Category Archives: 学生

逃げ足

2月12日(木)

朝、教室に入ると半分ほどの学生しかいませんでした。チャイムが鳴り出席を取る段になっても、TさんとKさんは現れませんでした。2人とも進学先が決まり、あとは卒業式を待つばかり。もはや、消化試合なのでしょう。殊に今朝はテストがありましたから、敬遠したに違いありません。現に、2人は後半の授業には出席し、授業が終わるや否や脱兎のごとく教室を出て、私がテストを受けてから帰れと止めたにもかかわらず、「明日!」言い残して逃げて行ってしまいました。明日の先生に引き継ぎましたが、明日は「来週!」と言って帰ってしまうに違いありません。この文では、来週火曜日の中間テストもどうなることかわかったもんじゃありません。

これが最上級クラスの学生なら、進学先でやっていけるだけの日本語力があると見て、苦笑いをしてもあげられます。でも、中級クラスの学生となると、合格で受かれている場合じゃないよと言ってやりたくなります。TさんとKさんに関しては、進学後が心配でなりません。

大学は、年が改まる前に留学生入試の合格発表をします。でも、それは、その時点の日本語力で大学の授業に十分ついていけるという意味ではありません。合格発表後も日本語学校で勉強し、順調に日本語力を伸ばしていけば、その大学で実りある学問ができるであろうという推測に基づいた判定に過ぎません。前半部分の仮定を蔑ろにしたら、当然、後半部分の結論も違ってきます。

Tさん、Kさんをはじめ、この理屈が理解できない、あるいはしようとしない学生が多くて困ります。そういう学生の末路を全て追跡したわけではありませんが、一部の大学・専門学校は入学した学生の様子を報告してくれます。「○○さんは、残念ながら帰国しました」という例もよく耳にします。その中には“やっぱりね”と思える学生もいます。そんな学生を送り込んでしまったことに申し訳なさも感じます。

いつの間にか、卒業式まで1か月を切ってしまいました。

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にくづきにほす

2月10日(火)

来週の火曜日は、早くも中間テスト。私が火曜日に担当している上級選択授業「漢検に挑戦」も、中間テストを実施することになっています。漢検の問題をそのまま出したら、みんな討ち死にしかねません。「金原先生のせいでKCPの卒業証書がもらえませんでした」なんて恨まれたくないですから、何か考えなければなりません。学生から恨みを買わず、なおかつその後役に立ちそうなテスト勉強はないかと探しました。

見つけたのが部首です。漢検には部首の問題も出ます。だから先週も練習問題を少ししました。また、進学または就職後に学生たちの周りにいる日本人は、みんな、“うかんむり”とか“さんずい”とか“しんにょう”とか知っているはずです。漢字の説明にだって、「“かくす”は“のぎへん”じゃなくて“こざとへん”だよ」などとやるかもしれません。いまは、スマホに字を示す方が多いでしょうが…。

そういう説明をして、学生に主な部首の表を配り、「にくづきにほす」「さんずいにあお」みたいな説明から漢字を書かせました。慣れていないからでしょうか、みんな苦労していました。私が答えをホワイトボードに書くと、“なんだ、そんな字だったのか”といった顔も見受けられました。選択肢で部首を答えさせるくらいが安全かな。

その後、誤字訂正の問題をしました。“活清化”を訂正するところで正しい字を口で説明させました。最初に出てきたのが「せいかくのせい」。“正”と書いたら、「だんせいのせい」ときました。“声”と書いたらさすがにボケ過ぎですから、“性”と書きました。「りっしんべんにうまれる」ぐらい言ってほしかったなあ。せっかく部首を勉強したんだから。

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寒い教室

2月9日(月)

それにしても、寒かったですねえ。昨日は雪が降って日中もずっと氷点下でした。今朝の最低気温はマイナス3.2度で、東京の最低気温がマイナス3度以下になるのは1984年以来42年ぶりとのことです。42年前は、私は大学院生でした。研究室に通って実験をしていたはずですが、何をどうしたかなど、もちろん全く覚えていません。

これだけ寒いなら、地球温暖化なんかどこかへ行ってしまったと思いたくなりますが、残念ながら、この寒波も地球温暖化が元になっているのだそうです。今、寒くても、5月の連休が終わったくらいには半袖の季節になっているのでしょう。

