違反者

10月16日(木)

前半の授業を終え、10時半に職員室に戻ると、事務のLさんからメールが届いていました。

「9:10ごろ、学校の筋向いのホテルの敷地で、午前クラスのKさんがタバコを吸っていました。授業後、校長先生からも厳しく指導してください」

学校付近のホテルや駐車場など、他人の敷地に無断で入ること自体、不法侵入です。また、新宿区は条例で路上喫煙が禁じられています。他人の敷地に不法侵入して喫煙するなど、論外です。このようなことはしてはいけないと、新入生オリエンテーション、毎学期のオリエンテーションで繰り返し伝えています。Kさんは「ホテルの敷地でタバコを吸ってはいけないとは知らなかった」と言ったそうですが、そんなの、言い訳にもなっていません。

さらに、調べてみると、Kさんは2006年生まれですから、堂々の未成年です。未成年の喫煙を禁じた法律にも違反しています。つまり、2つの法律違反を犯していることになります。これは有無を言わさず退学処分でもいいのですが、いちおう事情聴取することにしました。

授業が終わり、教室の後片付けをして職員室に戻ると、Kさんはすでに来ていました。

「どうして呼ばれたと思いますか」「ホテルでタバコを吸いましたから」「はい、そうですね。じゃ、学生証を見せてください」(Kさん、鞄から学生証を取り出す)(学生証の生年月日の欄を指さして)「Kさん、あなたは2006年生まれで、20歳になっていませんね」「はい」「日本ではタバコは20歳からです。知っていますよね」「…」「ホテルでタバコを吸うのもいけませんよね」「はい…。でも、知りませんでした」「そんなことはありません。毎学期オリエンテーションで言っています。今学期も言いました」「…」「それから、9:10ごろタバコを吸っていましたね。どうして教室へ行きませんでしたか」「ほかの学生の授業の邪魔をしてはいけないと思いました(遅刻したのに教室に入ろうとしない学生の言い訳の定番)」「関係ありません。遅刻した学生は、1秒でも早く教室に入ることが一番大事です。勉強よりもタバコの方が大事だったんですね、あなたは」「いいえ、違います」…。

このあと、なぜ未成年なのにタバコを吸うのかと聞きましたが、Kさんの日本語力ではさっぱり要領を得ませんでした。私の仕事が小一時間遅れただけでした。

そして、最後に始末書を書かせました。これは、来年の3月、Kさんが卒業するまでクラスのファイルに入れておきます。とはいうものの、その文章のひどいこと。スマホを使わずに書き上げた点はほめてあげますが、Kさんと同じ学期に入学した学生なら、もっとずっとはるかに明確に誠意と反省の気持ちが読み取れる始末書を提出してくれたはずです。

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みすみすミスをする

10月15日(水)

朝の授業前に、Hさんが、最終チェックをしてほしいと、B大学に出す出願書類を持ってきました。今週末が出願締切です。水曜日は午後授業ですから、Hさんが授業を受けている時間に、その出願書類に目を通しました。

見てみると、問題なしと言えたのが写真票と国の高校からの書類ぐらいで、あとはこのままB大学に送ったら確実に門前払いされるだろうと思われるほどの、不備だらけの書類でした。すぐにHさんの教室の前で待ち構え、休み時間が始まるチャイムが鳴るや教室に踏み込み、Hさんを捕まえました。そして、記入漏れ、明らかな誤記、見当違いの記載などを指摘しました。

午後授業が始まる直前、Hさんが書き直した書類を持ってきました。うーん、まだありましたねえ。というか、せっかく記入漏れを記入したのに、記入した事柄が間違っていたなんていうのもありました。初級の学生ならともかく、Hさんは上級の学生ですから、ここまでミスを重ねるとは思いませんでした。

