採点デー

6月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。私の担当は、読解3クラス分です。1クラスは最上級クラスで、私が作った問題ですから、自作自演みたいなところがあります。残り2クラスは、今学期木曜日に入っていたレベル3です。こちらはO先生が作成された模範解答と採点基準に則って採点しなければなりません。

レベル3だと、答えの型を重視します。例えば、「なぜ~です(ます)か」「~はどうしてですか」など、理由を聞く問題には「~から(です)」と答えることになっています。「なぜ外国人観光客が増えているのですか」に対しては、「円安が進んでいるからです」と答えます。「円安の進行」ではマイナス2点です。

ところが、授業でやっているにもかかわらず、「円安の進行」タイプの答えが多いです。「円安が進んでいるからです」と答えた学生は、クラスの上位者ばかりでした。中位以下の学生は、テスト問題を見ると、心の余裕がなくなってしまうのでしょう。

それから、問題文から延々と抜き出した答えも困ったものです。解答欄が1行しかないのに、細かい字で3行分ぐらい書く学生が多くて、目が痛くなりました。自分のクラスなら“私が読めない答えは全部×”と宣言してしまうところですが、そんなわがままは許されません。目薬を差しながら採点しました。これも、上位者は必要なところを要領よくまとめています。

最上級クラスのテストは、授業内で考えたことや議論したことを中心に出題しました。ですから、自由解答みたいな問題がいくつかありました。読解の日に休みがちだったCさんはほぼ白紙、いつも真剣に聞いていたAさんやYさんはほぼ完答。期末テストは日本語力を判定するテストではなく、勉強したことを確認するテストです。ですから、模範解答はあるようなないような、上述の自作自演とはそういう意味です。

明日は、選択授業の小論文の採点をします。

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心配事

6月19日(木)

期末テストがありました。中間テストと同様に、レベル1の会話の期末テストもありました。学生にプレッシャーをかけるためでしょうか、期末テストは自分のクラスではないクラスの会話テストを担当しました。

テストですから、漫然とおしゃべりを続けるだけではすみません。今学期、特に後半に習った文型が使えるかどうかを、会話をしながらチェックしていかなければなりませんから、教師の方も緊張します。学生たちには習った文型を使って話すようにと伝えてありますから、こちらは話すきっかけを与えてあげます。

しかし、みんなそのきっかけを活かしてくれないんですねえ。「明日から休みですねえ。何をしますか」「明日、帰国します」「そうですか。国で何をしますか」「友達に会います。一緒に食事します。買い物します」といったやり取りになってしまいます。この会話、確かにコミュニケーションは成り立っています。使われている表現は、中間テストの時と変わりません。「友達に会って、一緒に食事したり買い物したりしようと思っています」というぐらいの発話を期待していたのですが、それができたのはわずかに1名でした。その学生はレベル1から3に上がろうとしていますから、できて当然です。いや、そのくらいできなかったら、レベル3は務まりません。

自分のクラスの学生ではない学生が相手でしたが、自分のクラスはどうだったのだろうと気になりました。昨日のクラスは楽しそうに会話練習をしていましたが、こういう形で聞かれた時に昨日勉強した表現がすっと出てくるでしょうか。とても心配です。

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大掃除

6月18日(水)

期末テストの前日、最後の授業日の先生は、その学期の大掃除をします。未返却のテストや宿題があったらそれを返して、必要ならばフィードバックもします。そのレベルで勉強することになっている授業内容をすべて終わらせます。学生から質問があったら、何でも答えます。「明日答えます」は許されません。学期休み中の注意事項を伝えるのを忘れてはいけません。

私のクラス(レベル1)は進度に余裕がありましたから、勉強したばかりの表現の応用として、レベル2でこんな言い方を勉強するよという、予告編みたいなことをしました。子の予告編がすんなりわかり、それに興味を示すような学生は、問題なく進級できます。教師の話を聞きとるだけで精一杯という学生はボーダーライン上です。どうにか上がれるでしょうが、レベル2で苦労することは想像に難くありません。

来学期の展望の一環として、7月に予定されているコトバデーの予告をしました。レベル1ですから、去年参加した学生はいません。アフレコの発表作を見せて、雰囲気を感じ取ってもらいました。そして、去年初級の学生が挑戦したアニメで実際にアフレコをしてもらいました。みんなセリフが速すぎると言いましたから、セリフのスピードを半分にしました。さすがにこれは間延びし過ぎて、かえってつまらなそうでした。