朝、教室に入ると、学生たちは黙々と教科書を広げて漢字復習テストの勉強をしていました。しかし、教室の暖房は入っていませんでした。ダウンジャケットやコートに身を包んで、シャープペンシルを走らせていました。他のクラスは誰かがスイッチを入れるものなんですがね。

お互い牽制し合っているわけでもなく、和気あいあいと教え合ったりもしています。授業中に険悪な空気が漂うこともありません。だけど、なぜか、毎朝寒い中で勉強しているんです。私が何もしなかったら、12時15分までエアコンなしで頑張りかねません。風邪でもひかれたら大変ですから、いつも、私が暖房をつけます。

暖房がなくても、私はヒートテックの極暖で固めていますから平気ですが、学生もダウンジャケットで耐え抜こうというのでしょうか。次にこのクラスに入るのは木曜日です。実験してみましょうか。でも、木曜日は文法のテストがありますから、やめておきましょうか。とすると、来週の月曜日です。

でも、来週の火曜日は中間テスト。やっぱり、まとめの授業はあったかい教室でした方がよさそうです。

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落ち着かない

2月6日(金)

「先生、9時に発表です」と、一刻たりともじっとしていられない様子のGさんが、せわしなくスマホをのぞき込んでいました。9時のチャイムが鳴り、出席を取り始めた私など眼中にないかのごとく、Gさんはスマホをいじります。寒気の叫びか悲嘆の涙か、どちらが襲い掛かってきても対応できるよう心の準備をしつつ各学生の名前を呼び続けました。呼び終わりましたが、教卓の脇のGさんは相変わらずです。直前の面接練習の受け答えからすれば受かってもおかしくないと、自分自身に言い聞かせている私がいました。

連絡事項を伝え、授業を始めましたが、Gさんの様子に変化は見られません。こちらから聞くわけにもいかず、授業を進めるほかありません。他の学生もGさんのことは気になりますが、ツッコミは入れられません。Gさんを横目で見つつ、でもGさんは無視して、配ったプリントを読ませたりその内容について考えさせたりしました。

こういう形式の授業の際に真っ先に意見を述べるのがGさんですが、今は戦力外です。だから授業を進めにくかったです。どちらの結果でもいいから、早く伝えてくれと思いましたが、Gさんはスマホをいじるばかりで、私の方など見向きもしませんでした。

遂に10時になりました。Gさんが動き始めました。ガッツポーズが出ました。「先生、合格しました」と、Gさんにしては小声で短く一言。教室の中から静かに拍手が湧き起こりました。どうやら、何らかの事情で合格発表が1時間遅れたようです。でも、めでたし、めでたし。

Gさんは本命の大学の試験がすぐそこに迫っています。この合格は景気づけにはなっても、気を緩めるわけにはいきません。来週は、また、面接練習かな…。

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当たり前じゃないんですね

2月5日(木)

昨日に引き続き、中級クラスの授業から。

母国と日本との違いについて語ってもらいました。国籍の異なる3~4人のグループで話してもらったのですが、どのグループもたいそう盛り上がっていました。授業中、指名されても蚊の鳴くような声でしか答えないZさんも、ジェスチャーを交えて自分の体験をメンバーに訴えていました。

そのZさんは、日本のバスは降車ボタンを押さないと停留所に止まらないことを挙げていました。国のバスは、どのバス停にも必ず止まるそうです。バスに乗ると、必ず降車ボタンを確認するのだとか。

Nさんはエスカレーターを歩く人に驚きました。国でそんなことをすると、マナーが悪いと言われるそうです。日本でも立ち止まって乗るのが定着しつつありますが、国際的に見るとまだまだなのでしょう。

Tさんは食券を買わないと料理が食べられないことを取り上げました。国ではQRコードですべて片が付くけれども、日本のインフラができた頃はインターネットがなかったからだろうと考察していました。

Jさんは、日本の街角にはゴミ箱がないことを不便に思っていました。でも、道にごみが捨てられていないことを不思議に思っています。外出したらごみを出さないように心がけていますからね。

電車が交通手段の主力だということを挙げた学生が3人いました。新宿駅で迷子になったり、デートも電車で行くことに驚いたり。電車は日本の象徴なのですね。

宅配便の配達員がすぐに不在連絡票を置いて行ってしまうことを挙げたのはYさんです。宅配便が来るタイミングで家にいないといけないのが不便だと。置き配は怖くてできないのかな。

