Category Archives: 社会

朝の小旅行

5月28日(水)

朝、銀座駅で丸ノ内線に乗り替えようとしたら、丸ノ内線が止まっているというアナウンスが入りました。丸ノ内線のホームには、電車から降ろされたお客さんが立っていました。運転再開見込は1時間ごとのことでしたから、振り替え輸送を利用して、JRで新宿まで行くことにしました。

銀座駅から有楽町駅までは知れたものですから歩いて行き、山手線で東京駅へ。中央線に乗り換えるだけなら神田駅の方がはるかに楽ですが、中央線の高い線路から都心を見下ろしたいという気持ちが勝り、わざわざ東京駅の中央線ホームまで上り詰めました。ほんのわずかな距離ですが、山手線とは視点の高さが違い、気持ちがよかったです。

私は通勤に地下鉄を使っていますから、中央線に乗るなんてめったにありません。お堀端を走り抜けるのも久しぶりだし、今年の1月に入院した慶應病院を見上げて喜んでみたり、新宿駅に着く直前に見えるビルの看板が東急ハンズからHANDSに変わっていてへーぇと思ったりしているうちに新宿駅着。ほとんど観光客気分でした。

これも、私の通勤時間がラッシュのはるか前だからこそ味わえる非日常なのであり、8時頃だったら物見遊山どころかメトロに怒り爆発だったでしょう。

新宿駅からは、朝の新宿通りを歩いて学校へ。いつもに比べて30分の遅刻でした。ついてほどなく、いつも6:25ごろに現れるKさんが来ました。Kさんが来ることを考えると、銀座駅で1時間運転再開を待ち続けるわけにはいかなかったのです。「丸ノ内線、止まっちゃってて大変だったでしょう」と声をかけると、怪訝な顔をしていました。Kさんは、副都心線の新宿三丁目駅から歩いて来るそうです。

丸ノ内線は、学生や教職員の登校出勤時間帯には、平常運転に戻っていました。丸ノ内線が遅れているなどという話は、どこからも聞こえてきませんでした。

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診てもらいました、見せてもらいました

5月23日(金)

ここ10日ほど、咳と鼻が出続け、収まる気配も見えません。最近のどが渇くのですが、水分が鼻水として出て行ってしまうからだろうかと疑いたくなるくらいです。咳をし過ぎたせいでしょうか、きのうあたりから右胸の筋肉が痛いです。変な態勢でせき込んだのに気づいていなかったんだと思います。そんなわけで、午後、近くの耳鼻咽喉科へ見てもらいに行きました。

予約制ではないところでしたが、15分待ちぐらいで順番が回ってきました。症状を聞き、「じゃ、口を開けて。左の方を向いてください」と、医者は口の中が映し出されるモニターを見るように指示を出します。「のどは赤くなっていませんね」と言いましたが、確かにその通り。赤くただれているのではないかと思っていましたが、拍子抜けでした。続いて鼻の中にカメラを突っ込むと、鼻水が絡まった鼻毛の束が大写しにされました。こちらも取り立てた異状はありませんでした。こういった患者自身が自分の身体を直接確認できるような医療器具が広く普及しているようです。たまに町の医者に行くと、勉強になるものです。結局、単なる風邪という診断でした。

処方箋をもらって薬局へ。医者の話によると、最近は風邪が流行っているので、病院に一番近い薬局では咳止めの薬がなくなってしまったとか。学校の近くで探すことにしました。

しばらく前のこの稿に書きましたが、病院からの処方箋調剤の場合、その薬局にない薬が1種類でもあったら、他のすべての薬も出してもらえません。ですから、事前に処方箋調剤薬局の位置を調べ、1軒目に入りました。すると、白衣の薬剤師さんが「1日3回、毎食後、2錠ずつ飲んでください」とスマホに向かって話していました。その向かい側には背の高い外国人のお客さん(患者さん)。用法を翻訳アプリに吹き込んでいたのです。スマホの画面を確かめたお客さん、満足気に「ありがとう」と言って店を出て行きました。

薬が出てくるまで時間がかかりましたから少し心配になりましたが、処方箋の薬は無事全種類そろいました。驚いたのはその値段です。1日当たり90円。ジェネリックにしてもらったからということもあるでしょうが、申し訳ないほどの安さです。この1週間分で、何とか治さなくちゃ。