それでも、興味は持ってもらえました。明日の期末テストの後、2週間少々の学期休みをはさみ、新学期を迎えます。そうしたら、あっという間にコトバデーです。ここで種をまいておくことには、大いに意味があります。

種をまくと言えば、今学期受け持ったレベル1のクラス2つで、しっかり種をまきました。今年度の後半から来年度にかけて、中級か上級で実りが味わえると信じています。「今度はレベル4ぐらいの教室で会いたいですね」と、学生に別れを告げました。

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見失う

6月17日(火)

選択授業が終わって廊下に出ると、Sさんがいました。「先生、相談したいことがあるんです」「はい、いいですよ。どんなことですか」「私、何をしたらいいですか」。ちょっと穏やかな話ではありません。

「今度のEJUでいい点を取ろうと思って、一生懸命勉強してきました。でも、日曜日にEJUが終わってから何をしていいかわからなくなっちゃって…」「Sさんは、大学、どこに行きたいの?」「A大学です。でも、行けるだけの点が取れたかどうか、自信がないんです」。

行けると思ってA大学の独自試験に向けた勉強をするのが常道なのですが、そういう気が起きなのでしょう。だったら、最低どこに行きたいか、そこをしっかり押さえることだと思います。一番いけないのは、何の目標もなく、来月の半ば過ぎに今回のEJUの結果が出るまでだらだらと過ごすことです。SさんならA大学も決して夢ではありませんから、準備を進めていってもらいたいです。

毎年、この時期、燃え尽き症候群みたいな学生が出てきます。本物の燃え尽き症候群なら志望校に入った後ですが、こちらはそのはるか手前です。この先いくつも山や谷を越えなければならないのに、やる気を失ってしまっては話になりません。

幸い、SさんはJLPTを受験します。Sさんの力なら、N1合格は間違いありません。だから、いかに高い点数で合格するかにかけてもらいたいです。国際的外国語学習の基準のCEFRでC1とみなされる142点は取ってもらいたいです。

さあ、頭を切り替えましょう。

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楽しい授業の後で

6月16日(月)

月曜日のレベル1のクラスも、ついに最終回。楽しく盛り上がって終わりたいところですが、このくらす、進度が若干遅れ気味ですから、少しでも追いつくようにガンガン進めていかなければなりません。そういう時には、教科書をベターッとやっていくのではなく、学生が上のレベルになってからもなかなか使えるようにならない項目に力を入れます。いつの間にか身についていくような表現は、サラッと扱います。

サラッと扱うにしても、学生にとっては勉強すべき、覚えるべき事柄がたくさんあることには変わりありません。普通に教えていては頭の中に残りませんから、インパクトを強くし、印象付けることを考えます。体を動かしたり画像や動画を見せたりいつもとは違うクラスメートと話させたり、こちらも精いっぱい頭を使います。

レベル1も最後のほうになると、結構しゃべれるようになります。そうなると、教師もついうれしくなって、予定外の行動に出てしまうこともあります。その期待に応えて、こちらが用意した応用タスクをうまくこなしてくれたり、こちらの予想以上の反応を示してくれたりすると、うっかり調子に乗ってさらに余計なことまでしてしまうこともあります。でも、進度を稼ぐことが本日の第一使命ですから、そこは我慢しなければ。

という感じで、最後の授業も無事に終わりました。“よかった、よかった”といきたいところですが、授業後に先週のテストの再試を受ける学生がクラスの半分ぐらいいました。木曜日が期末テストですから、受けられる日が限られています。再試者が1人か2人なら、その場でフィードバックするのですが、これだけの人数となるとそういうわけにもいきません。全員分の答案を職員室に持って帰り、じっくり採点しました。

ここで頭の痛いことが。再試者の1/3以上が不合格なのです。授業中に私と一緒に調子に乗っていた学生も含まれています。授業、ちょっと軽すぎたかな。でも、勉強していないことも明らかです。先週のテストでは同じぐらいの点だった学生が90点以上で合格しているのですから、勉強不足と断じざるを得ません。