国にはないスタバやマックが街にあふれていると言ったのはAさん。空港で見てびっくりだったようです。そして、日本は店に入ったとたん「いらっしゃいませ」と店員に声をかけられるのにも驚いていました。

Wさんは給湯器の修理にいろいろな手続きが必要で2週間もかかったことを嘆いていました。その間、ネットカフェのシャワールームで体を洗ったとか。

みんな、それなり以上に苦労しているみたいですね。

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U字曲線

2月4日(水)

“異文化適応のU字曲線”という話が中級の教科書に出ていました。留学を始めたばかりの時期はハイテンションで、生活全般に積極的になっています。その時期が過ぎると、ネガティブな面が見えてきたり辛いことが出てき始めたりで、気持ちが落ち込みます。その後、何かきっかけをつかめばまた気持ちが上向くという、心の変化を表したグラフです。

私のクラスでこれを扱いました。先学期の入学生Lさんに今はどの辺かと聞いてみると、もう落ち込む時期に入っていると笑いながら答えてくれました(ほんとうはそんなに落ち込んでいない?)。来日1年以上になるWさんは、その落ち込みも克服して、今は進学が決まったこともあり、気持ちが高まっているそうです。

留学の最初から最後まで高いモチベーションを保ち続けるのは、至難の業というか不可能でしょう。最上級クラスのSさんは2年近くKCPに在籍していますが、まさにこのU字曲線の連続です。モチベーションが下がると休みがちになり、出席してもスイッチが入っていないような態度になります。モチベーションが高い時は積極的に発言し、何にでも挑戦しようという姿勢が見て取れます。志望校に合格した時はハイな状態でしたが、今は落ち込むモードのようです。卒業式が近づき、大学入学後の姿が明確に描けるようになったら、また活発になるのでしょう。

Cさんは、留学開始直後のハイテンションな時期がなかったか、あっという間に終わってしまったか、新入生のころは生活に疲れたような顔をしていました。欠席も多かったです。しかし、進学するにはこれではいけないと思ったのか、去年の秋ぐらいから顔つきが変わってきました。進学先が決まったのが大きいのか、今は授業中にもよく答えるし、出席率もほぼ100%です。U字曲線ではなく、L字を倒したような変化です。

中級クラスには、4月に進学する学生もいれば、来年のこの学期まで勉強する学生もいます。進学する学生は、進学先でこのU字曲線を描くのでしょう。もう1年KCPで頑張る学生は、落ち込みを乗り越えて来年の今頃は幸せな顔をしているのでしょうか。

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鬼は外と漢字

2月3日(火)

節分です。中級クラスは授業の後半から日枝神社へ豆まきを見に行きました。しかし、火曜日の私は上級クラス担当で、出かける中級クラスの面々を横目に、選択授業で上級の学生に漢検の練習問題を解かせていました。月曜と水曜は中級担当なんですが、今年の節分は、残念ながら、ちょうどその真ん中でした。

さて、その漢検の授業ですが、自ら積極的に漢検の授業を選んだ学生と、消去法で漢検の授業が残って、しかたなくこの授業を取った学生とが如実に分かれます。消去法組は教室の後ろの方に座ります。積極組は前の方に陣取ります。問題用紙を配ると、消去法組は読み書き問題から取り組みます。しかも、スマホで調べながら。積極組は部首とか同音(訓)異字とか誤字訂正とか、スマホが使いにくい問題、頭を使う問題に、まず取り組みます。

スマホで調べながら漢字の読み書きの問題をしても、あまりいい勉強にはなりません。漢字熟語を語彙として覚えていくのであれば話は違ってくるでしょうが、私の目の前でスマホをいじっている学生にはそれだけの気迫が感じられませんでした、

一方、積極組は周りの学生と相談しつつも新しい課題に果敢に向かって行きます。Tさんはかたくなにスマホを使おうとしませんでした。あくまで自力で解くというのは、今時、タイパが悪いとされそうですが、深いところで理解した事柄は、記憶に残るものです。私に質問してくるのは、もちろん積極組です。

日枝神社の豆まきと学校での漢字の授業と、学生にとってどちらが勉強になったでしょうか。消去法組は、鬼は外の方がよかったのかな…。

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後ろ向きで出発

2月2日(月)