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新重文

5月17日(土)

太陽の塔が国の重要文化財に指定されるそうですね。言わずと知れた大阪万博のシンボルです。私より年若の重文は、おそらく代々木競技場に次いで2件目でしょう。

代々木競技場は、確かに私より若いですが、できたのは私が物心つく前です。丹下健三氏渾身のデザインであるあの大屋根を見て大泣きしていたと、母や伯母からよく言われたものです。

太陽の塔は、はっきりと記憶があります。1970年の大阪万博は見に行きましたから。父のお盆休みに合わせて行ったので、私たちが入場した日は、入場者数の最高記録を更新した日となりました。その後さらに更新されましたから、万博期間中最高とはなりませんでしたが、ベスト(モースト?)10には入っていると思います。ろいうわけで、とんでもなく混んでいる日に行ったので、太陽の塔は見ただけで入れませんでした。でも、太陽の塔の圧倒的存在感は、幼心に強烈に刷り込まれました。

その後、だいぶたってから、というか、わりと最近、万博記念公園内にある国立民族学博物館を見学しに行ったとき、太陽の塔の根元を通りました。ちょうど私が万博を見に行ったぐらいの年頃の子どもが、学校の遠足か何かで来ていました。太陽の塔に近づくことすらできなかったあの大混雑を思い出しました。

太陽の塔の重文と同時に、琵琶湖疏水も国宝に指定されます。こちらも、一番年若かどうかはわかりませんが、国宝としては新しい建造物でしょう。こちらも、浜大津の取水口から南禅寺のちょっと先まで、疏水に沿って歩いたことがあります。

私が生きているうちに、私より年若の国宝が生まれるでしょうか…。

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名言

5月16日(金)

最上級クラスは、毎週金曜日に「社会を知る」という授業があります。新聞記事などを読んだり、ニュース映像などを見たりして、“社会”を考え、議論するという授業です。

今週は、13日に亡くなったウルグアイのムヒカ元大統領を取り上げました。2016年に来日した際にはその発言が話題となり、子ども向けの本まで出版されました。そんなこともあり、日本では知っている人も結構いるように思うのですが、学生たちは全然知りませんでした。

ムヒカさんは数々の名言を残しています。その名言集を配り、どの言葉に一番共感を覚えるかというということで議論してもらいました。

学生たちに人気があったのは、

「貧しい人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

「人生で最も重要なのは勝つことではなく、歩み続けることだ」

「日本の子どもたちよ、急いで大人にならなくてもいい。子どもであることを楽しみなさい」

でした。

「日本の子どもたちよ…」を選んだ学生が、ずっと子どものままでいたいようなことを言っていたのが少し気になりました。

また、「人生で最も重要なのは勝つことではなく、歩み続けることだ」は、勝つことを追求する人がいたからこそ、人類は発展してきたと言えないこともありませんから、みんながみんな、この言葉に従ってしまうと、ちょっと心配です。

私は、「物を買うというのは、稼いだ金ではなく、人生の時間で買っているのだ」を選びました。今だって、遊ぶ金欲しさに働いていますからね。

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1日限りのこいのぼり

5月1日(木)

今朝、校庭の上空にこいのぼりが泳ぎ始めました。4匹家族のささやかなものですが、こいのぼりを見上げると、心も上向きになります。気が付いた学生は、写真に撮っていました。残念ながら、明日は運動会で、しかも雨の予報ですから、また、その後4連休ということもあり、こいのぼりは夕方にはしまわれてしまいました。地元のみなさんもKCPの毎年こいのぼりを楽しみにしてくださっているとのことですが、今年はほんの数時間の遊泳でしたから、果たして楽しんでいただけたでしょうか。

上述のように、明日は運動会です。教職員はその準備にかかりっきりです。私も、授業で学生と一緒にラジオ体操の練習をしました。ラジオ体操は、小学校などでがっちり仕込まれ、大半の日本人ができるという意味では、立派な日本文化の1つです。私も体が覚えていて、例の音楽が流れ始めると、自然に腕を回したり体をひねったりしていました。教卓とホワイトボードの間の狭いすき間でしましたから、体を存分に動かせたわけではありませんが、深呼吸の頃にはうっすらと汗をかいていました。

明日は雨という予報が若干気がかりです。“学校へ行くより時間がかかるんなら、雨も降ってるし、明日から連休だし、休んじゃおうかな”などと考える不届き者が出かねません。最近の学生は、出席率が下がるのを気にしないきらいがあります。頭が痛いです。

KCPのこいのぼりは1日足らずでしたが、運動会会場までの道すらが、曇り空ながらも風にそよぐこいのぼりが見られるのではないかと期待しています。

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早口言葉?

