覚える

2月24日(木)

入試問題を解くのは知識か知恵かと聞かれたら、どうお答えになりますか。

知識の範囲をどこまでにするかにもよりますが、知識がゼロではないでしょう。最近はマークシートの問題でも工夫が加えられてきて、知識の有無だけを問うような問題は少なくなりました。知恵を意識しすぎると、今年の大学入学共通テストのように、全受験生が団栗の背比べになってしまって、テストの用をなさなくなることもあります。

知恵といったって、その基礎をなす部分は、知識と無縁ではないでしょう。知恵は知識を組み合わせたところに生ずるものでもあります。そこには創造力や想像力も関与します。単に知識を堆積させただけでは、知恵は湧き上がってきません。知識と知識を結ぶネットワークを張り巡らすことが肝要です。

Dさんは真面目な学生です。6月のEJUに向けての勉強をしています。私もDさんの力になってあげたいと思っています。しかし、Dさんから来る質問に、「これは覚えなければなりませんか」という意味のものがあることに引っ掛かっています。暗記かそれに類する覚え方では、知識の有無を競う問題にしか答えられません。そうじゃなくて、知識を組み合わせるとかひとひねりしてから使うとか、応用力を問う出題にも対応できるようになってこそ、高得点に結びつくのです。それは同時に、進学してからの勉強にもつながります。

Dさんにそういうところまで見えているのか、気がかりです。知識は布石みたいなところもあり、入試には不要でも、将来、何かの拍子に、それがあることですべてがつながり、理解や興味が深まることだってあるのです。

昨日のうちに届いていたDさんからのメールを読みながら、そんなことを考えました。

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20220222

2月22日(火)

22年2月22日は、スーパー猫の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんだからだと言っていますが、200年後にはにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんとなりますから、ハイパー猫の日とでもなるのでしょうか。

この日に合わせて、静岡県の川根小山(かわねこやま)駅は臨時に川猫山駅に改称し、特別な記念切符を発売したとか。このほかにも、全国いたるところで“記念行事”が行われたようです。こういうダジャレができるのも、それを喜んで受け入れてしまうのも、日本文化であり、日本人です。

西暦年月日の数字合わせで思い出すのは、1999年11月19日です。ご覧のように、年月日のすべての数字が奇数です。この次にこのような並びになるのは、3111年1月1日で、1000年以上も先のことです。当時通っていた会話教室で、もちろん英語でこれを熱弁したのですが、先生にはこの意義が伝わりませんでした。貴重な1日だったんですけどね。

お昼から帰ってくると、書類を取りにでも来たのでしょうか、ちょうど学校から出てきたPさんとLさんとすれ違いました。「こんにちは」とあいさつしてくれました。Lさんは進学先が決まり、Pさんは3月で帰国の予定です。先月あたりまでずいぶん悩んでいたPさんでしたが、もう吹っ切れたみたいです。明るい顔つきをしていました。

3月10日の卒業式までは2週間ちょっと。その日は水戸の日であり、佐渡の日であり、砂糖の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんも含めて、2人ともこういう言葉遊びが理解できるまでになったかな。ここでニヤッとして上級なんですよ。

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久しぶりの大口

2月21日(月)

朝、食事をとっていたら、前歯に違和感が。そして、舌に硬いものが当たりました。慌てて吐き出すと、なんと、差し歯がころりと出てきたではありませんか。鏡を見てみると、下の前歯が1本抜けています。何ともマヌケな顔になってしまいました。でも、食べ物がかめないわけではありませんから、食事はそのまま続けました。

幸いにも、令和4年2月21日現在、マスクが必須アイテムですから、しゃべっても笑ってもマヌケ顔をさらす心配はありません。しかし、放っておくわけにもいかず、学校の近くの歯医者で応急処置をしてもらうことにしました。抜けた差し歯はしっかり確保してありますから、それを持って行けば、多少は治療期間も短くなるでしょう。

その差し歯を入れたのは、私がKCPにお世話になる前からかかっていた歯医者です。しかし、そこは遠いので、ネットで探してみると、学校の近くにはけっこうたくさんは医者がありました。評判のよさそうなところを選んで予約しました。

予約の時間に行くと、問診票の記入が最初の仕事なのはどこの医者でも同じですが、この歯医者は麻酔についての質問がありました。ここの先生は麻酔の専門医らしく、普通の歯医者が治療で使う局部麻酔よりも本格的な麻酔を使う治療も選べるようでした。そういう治療もいいかなと思って、○を付けておきました。

