そうまでして

1月26日(水)

大学入学共通テストでカンニングが行われたようです。問題を写真に撮って家庭教師紹介サイトを通じて知り合った東大生に送ったと言います。その東大生は採用試験みたいなものだと思って、その問題を解いて送り返しました。何も知らないうちにカンニングの手伝いをさせられたわけです。これが事実だとしたら、その東大生にとってはとんだ災難というほかありません。

これが明るみに出たのは、当日の試験監督官による摘発ではなく、当の東大生の申し出からです。試験監督官は気が付かなかったのでしょうか。写真撮影、メール送信、そして返信の受信となれば、まさかコナンみたいな装備はしていないでしょうから、怪しげなしぐさが数回あったはずです。それをすべて見逃してこのような事態の発生を許したとなると、当然ほかにも同様の不正行為があったのではないかと疑わしくなります。

問題を外部に流出させた受験生がどんな人かはわかりません。偽計業務妨害罪で捕まったとしても、そのプロフィールが公になることはないでしょう。でも、どんな気持ちでこのような行為に及んだかは知りたいです。イチかバチかの勝負だったのでしょうか。ゲーム感覚のお遊びだったのでしょうか。追い詰められて精神に異常をきたしていたのでしょうか。

この稿でも何回か取り上げていますが、EJUでも、試験のたびに、カンニングの噂がささやかれます。やらなきゃ損と思っている受験生もいるとか。“いい大学”に入りたい気持ちはわかりますが、そんな無理をして入った大学で自分のためになる勉強ができるのでしょうか。日本人受験生にしても留学生にしても、先の長い人生なのですから、若いからこそ、ロングスパンで物事を考えてほしいなあ。

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聞き違い?

1月25日(火)

日曜日の天気予報で、東京の気温が1年でいちばん低くなるのは1月25日だと言っていたので、気象庁のデータで調べてみました。すると、日平均気温も最低気温も最高気温も、1月21・22日が底でした。20日が大寒でしたから、実に暦通りです。25日は、わずかに0.1度ですが、平均と最高はどん底より高くなっていました。すると、私は何をどう聞き間違えたのでしょうか。それはさておき、もうすでに春に向けて歩み始めているんだと思うと、なんだか気分も明るくなります。

今朝、うちを出る時に、きれいな下弦の月が上空にかかっていました。旧正月は2月1日、ちょうど1週間後です。KCPは今週から全面オンラインに移行しましたから、旧暦で新年を祝う国の学生たちが、教師の目が届かないのをいいことに羽目を外すのではないかと心配しています。クラスターでも発生しようものなら、春もへったくれもありません。これから受験する学生はそんなへまはしないでしょうが、合格して左うちわの学生からは目が離せません。学生たちは孤食をあまり好みませんから、かなり引き締めていく必要があります。学生も教職員も一丸となって事に当たらなければなりません。

春というと明るいイメージがあり、物事が好転しそうな気がしますが、実質が伴っていなければどうにもなりません。おととしは初の緊急事態宣言が出たのが4月7日でした。去年も連休の直前に緊急事態宣言でした。3年連続同じパターンに陥りたくはないものです。

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受験以前に

1月24日(月)

昨年12月のJLPTの結果がオンラインで発表になりました。例年より受験者数は少なかったですが、合格率は特別良くも悪くもなく、いつもどおりでした。昨年7月にN1に1点差で落ちたGさん、2点足りなかったSさん、Oさんは順当に合格。全く歯が立たなかったCさんやTさんも余裕の合格でした。かなり努力したのでしょうね。中には返り討ちにあった学生もいましたが…。

JLPTは19点未満の科目があると、他がたとえ満点でも合格できません。つまり、極端に弱い科目を作ってはいけません。そういう目で見て心配なのが、漢字が足を引っ張ったと思われるJさん、Eさん、Kさん、読解に手も足も出なかったみたいなDさん、Kさんなどです。N1に合格したけど読解が危なかったLさんは、いい気にならなければいいのですが…。