確かにHさんはうっかりミスをしでかすタイプの学生です。しかし、こんなにまでミスが多いとなると、他の学生たちは果たしてまっとうな出願書類を提出しているのだろうかと心配になってきました。数年前、日本語学校からの書類が不要なのをいいことに、KCPの教師に誰一人相談もなくこっそり出願した学生が、書類不備で書類が突き返されてきて、こちらに泣きついてきたことがありました。見てみると、事前に見せてくれたら、その場ですぐに指摘できるような初歩的なミスを犯していました。

外国人が記入する書類ですからそれなりの配慮がなされているのでしょうが、それでも受験生にとっては難しいんでしょうね。こういうのこそ、AIに面倒を見てもらいたいです。

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目指せ35点確保

10月14日(火)

11月のEJUに向けての日本語プラスが始まりました。私の初日は、EJUの記述でした。記述クラスに出る学生の大半はレベル3か4で、記述が初めてです。ですから、EJUの記述とは何ぞやというところから授業を始めます。

EJUの記述は50点満点で、得点は5点刻みです(低得点域は10点刻み)。毎回、一番多いのは35点の得点者で、平均点は35点を少し下回る程度です。ですから、石にかじりついてでも35点は取ってもらわねばなりません。また、“いい大学”に進みたかったら、最低40点は必要でしょう。

KCPの受験生は、毎回平均点が35点を少し上回ります。今年6月のEJUでは、得点分布の山が2つありました。1つは全体と同じ35点で、もう1つは45点でした。45点の山は上級の学生ばかりかというと、必ずしもそうではありません。読解、聴解・聴読解は惨憺たる点数なのに、なぜか記述では45点を取っているレベル4ぐらいの学生が数名いました。そういう学生が、クラス授業でどの程度の文章を書いているかはわかりません。コツをつかんでいるのか、テーマがツボにはまったのか、何かあったのでしょう。

そういうような話をし、大枠の構成を説明し、本番と同じく制限時間30分で書いてもらいました。みんな一生懸命に課題に取り組んでいましたが、採点してみるとまだまだですね。20点ぐらいの人が多いです。EJU本番まで1か月足らずですが、どこまで追い上げられるでしょうか。来週からも厳しい戦いが続きます。

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つながり

10月10日(金)

昨日のこの稿で取り上げたYさんが、朝、職員室へ来ました。どのように勉強していけば進学できるか見当がつかず、とても不安だと言います。また、今のクラスには自分と同じ方向に進む学生が見当たらないので、誰か紹介してほしいとも。

国は違いますが、Bさんなら近い方向に進み、しかも、すでに進学先が決まっています。入学した時から日本語の面でもずっと努力を重ねてきましたから、きっと実体験に基づいた役に立つアドバイスをしてくれるでしょう。今学期は私の担任クラスにいますから、授業の時に頼んでみることにしました。Yさんには、午前クラスの授業が終わる12:15過ぎに2回のラウンジにいるように言って、授業に臨みました。

Bさんにそういう話をすると、快諾してくれました。たまたま近くにいた、Yさんと同じ国のGさんが、通訳を引き受けてくれました。Gさんは入学式のお手伝いでYさんと顔を合わせていましたから、一肌脱いでくれる気になったのでしょう。

午前の授業後、2人を連れてラウンジに下りると、Yさんが待っていました。BさんにYさんを紹介して、あとは2人で話してもらうことにしました。私は仕事もあったので、1階へ。しばらく経ってからこっそりラウンジをのぞくと、まだ話をしている様子でした。

勉強に関するアドバイスは、本当はこういうふうに、教師ではなく学生にしてもらえると。後輩の学生にとってより有意義なもののなります。KCPでは、クラブ活動などを通しても、先輩後輩のつながりを築く環境を作っています。YさんとBさんがどんな話をしたかわかりませんが、BさんがYさんの心のよりどころになってくれればと願っています。

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2人目

10月9日(木)

Sさんは今学期も朝6時半少し前に学校へ来て、ラウンジで勉強しています。ラッシュを避けて登校し、授業が始まるまでその日の予習をするという勉強スタイルを貫いています。4月期からずっと続けていて、1日も休んでいません。こっそりラウンジを除いても、朝ご飯を食べながら勉強していることはあっても、爆睡などということは、今まで1日たりともありません。立派なものです。