月初めの日のクラス担任には、重苦しい作業が待っています。事務局から前月の出席状況不良者のリストが回ってきて、それに載っている自分のクラスの学生の“欠席理由書”を作成しなければなりません。そして、翌日以降、それを本人に書かせるという仕事が課せられます。

まず、学生に書かせる欠席理由書を、所定の書式に則って作ります。これは入管に提出する書類となりますから、いい加減に作るわけにはいきません。その学生が遅刻や欠席をした日を調べ、欠席理由書に記入するという、単調かつ後ろ向きの仕事をしなければなりません。出席状況不良者ですから、欠席の日が1日や2日ではありません。それを出席データから拾い出して欠席理由書に写します。その日の授業の後半から来たとか、遅刻して1限目の授業だけ欠席扱いとか、面倒くさいことこの上ありません。これが何人もとなると、作業が終わることには目を開けているのもつらくなるくらいドライアイがひどくなります。

新しい月になり、“さあ、あるぞ!”という意欲が一気にそがれます。Sさんのように「国立大学受験準備のため」とか、Lさんのように「美術大学受験用の作品制作のため」とかいうのであれば、認めてあげたくもなります。しかし、JさんやRさんのように、寝坊とか腹痛とかというのを並べられると、“朝、決められた時間に起きるのぐらい、留学生活の基本だろう!”“お腹なんか痛くなるな!”と怒鳴りつけたくなります。

だから、重苦しく後ろ向きなのです。学生のみなさん、私に、“明日の授業の準備”という、前向きの仕事をさせてください。

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1月は行く

1月31日(土)

「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」というわけで、あっという間に1月が行ってしまおうとしています。新学期の準備と、その新学期を何とか軌道に乗せようとしている間に終わってしまった感じがします。最上級クラスは先学期から持ち上がりですから学生の様子はつかんでいますが、レベル5のクラスは今学期初顔合わせの学生が大半で、出席状況のよくない学生は、まだ顔と名前が一致しません。“見かけない顔だから、よく休むAさんだろう”なんていう推理を働かせながら授業をしているうちに、1か月が過ぎてしまいました。

4月に進学を予定している学生には、一刻も早く行き先を決めてもらおうと思っています。Kさん、Oさん、Pさんなどが確定組に入りました。CさんやHさんは、土日で関西遠征です。今頃はホテルで一息ついてるのでしょうか、明日に備えて最終チェックをしているのでしょうか。2人とも、出発の直前に面接のアドバイスを求めに来ましたが、それが役立ってくれるとありがたいのですけど、どうでしょう。

学生たちの方を見てばかりいるわけにはいきません。KCPは文部科学省の認定日本語教育機関になったので、4月から教育の中身を変えます。2月になったら、その準備も本格的に始めなければなりません。そちらも授業と並行して進めるとなると、これから忙しくなります。でも、2月に逃げられる前に形が作れるように、気合を入れて取り組みます。3月が去ったら、新KCPの第1期生をお迎えするのですから。

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退場

1月30日(金)

12月のJLPTの結果が発表されました。今回から合格者にはCEFRのレベルが表示されるようになった点が今までと大きく違う点でしょう。1点でも合格点より低かったら、このレベルは表示されません。学生たちにはあまり浸透していないようですが、今後のことを考えると、知らしめていかなければなりません。

合否に関しては、ざっと見たところ、大きな番狂わせはなかったようです。実力のある学生が、受かるべくして順当に受かったという感じがします。ただ、受かったけれども、もう少し高い点を取ってもいいんじゃないかなという学生は何名かいました。毎度のことですが、背伸びしてN1を受けた学生は、仲良く討ち死にでした。

今回は、合否欄に「退場」と記された学生が数名いました。これは、全科目の試験が終わる前にスマホを手にした学生ではないかと思います。「退場」の数名は私が知らない学生ばかりで、そういうことをやりかねないのかどうなのかはわかりません。まずは事情聴取をして、本当にスマホが原因かどうか確かめ、もしそうなら、学校の中でしかるべき対策を考えなければなりません。

これから先は、学校として教育の成果を挙げていくことが求められます。その1つがJLPTの合格です。合格する力があっても「退場」させられてしまったら、何の意味もありません。スマホを我慢する訓練が必要ですが、授業中もスマホを握りしめている学生の姿を見ると、頭を抱えてしまいたくなります。デジタルデトックスを本気で考えなければなりません。

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