3日後が期末テストという時期に及んでこんなことでは、進級が危ういです。私たちこのクラスの教師にも責任の一端はありますが、学生自身が勉強しないことには、今後大きく伸びていく目はないでしょう。

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しっかりやれよ

6月13日(金)

EJU前最後の授業は、最上級クラスでした。昨日までEJUの勉強に集中すると言って休んでいたZさんも来ています。確かに、KCPの通常のクラス授業ではEJU対策に特化した勉強はあまりしません。数学みたいな日本語以外の科目は、日本語プラスで扱うだけです。だから、うちで1人で勉強した方が効率的だという考えも成り立ちます。しかし、実際には、そう言って休んだ学生がEJUで素晴らしい点数を取ったかというと、わざわざ学校を休まなくても取れたよねという程度の点数しか取っていません。

だから、毎日学校へ来いとそういう学生に言ってみたところで、行状が改まる可能性は低いです。とはいえ、根を詰めすぎるのはよくないです。気散じも必要です。学校はその気散じで十分です。教室で友達と軽口をたたきあうだけで視界が広がることだってあります。ZさんがEJU直前の日に来たということは、まだ脈があります。授業中の顔つきを見ている限り、受験の無限ループに陥ってはいなさそうでした。

Zさん以外のEJU受験予定の学生もみんな来ましたから、このクラスの学生たちは、周りが見えなくなっているおそれは低そうです。いや、遅刻してきたHさんが心配です。もともと遅刻の常習犯のHさん、今週になってもやらかし続けているということは、Zさんとは逆に、緊張感ゼロかもしれません。この調子で明後日も遅刻したら、試験が受けられなくなってしまうかもしれません。

この期に及んだら、私にできることは祈ることだけです。「先生、さようなら」と言って帰宅するKさん、Jさん、Sさんたちに、心の中で「満足のいく成績が取れますように」と声をかけ、学問の神様に向かって手を合わせ頭を垂れました。

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名無し点無し

6月12日(木)

数日前に、先月行われたEJUの模擬試験の結果が届きました。それによると、初級のAさんが校内でトップを争う成績を挙げていました。こんな知られざる大天才がいたんだと驚いた私たちは、Aさんから事情を聞きました。どんな勉強をすれば初級でこんなに素晴らしい点が取れるかなど、他の学生にも照会できそうな情報が得られるのではないかという期待も込めていました。

ところが、意外な結末になりました。何と、Aさんは模擬試験を受けていないというではありませんか。じゃあ、この素晴らしい成績は。いったい誰のものなのでしょう。私たちの力だけでは調べきれませんから、この模擬試験を実施したところにも状況を説明し、どうなっているのか調べてもらいました。

その結果がようやくわかりました。学生たちが答えを記入した解答用紙まで調べたところ、受験番号がAさんの次のBさんが、解答用紙の受験番号欄に、1番違いのAさんの受験番号をマークしていたことがわかりました。間違えた先の受験生(Aさん)がたまたま欠席だったため、Bさんの成績がそのままAさんの成績として登録されてしまったのです。Bさんは上級の学生ですから、トップ争いに加わってもおかしくはありません。

受験生の答案用紙が、受験生の名前ではなく受験番号で管理されていたことから生じた事件でした。それはともかくとして、正しい受験番号を解答用紙のしかるべきところに記入するなどというのは、基本以前の問題です。明日はEJU前最後の授業日ですから、受験にあたっての注意をするつもりです。受験番号を間違えるなどというのから手取り足取りやっていくとなると、どれだけ注意事項を並べればいいのでしょう。

一番不思議なのは、Bさんが今まで何も訴えてきていないことです。同じクラスの学生に、自分も受けた模試の結果が渡っているのを見て、何も思わなかったのでしょうか。こちらのほうが、より根が深いかもしれません。

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日本語スルー

6月11日(水)

初級クラスで、昨日の宿題を集めました。教科書の内容に合わせたテーマについて、教科書で勉強した文法や語彙を使って10行程度の文章を書いてくるというものでした。出席者全員が提出しましたから、「このクラスはみんないい学生ですね」なんてほめながら学生を調子に乗せ、授業も順調に終わりました。

職員室に戻って内容をチェックしてみると、大変なことになっていました。半数近くの学生が、テーマを無視していたのです。主に成績中位から下位グループの学生たちでした。日本語で書かれていたテーマが読み取れなかったに違いありません。その下に学生たちの母語で書いてあった、“教科書で勉強した文法や語彙を使って…”というあたりは守られていました。