患者が結構多く、待合室の椅子が全部ふさがるくらいいました。しかし、診察台も3台で、3人の先生が診ていますから、回転も速いです。程なく私の順番が来ました。以前は3か月おきに歯科定期検診を受けていたのですが、おととしから、人が多いところで大口を開けて仰向けに寝っ転がるのはあまりにも不用心だと思い、中断しています。久しぶりにその体勢を取るのは少し勇気が要りましたが、治療が始まってしまえばどうということはありませんでした。

20分ほどの治療で歯は元通りに戻り、治療費は1000円余りでした。数か月、数万円を覚悟していましたから、あっけないほどの時間と費用でした。しばらく、これで様子を見ます。

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遅きに…

2月18日(金)

やっと開国に一歩踏み出しました。水際対策を少し緩めるという発表がありました。しかし、1日5000人で、しかも航空券を取った順だという話も聞こえてきます。どうせまっ先にビジネスで、留学生よりも技能実習生のほうが早いんじゃないかな。その留学生も、大学・大学院が優先でしょう。日本語学校の学生が入国してくるのは、まだまだ先のようです。文科相が、留学生の入国手続きを簡素化すると言ってくれているのが、せめてもの慰めです。

今回の入国規制緩和も、岸田さんオリジナルの判断というよりは、各方面からつつかれて重い腰を上げたという感じがします。海外からの不満も、かなり強く背中を押す結果となったのではないでしょうか。何かしかるべき戦略があって開国に進んだのではなく、雰囲気に流されてちょっかいを出してみたというのが実情のような気がします。だから、この逆コースにも容易に進みうるのです。

留学生は、今すぐ日本にとって役に立つ存在ではありません。将来に向けての先行投資です。種をまいておくという発想で、留学生をかわいがってもらいたいです。留学生自身同様、周囲の日本人学生への影響も考慮の余地があります。交換留学生として海外へ向かう学生はもちろんのこと、ネットを通してしか外国人を知らない日本人学生にどれほどの刺激を与えてくれるでしょう。

それにしても、ここまで待てずにKCPを去っていったKさん、Rさん、Pさんたちはこのニュースを聞いているのでしょうか。もう一度こちらを振り向いてはくれないでしょうね。

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リストを見ながら

2月17日(木)

学生は、大学や大学院、専門学校などに合格すると、担任の先生に報告します。こちらも、入学させた学生がどうなったか役所に報告することになっていますから、そういうルールにしています。中には、隠密行動で受験してこっそり受かっている学生もいますが、最後まで秘密を隠し通した学生はごくわずかなはずです。

学生が学校へ来ていると、自分のクラスではない学生からも、「先生、○○大学に合格しました」などと、直接報告を受けることがあります。廊下や階段、ロビー、ラウンジ、そんなところでばったり会ったついでに、そんなふうに声を掛けられることも少なくありません。

ところが今は全面オンラインですから、生身の学生に会うということがめったにありません。そのため、毎年恒例のうれしいお知らせに接することもほとんどありません。職員室で先生方の会話に聞き耳を立てて、学生の進学状況を把握しているというありさまです。

入管の特例で、2020年入学生に関しては在留期間の延長が認められています。この特例を利用するか否かの調査結果での一覧表に、各学生の合否状況が載っています。今年はこれを頼りにするほかないようです。

それを見ていると、今年は面接で落とされるのではと心配していた学生がわりと受かっているような気がします。頭脳明晰で話すのだけが苦手なWさんがあちこち受かっているのはともかくとして、コミュニケーション能力がゼロに近いCさんまで名の通ったところに合格しています。進学先で授業にもついていけないし、友だちもできないしなどということになったら、学生にとっても大学にとっても不幸です。

入学時に大言壮語していたZさんは、竜頭蛇尾の状態です。特例を利用しないみたいですが、あと1か月半ほどで大逆転があるのでしょうか。Tさんがもう1年と言っているのは、モラトリアムかな。その気になればCさん以上に合格を重ねてもおかしくないのに。

明日は早くも中間テスト。受験シーズンの終わりが近づいてきています。

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天国で論戦中?