そのSさんが「おはようございます」と挨拶して2階へ上がっていってしばらくしたころ(と言っても7時前ですが)、もう1人、職員室に顔を出しました。昨日授業をしたレベル1のクラスのYさんです。Sさんは上級の学生ですから、9時から授業が始まります。しかし、Yさんの授業は午後1時半からです。始まるまで6時間あまりあります。住所を調べると、学校まで歩いて来られる所ではありません。Sさんと同じように、ラッシュは外そうという考えなのかもしれません。昨日出した宿題について質問し、ラウンジへ上がりました。SさんとYさんは同国人ですから、ラウンジへ行ってSさんにYさんを紹介しました。

午前の授業を終えて職員室に戻ると、Yさんが来ました。私にメモを見せました。そこには志望校とEJUの必要科目と足切り点、独自試験の科目が書かれていました。レベル1の学生がネットで調べて一つ一つ書き写して、こういう大学に入るには、今からどんな勉強を始めればいいかと聞いてきました。半日かけて資料を作り、質問の言葉を練り上げ、私に聞いたのでしょう。翻訳アプリの日本語を私の目の前に突き出す学生が多い中、実に見上げた姿勢です。

今からどんな勉強をすればいいかと聞かれましたが、レベル1だったらまず日本語です。それ以外の科目は、国の高校で勉強した教科書で復習するのが、初級の学生にとってはベストの勉強法です。

Yさんはやる気満々です。期待しましょう。

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慣れない教室

10月8日(水)

今学期は月曜日と水曜日がレベル1です。その間の、レベル1に挟まれた火曜日が、最上級クラスです。さて、どちらが私にとってのオアシスになるでしょうか。

というわけで、始業日のレベル1のクラスに入りました。出席を取る前に「こんにちは!」と声をかけても、パラパラと「こんにちは」と応じる声があがるだけでした。「こんにちは」が挨拶の言葉だと知らないはずはないでしょうから、お互い牽制し合っていたのかもしれません。

そのせいかどうかわかりませんが、このクラスは聞いた言葉をそのままリピートするのが苦手なようです。レベル1の初日ですから、文の複雑さなんて知れたものです。「キムさん、お国は?」なんていう程度です。それでも、みんなの口からスムーズに言葉が出るようになるには、数回の繰り返しが必要でした。

それから、クラス全体を盛り上げようと、「隣じゃない人と練習して」と指示を出しても動きは鈍かったです。身振りで「あっちの人と」訴えても腰が重く、こちらの闘志は空回り気味でした。初対面の人ばかりで話しかけにくいのでしょうか。それを打ち壊すためにあれこれ考えて学生に動いてもらおうと思ってるんですが…。

お互いがお互いを日本語で知り合うまで、もうほんの少し時間と経験が必要なようです。コミュ力がありそうな学生が友達を探しに教室内を動き回り始めたところで、授業時間が切れてしまいました。明日の先生に頑張ってもらうことにします。会話の中間テストの頃には、日本語が口からあふれ出てくることを期待しましょう。

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入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。このように多くの方々が世界中からこのKCPに集まってきてくださったことを非常にうれしく思います。

みなさんのような留学生は、昔々からいました。自分の国を出て、より進んだ知識や技術を得る、自分の将来に資する学問をする、興味や関心のある物事を実地に見聞する、自分の慣れ親しんだ文化とは異なる文化を体験する、そういった目標を掲げて新しい世界に挑んだ人々のおかげで、現在の社会が築かれたと言っても過言ではありません。日本では、今から1400年ほど前、7世紀初頭に遣隋使の一員として大陸に渡った僧たちが、留学生の嚆矢と言えます。