今回は、当日欠席の学生が少なかったことも特徴と言っていいでしょう。受けるべき学生がしかるべき準備をして受けた結果で、記念受験的な学生が少なかったのです。しかし、敵前逃亡したのは、ああやっぱりと思えるような学生ばかりでした。

涙を誘われたのは、出願したのに来日できずに受験できなかった学生たちです。意欲的に勉強していた学生たちには気を落とすことなく努力を続けてもらいたいです。とはいえ、いかに精神的にタフでも、明るい日の光が差すことを信じられなくなったら、挫折してしまってもおかしくはありません。

もはや水際作戦など用をなしていません。今年のJLPTにはこんな受験生が出ないことを願うばかりです。

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更新

1月21日(金)

日本語教師養成講座の講義資料を再構成しています。最初に資料を作ってから軽く10年以上経っていますし、その間にあれこれ継ぎ足してきましたから、かなり不細工になっています。目にしたり耳にしたりした日本語の用法をもとに調べたことを付け加えたり、専門書を読んで得た情報や知識から新しい文法のとらえ方を編み出してみたりということをしてきた結果、真に重要な事柄が埋もれがちになっています。そういう点を修正し、伝えるべきことがきちんと伝わるように教材を作り直しているのです。

文法をはじめ、いろいろな科目を担当していますから、科目間で内容が重複しているところや、有機的に連携した方がいいところも見えてきました。最近買い込んだ専門書も研究して、どこかに組み込みたいとも思っています。これらの事柄を整理整頓して、すっきりまとめたいところです。

日々、日本人は日本語を使っていますが、助詞の「に」の用法を10以上に細分して考えるなどということはしていません。そんな必要もありません。しかし、日本語教師は、日本語とは言語体系の違う言葉を操ってきた人たちに、日本語という新たなシステムを導入するのですから、日本人の気が付かない日本語の裏面まで知りつくしておかなければなりません。そのお手伝いをするのが、養成講座です。

半年ごとぐらいにこの講義資料を使って講義をしてきたのですが、作り直すつもりで講義資料を読み返してみると、今まで気づかなかった発見もあります。私もパワーアップしなきゃね。

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後がない

1月20日(木)

1月期の受験講座は、6月のEJUを目指す学生たち向けの授業が始まります。化学は周期表、物理は等速直線運動と、基礎に戻ります。その一方で、先学期まで受験講座を受けていた学生たちの受験シーズンでもあり、面接練習などを依頼されることもよくあります。

受験講座から戻ると、Lさんが待っていました。親がどうしても国立大学と言うので、P大学、D大学、E大学に出願します。同じような学部学科に出願したならともかく、EJUの持ち点を基準に、興味の向かうままに学科を選んだので、生物やら機械やら、ベクトルが全くそろっていません。そういった学科で何が勉強できるかよくわからないから教えてくれという相談でした。

出願前ならそもそも論に立ち返って出願先の再考を促すところですが、今週末に面接という大学もあるくらいですから、そんな悠長なことは言っていられません。各大学のサイトを見せながら、見ておくべきポイントを教えていきました。こんなことは夏ぐらいにやっておくべきなのですが、その頃のLさんは私たちを全然頼りにしていませんでした。ぎりぎりになってから来られても、可能な指導は限られています。

Lさんの次はMさん。来週早々S大学の面接があるので、集中的に面接練習をしたいとのことでした。落ちたら帰国という背水の陣を敷いているのですが、Mさんの出願した学科はS大学の中でも屈指の競争率の学科です。それに加え、Sさんは11月のEJUで何かやらかしたらしく、実力よりもはるかに低い成績に終わっています。正直に言って、勝ち目の薄い勝負です。そういうことは承知の上で、やれるだけのことはやり、悔いが残らないようにしておこうというのがSさんの考えです。決意が固いようなので、引き受けることにしました。

Sさんと同じく、全滅だったら帰国すると言っていたWさんがT大学に合格したという知らせが聞こえてきました。Wさんも国立をいくつか受けると言っていましたから、面接練習が回ってくるかもしれません。なんだか忙しくなってきました。