2月16日(水)

瀬戸内寂聴さんの「わたしの源氏物語」を読み終えました。文庫本で500ページ余りを、3日半ほどで読み切りました。寂聴さんの現代語訳源氏物語は文庫本で500ページとはいかないようですから、私にとってはこのあたりが分相応でしょう。

「わたしの源氏物語」は、時期的に源氏物語の現代語訳に取り組んでいる頃に書かれたのではないでしょうか。源氏物語の登場人物や紫式部の筆致について、寂聴さん流の解釈が述べられています。登場人物の中にも、紫式部が熱を入れて丁寧に描いた人から、冷たくあしらわれた人まで、けっこう濃淡があるそうです。ここは描き足りないとか、ここは彼女の実体験が生きているとか、このストーリーは当時の読者を引き付けただろうとか、寂聴さん自身がかなり読み込んでいたことがよくわかる書きっぷりです。

私は、高校時代、古文漢文はまるっきり手も足も出ませんでしたから、源氏物語は教科書に載っていたごくごく短い部分を読んだに過ぎません。古文の時間に行われた解釈では内容が全然わからず、源氏物語がなぜ不朽の名作なのか、世界に誇るべき文学なのか、さっぱりわかりませんでした。でも、「わたしの源氏物語」を読んだら、光源氏も藤壺も紫上も六条御息所も桐壺帝も、みんな生き生きとしてきました。

昨年、寂聴さんが亡くなった直後に、どなたか忘れましたが、「寂聴さんは今ごろ天国で紫式部と語り合っているでしょう」という意味のコメントをしていました。それに接した時、「ああ、死ぬのもいいなあ」と思ってしまいました。まあ、私が天国に上れても、私が会いたいと思っている有名人には見向きもされないでしょうけどね。でも、寂聴さんなら紫式部は会ってくれるだろうし、もうすでに、「紫式部さん、ここは感動したけど、ここはこういう筋もあるんじゃない?」などと楽しい議論を戦わせているかもしれません。

私も、現代語訳ぐらいは読んでみようかな。

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奨学金がもらえない

2月15日(火)

まだ試験を受けている学生がいる一方で、すでに合格を決めた学生もいます。そんな学生たちを対象に、JASSOが奨学金受給者の募集をしています。何名かが応募しましたが、応募者全員が奨学金をもらえるわけではありません。まず、EJUで決められた科目を受けているか、そして、出席率もそうですが、KCPでの成績も基準を上回っていなければなりません。

調べてみると、Yさんだけが基準に届きませんでした。Yさんは先々学期受け持ちました。悪い学生ではないのですが、でも、それ以上でもありません。授業に集中していないのか、指名するととんちんかんな答えをすることが時たまありました。どうやら、自分はできると思っていたようです。学校の勉強なんか、試験の直前にまとめてやれば合格点ぐらいは取れる――と思っていた節も感じられました。

ところが、実際はそうではなく、平常テストでは不合格点も取ったし、作文も日本語教師だからどうにか読み取れるという程度だったし、結局はお情け進級組の1人でした。それでも志望校に合格したのは立派ですが、合格した後、ねじが緩みまくっているという報告を、先学期の担当の先生から聞いています。

JASSOの成績基準はそんなに厳しくはありませんが、それにすら引っ掛からなかったという点に心配が募ります。今学期はオンライン授業のため全然顔を見ていませんが、ちゃんと勉強しているのでしょうか。緩みっぱなしだと、「進学はしたけれど…」ということにもなりかねません。

もう間もなく、奨学金は受けられないという通知がYさんの元に届くでしょう。これを単にお金の問題ではなく、進学後にどれだけ実のある勉強ができるかという問題に置き換えて考えてもらいたいです。

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2月14日(月)

去年の秋から、NHKBSの刑事コロンボの再放送を見ています。放送時間が土曜日の日中なので家にいないことが多く、録画しておくのですが。他の番組の録画もありますから、ただいま1か月遅れぐらいになっています。

刑事コロンボがNHKの総合テレビで放映されたのは、かれこれ50年近く前のことでしょうか。確か、私が中学生から高校生の頃だと思います。土曜日の夜に、家族みんなで集まってみたものです。半世紀近くたっていますから、ストーリーなんか覚えていません。今も、コロンボがどうやって犯人を追い詰めるかドキドキしながら画面に引き付けられています。

あら探しをしているわけではありませんが、伏線が回収しきれていないんじゃないかと思うことが何回かありました。まあ、これは私の考えすぎかもしれませんが。何より目立つのは、ガソリンをまきながら走っているのではないかと思えるほどの、重厚なアメ車たちです。コロンボも犯人も、地球温暖化に大いに貢献しています。