4月18日(金)

金曜日の最上級クラスには、「社会を知る」という授業があります。現代の社会問題に関して、動画を見たり新聞記事を読んだりなどして理解を深め、議論もするという内容です。たとえ理科系の学部や大学院に進学するにしても、現代社会に対して無知ではいけません。文科系なら面接や口頭試問、あるいは小論文において問われることだって考えられます。

授業の最初に、米の値段は高いかと聞いたら、全員が高いと感じているようでした。値段を聞くと4000円から5000円くらいで、現時点においては相場です。毎日ではないにせよ、自炊しているとのことですから、そのぐらいの出費はこたえるのでしょう。

その後、動画を見せ、それだけではわからない点を補足説明し、備蓄米放出までの背景や米不足に陥った原因などについて知ってもらいました。減反政策は、不思議な政策に映ったようでした。農家の高齢化も、学生にとっては気づきにくい点でした。

こういうように「社会を知る」ことがこの授業の主たる目標ですが、日本語の授業の一環ですから、普通の日本人と同じレベルの日本語理解力を着けていくこともまた、授業の太い柱です。学生たちに見せた動画の中に、2人の出演者のうちの1人がやたらと早口なのがありました。学生の様子を観察すると、途中からスマホをいじり始める学生が何人かいました。見終わった後で聞くと、やはり、早すぎてわからなかったと言っていました。

このクラスの学生が束になってもわからないとなると、少なからぬ日本人もわからないのではないでしょうか。それでは何かを訴えたことにはならないと思います。その方面では結構なのある方のようでしたが、本当に理解してもらえているのでしょうか。心配になりました。

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始まったの?

4月12日(土)

大坂・関西万博の開会式が行われたようです。ネットのニュースの見出ししか見ていませんから、“ようです”などという頼りない文末表現を用いています。見出ししか見ていないのは、あまり興味がないからです。

毎年、春の連休は関西方面へ出かけます。今年も行きますが、今のところ、大阪には足を踏み入れる予定はありません。去年のまだ暑いころ、5月の連休の宿を予約しようとしたら、定宿にしているホテルの値段があまりに上がっていたので、大阪泊はあきらめました。行きたいところ(万博ではありません)があったのですが、それはまたの機会にすることにしました。大阪以外にも関西は見所がたくさんありますから、そちらを優先します。

1970年の万博は、自分で主体的にというよりは父に連れられて、夏休みに千里まで見に行きました。入場者数の記録を更新した日にぶち当たってしまい、月の石など人気の展示物を見ることはできませんでしたが、子供心に世界にはいろいろな人がいて、いろいろな文物があるんだなあと感心しました。

今回の万博も、詳しく調べれば目玉の展示もあるのでしょうが、何が何でも見たいと思えるような展示物のうわさは聞こえてきません。私だけではなく、世間一般にそんな人が多いのではないでしょうか。70年は国中が一丸となって盛り上がっていた印象がありますが、今回はずいぶん冷めています。

4年前の東京オリンピックもそうでしたね。無観客という大きすぎるハンデを背負っての開催でしたが、そうまでして開催する意義があったのかなと今でも思っています。何かのイベントで国中が盛り上がったのは、ぎりぎり98年の長野オリンピックと02年のワールドカップまでだったような気がします。

盛り上がらなくなったのは、国中が老いたからでしょうか。豊かではなくなったからでしょうか。個人主義が進展したからでしょうか。全国民が熱狂するイベントをもう一度見たいとも思いますが、国も半端じゃない財政赤字だし、民間にも活力がなさそうだし、もう無理かなっていう気がします。

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背中

4月8日(火)

お昼少し前、先日この稿で取り上げたYさんが帰国の挨拶に来ました。明日、帰国するそうです。国で就職先が見つかったとのことですから、こちらもホッと一息というところです。ずっとYさんを見てきたK先生は、学生を引き連れて、4月期の始業日恒例ともいえる御苑の花見に出ていました。Yさんに初級の学生への通訳などでさんざん助けてもらったM先生も、午前中は授業でした。30分ばかり待ってもらい、2人の先生が職員室に戻ってくる頃合にまた来てもらいました。