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体育会的数学

1月19日(水)

今まで、理科系の数学の受験講座は、90分の授業を週に2日行っていました。それを、今学期は、180分で1日にしてみました。日本語のクラス授業同様、前半と後半の間に15分の休憩をはさみます。この方式の方が、練習問題をする時間が取れるのではないかと思って始めてみたというわけです。

やってみると、確かにそういう感じがしました。週当たりの授業時間は変わらないのに、なんだか余裕があるように感じられるのです。初回は一応予定したところまで到達しましたから、練習問題をやった分だけ進度が遅くなったというわけではありません。

その点はよかったのですが、練習問題をさせてみると、計算力が足りないという問題が浮かび上がってきました。前々から薄々感じていたことですが、KCPの学生は計算問題をおろそかにするきらいがあります。やれと言ってもそんなのちょろいとばかりに無視します。そのくせ、EJU本番で何かやらかして、思ったように点数を伸ばせないのです。EJUの数学は計算力が命なのに、それを直視しようとしません。

練習問題、計算問題をすることによって、数学的な勘が養われます。反射神経が鋭くなると言ってもいいでしょう。式を見ただけでこんな感じに因数分解にできるんじゃないかとかグラフの概形が見えてきたりとか、図形問題で補助線が浮かび上がってきたりとか、そういう域にまで達してもらいたいものです。

6月までの受験講座はこの計算力を重視して、体育会的に体で覚える数学にしていきたいです。

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%の争い

1月18日(火)

今学期は、大部分の学生が3月で卒業していきます。進路が決まっている学生はそのまま4月から進学先に通えばいいのですが、現時点では未定の学生も少なくありません。その中の一部の学生は、入管が打ち出した特例により、4月以降もKCPで勉強します。入国が大幅に遅れたために計画通りの日本語学習ができなかった留学生への救済措置です。これにより、日本語学校の在籍期間が2年を超えても勉強が続けられるようになりました。

しかし、この救済措置は誰でも受けられるわけではありません。出席率が低かったら、進学先が決まらなかったのは、日本語力が足りなかったからではなく、日本語習得に対する熱心さが足りなかったからでしょとされてしまいます。日本語学校の世界は出席率がすべてを取り仕切っていますから、当然のことです。

午後、Qさんが職員室で先生方と話していたのはその件です。これから受験する大学もありますが、本人的にはもう1年勉強して“いい大学”に進もうと思っているようです。しかし、お手軽に休んだツケが回ってきました。救済してもらえないおそれもある数字になっていました。

国費留学生87名の入国が認められるそうです。日本に入国できないまま卒業修了の時期が迫ってきた留学生たちが対象です。私費留学生、それも日本語学校への留学生の入国が認められるのはいつのことでしょう。そういう人たちのことを考えたら、Qさんは今日本にいるのですから、とても恵まれています。その好条件をみすみす逃しちゃうのかなあ。そういう危機的状況だということがわかっているのでしょうか。

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EJU実施要項

1月17日(月)

EJUの実施要項が届きました。今年は6月19日と11月13日です。これは予定通りと言えましょう。その他の日程も受験料なども特段の変更はありません。いつもと同じかと思ったら、同封の書面には「2022年度より、団体申し込みをした受験生の成績を、受験者本人だけでなく、団体担当者も見られるようにいたします」と書かれていました。

JLPTではだいぶ前からこれができました。学校で団体申し込みすると、出願した学生の成績がコンピューター上で見られますから、学校としてのデータもまとめやすいですし、個々の学生の指導にも持って行きやすいです。しかし、EJUはそうなっておらず、進学指導の資料として使おうにも、学生からいちいち成績を聞き出さなければなりません。以前は成績通知書が学校に送られてきましたから、それを渡す時に学生に成績を申告させることができました。しかし、最近は成績通知書が廃止になったので、学生の成績を知るのが難しくなりました。