それから時代がだいぶ下り、江戸時代末期のお話です。1854年、アメリカのペリー艦隊・黒船が、ここ新宿から50キロほどのところの浦賀沖に来ました。前年に続く来訪で、日本中が上を下への大騒ぎでした。その大騒ぎの最中、1艘の小舟が夜陰に紛れて黒船に近づきました。乗っていたのは吉田松陰でした。松陰は黒船に乗せてもらってアメリカへ行き、自分の目でアメリカを見て、そこにある当時の日本が及びもつかないほど高度な技術や社会の仕組みを学び取ろう、そしてそれをもとに日本の国を改革しよう、発展させようと考えました。まさに留学生になろうとしたのです。

しかし、日本と和親条約を結ぼうとしていたペリーは、日本政府との間に余計なトラブルを引き起こしたくなかったので、松陰の希望を拒絶しました。希望がかなわず黒船から引き返さざるを得なくなった時の松陰の無念さは、察するに余りあります。さらに、松陰は、留学ができなかったばかりでなく、海外渡航を企て黒船に接触したのは鎖国を国是としていた幕府の方針に反するということで禁固刑となりました。そして、5年後には別の事件にも連座したため、処刑されてしまいました。この時、わずかに29歳でした。残念ながら、留学生としてみなさんの大先輩になることはできませんでした。

松陰は禁固刑に処せられている間、松下村塾という自分の思想を伝える塾を開き、塾生に大きな影響を与えました。松陰の松下村塾は、江戸幕府を倒し、明治の新しい日本を築く際に大いに活躍した人材を輩出しています。松陰は素晴らしい仕事をしたと言えます。しかし、もし、黒船に乗ってアメリカ留学できていたら、後輩たちに何を伝えたでしょうか。松陰の薫陶を受けた人たちはどんな明治日本を築いたでしょうか。松陰の人生を振り返ると、留学の意義深さに思いが至ります。

グローバル化、国際交流が進んだ21世紀に生きるみなさんは、吉田松陰のように命がけで留学に来ているわけではないでしょう。しかし、新知識、新技術に触れることを渇望し、新社会にあこがれ、そこでの得難い体験経験を夢見ていた松陰の心は理解してもらいたいです。松陰の果たせなかった夢、つかめなかったチャンスがみなさんの目の前にあります。それを自分のものとすることで初めて、みなさんの留学は価値ある物となるのです。そういう気持ちで、明日から始まる授業に臨んでください。

私たち教職員一同は、みなさんの留学の成功を全力で応援します。安心して頼ってください。

本日は、ご入学本当におめでとうございました。

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「すずし」とは言いませんね

10月6日(月)

みなさんは、い形容詞の語幹を感嘆詞的に使いますか。例えば、今年の夏なんか毎日でしたが、冷房の効いた屋内から外に出た瞬間、「あつ(暑)!」と、実際に口には出さなくても、心の中でそう叫んだりはしませんでしたか。学生たちもよく言っていましたから、現代日本語としてかなり浸透していると思われます。

さて、このい形容詞の語幹ですが、2拍のものが一番よく使われます。「あつ」「さむ」「くら」「おも」「こわ」「わる」「はや」「おそ」「やば」など、きりがありません。3拍となると、「ちいさ」よりは「ちさ」、「おおき」は「でか」、「おいし」は「うま」でしょう。長音を切り詰めて2拍にしたり、2拍の類義語を持ってきたりする例があります。それ以外となると、「みじか」「つめた」「うるさ」「きたな」は耳にしますが、「あかる」「かなし」「うれし」は聞きませんねえ。4拍以上になると、絶望的ですね。「うつくし」「あたらし」「おもしろ」「ほそなが」「あたたか」「のぞまし」「むしあつ」「けたたまし」「むさくるし」なんて、聞いたことがありますか。「むずかし」は「むず」になりますね。

とはいうものの、「けちくさ」「めんどくさ」「えげつな」「あほくさ」「びんぼくさ」「きしょくわる」など、ネガティブな意味の形容詞は、4拍以上でも“い”省略形が用いられます。そもそも、「あつ」「さむ」なども、不快感や意外、驚きを表す時に用いられ、だからこそ感嘆詞的なのです。「あま(甘)」と言ったら、単に甘いのではなく、甘すぎるとか、予想をはるかに上回る甘さだとか、甘やかしすぎているとか、そんな感情の発露だと思います。