K先生とは、長い時間話していました。いろいろと積もる話があったのでしょう。努力は、日本での進学という当初の夢をかなえるという形では実を結びませんでしたが、Yさんは、表情を見る限り、別の形で実を結ばせたのかもしれません。K先生にそんな話をしているようにも見えました。そして、午後の授業が始まる少し前に、笑顔で手を振りながらKCPを後にしました。

吹っ切れたと思っちゃっていいのかなという気はしましたが、Yさん、あなたにとってKCPで勉強した月日は、決して黒歴史じゃないですよね。お土産の紙袋を差し出したその手で何かをつかみ、そしてそれを握りしめていますよね。今年もあなたのようなすばらしい学生にめぐりあい、立派に育て上げたいと思っています。

Yさんの姿を目にするのも、おそらくこれが最後でしょう。でも、明るい色合いのスプリングコートをまとって新たな道に第一歩を踏み出そうとしているYさんの背中を、そっと押してあげたくなりました。

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フェンスの向こうに

4月5日(土)

お昼に外に出て学校の近くを歩いていたら、花園公園がけっこうなにぎわいでした。園内では、地元の方かこの近くにお勤めの方たちが、ベンチに腰掛けて桜を見上げながら、談笑したりお弁当を食べたりコーヒーを飲んだりしていました。風が少し冷たく感じましたが、そんなに長い時間花見に興じていることはないでしょうから、花に動きが出てちょうどよかったかもしれません。

さて、この花園公園ですが、年度末に工事をして、公園の周りをぐるりとフェンスで囲みました。併設されている小学校と保育園に変な人が侵入しないようにということなのでしょう。夜間は扉が閉められて、だれも出入りできなくしています。1本1本の針金は細くても、それがフェンスの形となると、やはりいくらか物々しさが醸し出されます。桜の美しさを打ち消すほどではありませんが、フェンスの内側に入っても、ちょっと気になるかな。

花園公園の桜はソメイヨシノでしょうが、このまま温暖化が進むと、そう遠くない将来、ソメイヨシノが咲かなくなるかもしれません。ソメイヨシノが咲くには、真冬の厳しい寒さが必要です。寒さがないと、冬が来たと認識できず、冬に備える態勢がずっと続き、気温が高くなっても花芽が育ちません。現に、沖縄の桜はソメイヨシノではなく、ヒカンザクラ(緋寒桜)という別品種です。

「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」と詠んだ在原業平の時代は、まだソメイヨシノは生まれていませんでした。でも、超暖冬でソメイヨシノが咲かない春を迎えたとしたら、誰の心ものどかではないでしょう。フェンス越しの桜ぐらい、どうってことありませんよ。

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早い!

3月14日(金)

数年前の卒業生のSさんが来ました。SさんはR大学に入り、そのまま大学院に進学しました。「就職が決まりました」と報告してくれたのですが、実はまだ修士の1年生で、入社は来年の4月です。なのに、もう内定をもらったのだそうです。何という早さでしょう。…と言って驚いているのは、私ぐらいなのでしょうかねえ。

この時期に内定をもらったということは、大学院入学早々から就職活動を始めて、去年の秋ぐらいから面接を受けまくっていたのでしょう。そう思って聞いてみたら、実際にその通りでした。面接はオンラインがほとんどで、東京の外の会社も受けました。Sさんが就職するのは、その東京から離れたところの会社です。勤めることになる土地へは、まだ1度も行ったことがないそうです。

私が就職した時は、修士2年になってから動き始め、内定したのは6月か7月ごろだったでしょうか。それでも早く決まったと友人に自慢したものです。1年生の頃は、企業研究なんか、まともにしていなかったんじゃないかな。今、こんなことをしていたら、就職戦線に出遅れてしまい、不戦敗になってしまうかもしれません。

Sさんにはこれから修論が待っています。修論が通らなかったら、内定は取り消しでしょう。日本人なら「バカなやつだ」と笑われるぐらいで終わりでしょうが、外国人であるSさんはビザの問題が絡んできますから、話は複雑です。むしろ、これからが大学院生活の正念場です。本当に笑えるのは、来年の今頃でしょう。

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