それなのに、EJUの成績は、日本語学校の学生管理の一環として、入管への報告事項の1つとなっています。これではどうしようもないですから、学校側で学生のEJUの成績が把握できるようにしてほしいと要望し続けてきましたが、やっとそれが実現しました。

そういったうれしいニュースの数行下に、「悪質なカンニングに対し、本機構では引き続き厳正に対応してまいります」と書いてありました。こういうことを書かなければならないほど、EJUでカンニングが横行しているという噂は毎回ささやかれています。昨日までの共通テストでは、スマホを股に挟んでいた受験生が摘発されたそうです。しかし、11月のEJUでは、問題を塾に送って解いてもらってそれをマークしたなどの不正行為がスルー状態だったと学生が言っていました。

このままの半鎖国状態が続けば、EJUの受験生は昨年よりさらに減りそうです。その少ない受験生に公正な試験を実施し、努力した受験生が報われる試験にしてもらいたいです。

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耳を鍛える

1月15日(土)

今学期の受験講座が始まりました。土曜日のメニューは、毎学期、EJUの日本語と、JLPTのN1とN2です。私はEJUの日本語を担当しました。「さあ、過去問やるよ」でもよかったのですが、受講する学生の意識を高めようと、先学期末に発表された昨年11月のEJUの結果について触れました。

やはり、留学生が入国できない影響は大きく、昨年11月のEJUの受験者数は、その2年前までの半分程度に落ち込みました。平均点があまり変わっていないのは、問題の質が安定しているからでしょうか、得点等化のおかげでしょうか。

EJUが始まったころは300点というのが一つの目標でしたが、今は300点では「悪くはないね」というくらいです。今回の結果に当てはめると、上から26%、偏差値で58ぐらいです。学生たちが考えている大学のレベルには距離がある感じです。偏差値65というと343点ですから、かなりがっつり訓練しなければ手が届きません。

そのぐらいの点を取るには、苦手分野を作ってはいけません。KCPの学生は、押し並べて聴解・聴読解が弱いようなので、今学期の受験講座では聴解力の強化に力を入れます。今までの分析によると、教授の講義を聞くタイプでつまずきやすいという結果が得られていますから、そこを重点的にやっていきます。大学に進学しようという人が教授の講義の内容をつかみかねていては、話になりません。

学生の手ごたえはどうだったのでしょう。大あくびをしていたCさんは、楽勝宣言かな、それとも集中力が途切れちゃったのかな…。

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チャイムがない日々

1月14日(金)

おととし、オンライン授業が始まって以来、校舎内のチャイムを止めています。学生がいなかったらチャイムは無意味だし、対面授業の時でも密を避けるためにレベルごとに授業時間をずらしていますから、全校が統一的に動くことがありません。それゆえ、学生が来ていてもチャイムは鳴らしません。

午前中、用事があって学校の中をうろちょろしていたら、外階段の踊り場でおしゃべりしている学生たちに会いました。時計を見ると、中級レベルの休憩時間に差し掛かっていました。私が通りかかると、わざわざおしゃべりを中断して「先生、こんにちは」とあいさつしてくれました。私も「こんにちは」とあいさつを返すと、その学生たちは安心したかのようにおしゃべりを再開しました。

校舎内に入ると、廊下のベンチで黙食している学生やエレベーターホールで立ち話している学生がちらほら程度。密回避にはなっているようでした。私が前を通ると、黙食の学生はぴょこんと頭を下げました。食べながらスマホに熱中している学生は、もちろんそのまま。立ち話の学生は「こんにちは」と言ってくれました。KCPの学生は義理堅いですね。担当の先生が教室に入ると、それにくっついて学生たちも教室に収まっていきました。

授業を担当している時は、チャイムが鳴らないのにすっかり慣れてしまいました。授業をしていない傍観者の立場だと、いつの間にか学生が湧きだしたり、潮が引くように消えていったり、その波が何回か押し寄せたりというのが、まだ不思議な感じがします。

新規感染者数が順調に力強く増えていますね。チャイムに合わせて全校一斉にという日が、ぐんぐん遠ざかっていくようです。

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