この“い”省略形は、もともとは関西言葉でしょう。私は、半世紀以上も前に、京都に住んでいたいとこ経由で知りました。関東地方でも普通に使われるようになったのは、今世紀に入ってからではないでしょうか。もしかすると、スマホやSNSの普及と歩調を合わせているのかもしれません。ここから先は、私のような素人ではなく、どなたか専門家の研究にお任せすることにします。

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最後の仕事

10月4日(土)

クラス担任の最後の仕事は、成績通知票にコメントを書いて、それを各学生に送ることです。成績表そのものは、中間テストや期末テスト、日々の授業内に行う平常テストの平均点などがそのまま入りますというか、コンピューターが勝手に記入してくれますから、頭を使う必要はありません。しかし、コメントはそれぞれの学生に向けて自分の言葉で書き入れなければなりませんから、頭をフル回転させなければなりません。

非常にいい学生とどうしようもなく悪い学生は、ネタがいくらでも思い浮かびますからスラスラ書けます。悪い学生はネタを絞るのに苦労するくらいです。また、進学が決まった学生や受験の前にあれこれお世話した学生も、おめでとうとかよく頑張ったとか、いくらでも書きようがあります。まあ、この稿に登場するような学生には、何か書いてあげられるものです。

しかし、授業中に目立たず、成績も可もなく不可もなくといった学生は、書くのに苦労します。「次の学期も頑張ってください」では、いかにもおざなりで心がこもっていません。JLPTに合格していないかなと調べてみたり、コトバデーの時はどうだっただろうかと記憶をたどったり、クラスの日報の中にヒントはないかと当たってみたり、果ては教科書を開いてとっかかりを探したり、思いつく限りの手を使います。たいてい何か見つかるものですが、地味一筋の学生には、本当に頭を抱えてしまいます。

今学期は、幸いにもそういう学生は少なく、午前中に書き上げることができました。でも、同時に、多くの学生がこの10月期に進路決定を控えていることを改めて感じ、どう指導していくべきか、新学期の課題がいきなり突き付けられました。

新学期は、来週水曜日からです。

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死なせないで

10月3日(金)

最近の研究は、文系理系を問わず、いかなる分野においても、定量性が求められます。“AはBより多い”ではなく、“AはBより15%多い”といったまとめ方がなされます。そういった研究結果を論文にするとなると、必然的に図表が多くなります。その論文から知見を得るには、図表を読み解かねばなりません。つまり、学問をするにはグラフを読み取る力が必要不可欠なのです。

そういうわけで、選択授業小論文の期末テストは、グラフから読み取ったことについて自分の意見をまとめるという課題を出しました。それを採点したのですが、頭が痛くなり、吐き気を催しました。

テストの際、ただグラフを配っただけではなく、読み取りの注意点の解説までしました。私は丁寧に説明したつもりでしたが、学生たちは勘違い大間違いを派手にやらかしました。“10万人当たり3.1件”を3.1%と思い込んだり、「CはDに含まれますから、この2つの数字を足してはいけません」と繰り返し注意したのに、足してしまったりしてくれました。さらに、想像をたくましくし過ぎて、勝手に何百万人も死んだと決めつけて議論を進めた学生も何人かいました。その一方で、容易に想像がつく社会的背景に触れた学生はごくわずかでした。これが入試問題だったら、合格者は2名ぐらいだったでしょう。

小論文クラスの学生は全員上級ですから、私の説明が理解できないはずはありません。グラフが読み取れないがゆえに、あらぬ方向に走ってしまったのでしょう。裏読み深読みを求めたわけではありません。表面に見えている事柄をそのまま書いてくれればよかったのですが、それができなかったんですねえ。

グラフの読み取りは理系人間の専売特許ではありません。ここでどうにかしておかないと、学生たちは進学してから苦労することになります。

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