それから、コロンボをはじめ、みんなよく煙草や葉巻を吸いますね、そこいらじゅうに灰を散らしながら。周りの人達も、迷惑がっている様子がありません。さらに不思議なのは、コロンボが留守宅に平気で入り込んでいることです。この当時のアメリカは、戸締りという概念がなかったのでしょうか。

何より時代を感じるのは、電話です。固定電話しかないことは当然として、“自宅やオフィスを離れる=連絡が取れない”という公式に則ってストーリーが展開されます。SNSやネットで何かするということがありませんから、実にオープンな感じで話が進みます。

これらは、もちろん、刑事コロンボの価値を損なうものではありません。でも、私は楽しめますが、今の中学生はどう見るのでしょう。中学生の私がチャップリンを見るような感じなのでしょうか。

今の中学生が50年後に今のドラマの再放送を見たら、「そういえばガキの頃、スマホなんてもんがあったねえ」などと懐かしむのでしょうか。いや、そのころにはテレビなど、過去の遺物になっているかもしれませんね。

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3回目は率先垂範で

2月10日(木)

昨晩帰宅したら、郵便受けに封書が届いていました。最近はDMすら来ないのにと思いながら見てみると、ワクチン接種のお知らせでした。昨年の7月と8月、どちらもとても暑い日に、2回のワクチン接種を済ませました。3回目の接種券がようやく来たというわけです。

中の案内を読むと、1つには、私は2回目の接種から6か月が経過したので3回目を申し込むことができると書いてあり、別のには、8か月後から接種可能と書いてありました。政府の方針がころころ変わりましたから、現場は混乱しているに違いありません。多くの感染者の対応もしなければなりませんから、通知内容の矛盾に気づかずに発送してしまったのでしょう。同情を禁じえません。

早速接種予約サイトに入りました。ファイザーとモデルナとどちらか選べることになっていましたが、2月、3月はモデルナの枠しか残っていませんでした。昨年は2回ともファイザーでしたから今回もファイザーがよかったのですが、わがままを言っているとだいぶ先になりそうでしたから、モデルナで妥協しました。尾身さんもファイザー、ファイザー、モデルナみたいだしね。

モデルナってあんまりいい噂を聞きませんから、公表されているデータではファイザーと大差なくても、積極的に選ぼうという気にはなれませんでした。でも、尾身さんが注射を打ってもらいながらクロスでも問題ないと言っていた映像を見て、気持ちが多少動きました。率先垂範って、こういうことを言うのでしょうかね。

でも、安倍さんや菅さんや岸田さんが腕まくりしてモデルナと言っても、モデルナで予約したかなあ。率先垂範になる人とならない人と、分析してみたら面白いかもしれませんね。

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次の段階

2月9日(水)

昨日面接をしたSさんが、指定校推薦の手続きをしに学校へ来ました。私はT大学に進学する意志の最終確認と、仮にも学校が推薦するのですから、それにふさわしい学生であり続けることなどをはじめとする、その他もろもろの注意事項の伝達をしました。Sさんは緊張気味に耳を傾けていました。

ここ何年か、指定校推薦で進学を決めた学生が、合格後にそれにふさわしくない行動に走る例が出ています。この制度は単なるすべり止めや他大学に落ちた場合の保険などではありません。また、ある特定の学生個人を利するために存在しているのでもありません。大学側が学生確保を図り、こちらがそれに乗っかっているわけでもありません。真に勉強する意志と能力のある学生を、その意志と能力を受け止めてくれる大学に送り込むための精度です。大学とKCPとの間の信頼関係に基づいて成り立っているのです。

この信頼関係にひびを入れるような振る舞いをしないようにと何本も釘を刺しておくというのが、指定校推薦における私の役どころです。指定校推薦の誓約書に書かれていることをすべて守ってくれたら、全教職員が心から応援したくなること疑いありません。いや、周囲の学生だって、“SさんにはT大学でいい勉強をしてほしい”と思うことでしょう。

指定校推薦の出願書類などを受け取り、作成方法の説明を受け、Sさんは帰って行きました。出願を済ませたら、今度はT大学での入試面接の練習も始めなければなりません。Sさんの思いがT大学の先生方に伝わるように、先生方の心をつかめるように、指導していきます。

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