テーマの方が、注意書きよりも3倍ぐらい大きな字だったのですが、レベル1の学生たちには日本語よりも母語に視線が吸い取られてしまったのです。レベル1とはいえ、3か月近く日本語を勉強してきていますから、そこそこ日本語に慣れてきているはずです。いや、授業中には多少複雑な指示も聞き取ってその通りに動けるようになりました。それでもこういうことが起きてしまうのです。

母語の力って強いんですね。そして、その強力な母語の力を振り払って日本語に注意を向けられた学生とそれができなかった学生の境界線が、ちょうどこのクラスのど真ん中を走っていたことにも驚かされました。こういうのをさらに追究していくと、第二言語習得過程に関して興味深いデータが得られるのかもしれませんが、それは私の手に余る仕事です。

的外れな文章を書いてきた学生には、明日の先生から書き直しを命じてもらうことにしました。今度は、こういう行き違いが生じないような形で。

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防犯講習

6月10日(火)

防犯講習がありました。警察の方がいらっしゃって、電話やメールによる詐欺など留学生が巻き込まれやすい事件や、自転車の傘差し運転など留学生が犯しやすい法令違反について、わかりやすく説明してくださいました。私たち教職員にとっても、学生の生活指導のポイントを学ぶという意味で、有意義な講習です。

しかし、残念なことに、過去にはこういう講習を受けたばかりなのに詐欺に引っかかってしまった学生もいました。上級以外は学生の母語の通訳を入れるのですが、徹底するのは難しいです。また、他人事だと思って聞いている学生も少なくないのでしょう。

私のクラスの学生には、そんなことがないように、クラスに戻ってから、KCPの学生が巻き込まれた事件、犯した失敗などを付け加えて話しました。真剣に聞いていたようですが、少しは心に響いたでしょうか。こういうのに遭うと、事件にしても法令違反にしても、留学を続ける気力がそがれるでしょう。学生が嫌な思い出で留学を終えるのは、当の本人はもちろんのこと、私たちも心が痛みます。

でも、何より憎むべきは、人をだまそうと、悪意の電話をかけ、メールを送り付ける輩です。同国人をターゲットにする場合が多いというではありませんか。確かに、現代社会を生き抜くには生き馬の目を抜くことも必要でしょうが、弱い立場の留学生の目ではなく、強者の目を抜いてこそ、本当の勝者なのではないでしょうか。

KCPの名で留学生ビザを発給してもらうということは、学生の生活全般に責任を持つということでもあります。そういう筋の延長線上に、防犯講習は行われるのです。

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進学フェア

6月9日(月)

12時少し前に私が6階の会場であいさつするころには、すでに数名の初級の学生が講堂の入口で待ち構えていました。私が教えているレベル1のクラスのSさんの顔もありました。

定刻12時になると、Sさんたちが狙っていた大学のブースに向かって行きました。いよいよ大学・大学院進学フェアの開始です。レベル1のクラスでも下位のTさんの姿も見えました。Sさんはともかく、Tさんは日本語で大学の担当者とやり取りできるとは思えないのですが、4つか5つの大学の話を聞いていました。盛んにうなずいていましたから、少しは話がわかったのでしょう。日本語力よりもコミュニケーション能力で勝負といったところでしょうか。Tさんの意外な側面を垣間見ました。

12:15に午前の授業が終わるや、Hさんが会場に飛び込み、一目散に第一志望の国立大学の元へ。その後、予定外の大学の話も聞いて、満足気に帰っていきました。Cさんも第一志望の大学のブースで長い時間話を聞いていました。日本語プラスの理科に出ている学生たちは、先週の授業で話を聞くべき大学を指示しておいたので、その大学の話に耳を傾けていました。

今度の日曜日が今年1回目のEJUですから、進学に対する具体像が描けないというのが、学生たちの本音でしょう。でも、そういう時期から動き回って、いろいろな大学の話を聞いたり実際に見に行ったりしていくと、秋口の受験シーズン本番で慌てふためくこともありません。“まだまだ”なんて思っている学生が、結局泣きを見るのです。

さて、KCPのみなさんは、好スタートを切れたかな…。

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