベル1の学生でもわかる日本語でして、ファイト、フィンランドなど、実例を書いてみせました。これからファ行の言葉に嫌というほど出会いますから、できるだけ早いうちに慣れさせておくことが肝心です。

昨日から始まった漢字には、“日”がありました。“日”は曲者で、「九日の日曜日は休日です」という文に出てくる4つの“日”は、“か、にち、び、じつ”と、読み方がすべて違います。中国の学生が、「日本語の漢字は難しいです」とぼやいていました。漢字二日目にして弱音を吐いたりしていては、上級にたどり着くはるか手前で沈没してしまいますよ。

文法は形容詞の活用でした。寒いです、寒くないです、寒かったです、寒くなかったです、というように活用させます。頭では理解できますが、毎学期、口が回らない学生が必ず出てきます。“寒いです…”でつまずいているようだと、“あたたかかったです”なんて、絶対言えません。

日本語は、入り口は取っ付きやすいけど、勉強が進めば進むほど難しくなると言われます。早くもその兆しが見えてきたというところでしょうか。ここで挫折することなく上級まで進級して来てもらいたいものです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