響かない

2月27日(金)

卒業認定試験がありました。卒業認定試験とは、各卒業予定者が、KCPが「卒業証書」を授与するに値するレベルにまで達しているかどうかを見る試験です。最後の学期まできちんと勉強した学生が点を取れるような問題を出題します。私なんか、授業で使った補助プリントの問題をそのまま出していますから、きちんと授業に出ていた学生にとっては歯ごたえがないくらいだったのではないかと思っています。

試験監督から戻ってくると、Kさんが叱られていました。すぐにまた出て行かなければならなかったので耳に入ってきた断片的なやり取りしか知りませんが、どうやらKさんは試験時間の最中にスマホを見たため捕まったようです。そして、Kさんは「確かにスマホは見たけれども、スマホで何か調べてテストの答えを書いたわけではないからカンニングではない」と主張しているようでした。

日本では、試験時間中にスマホを手にしただけでカンニングとみなされるのが常識です。JLPTやEJUではスマホの取り締まりが強化されています。私も、試験監督に入った時には、「ケータイ・スマホはスイッチを切って鞄の中へ」と板書し、口頭でも注意します(実際に鞄に入れる学生は少ないですが)。そういう世の中の流れを知らなかったのか、卒業認定試験を甘く見ていたのか、それとも毎度おなじみのスマホ中毒患者なのか、その辺のところはどうなのかよくわかりません。

あくまで自分は悪いことをしていないと言い張るKさんに、説教していたT先生も苦労なさっているようでした。言葉が学生に響かないんですねえ。

午後は日本語プラス生物とレベル1の代講。このレベル1の学生たちがKさんみたいに育っていかないようにと、思わず気合が入ってしまいました。

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自信につながれ

2月26日(木)

Lさんが漢字復習テストで初めて満点の10点を取りました。新入生のLさんは、学期の最初、自分は漢字が全然書けないのでずっと進級できないかもしれないと、授業後に1時間近く相談に乗ってあげた学生です。

確かに、学期が始まった直後の漢字復習テストは、2点とか3点とか、0点を免れるのがやっとという点数でした。苦手意識が先立ってしまい、書くのも読むのも投げているような状態でした。

相談に来た時、“まず、読みで点を稼ぎなさい”とアドバイスしました。そして、読み問題の漢字が書き問題で出ることがあるから、問題文の漢字をそのまま写して点を取れば、合格点(6点)も夢ではないという話をしました。

これがずるい点の取り方のように見えるかもしれませんが、「時間」の“間”は、「コンビニとレストランのあいだ」の“あいだ”にも使うというのは、立派な漢字の知識です。それを元に点を取ったとしても、ズルではなく漢字力でもぎ取った点だと思います。漢字に対する勘を養うことにつながっていくのです。

そうやって合格点の日がだんだん増えていき、そして、ついに、満点を取る日を迎えたというわけです。中間テストは毎日の漢字復習テストより試験範囲がはるかに広いので合格点は取れませんでしたが、箸にも棒にも掛からぬほどではありませんでした。期末テストで挽回可能な範囲の不合格点でした。

記念すべき10点のテストは、明日Lさんに返されます。それを見て自信をつけ、期末テストでは堂々の合格点を取ってほしいです。

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雨中行軍

2月25日(水)

毎年、2月25日は、国立大学の留学生入試の独自試験がいちばん集中する日です。最上級クラスの学生も何名かが受験に行っています。Mさんは受験勉強に集中したいと、先週末ぐらいから学校を休んでいます。この期に及んで何かしてもどうにかなるもんじゃないよと言ってやりたいところですが、そんなことを言っても聞く耳を持たないでしょうし、変に気持ちが揺らいでしまったら逆効果ですから、何も言いませんでした。きちんと私に連絡して来たんですから、ちゃんと周りは見えているのでしょう。

Hさんはすでに国立大学1校、私立大学1校に受かっています。第1志望の大学は記念受験的な面もありますが、それなりに準備もしてきました。誰もが行きたい大学を狙っているのですから、面接試験でも厳しい質問が飛んでくるのでしょう。でも、気楽に勝負できるという面からは、“もしかすると”という期待を抱きたくなります。

Cさんも1校合格を勝ち得ていますからのびのびと受験できるはずですが、今学期に入ってからはかなり気合を入れて受験準備をしてきました。難関校ばかり受験してきましたが、昨シーズンの受験のリベンジでもありますから、簡単に引き下がるわけにはいきません。昨日の帰り際、私に握手を求めてきました。私は天神様でも大黒様でもパワースポットでもありませんが、精一杯力を込めて握り返しました。

結果が出るのは江ノ島小旅行の頃でしょうか、もう少し後でしょうか。正夢になれと祈りつつ、しばらく夢を見させてもらいます。

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採点結果

2月25日(水)

中間テストの採点をしました。私の担当は、中級クラスの「表現」です。文法みたいなものです。

選択式の、記号で答える問題はまあまあ答えられるのですが、自分で考えて、文を作ったり穴埋めをしたりする問題となると、減点減点減点で、あっという間に点がなくなってしまいます。今学期勉強した表現もさることながら、今までに勉強したはずの事柄も間違えちゃうんですねえ。自動詞と他動詞が反対だったり、助詞を間違えたり、形式名詞を入れなきゃいけないのに抜かしたり、濁点や促音を落としたり、“忙しい気味”なんてやっちゃったり(気持ちはよくわかりますが…)、もっともっともっと正確性を追求してもらいたいです。

それから、文をきちんと読んでいないんですねえ。文法表現の“かけら”に反応して文を作ってしまうので、文全体を見渡すと意味が取れなくなっている答えが目立ちました。学生たちの辞書には、「見直す」という単語はないのでしょうか。

学生たちの多くは、自分はそこそこできたと思っていることでしょう。しかし、採点結果を見たら、茫然自失に陥るに違いありません。自分の頭に残っているものがいかにあやふやでいい加減なものか思い知らされて、血の気が引いてしまった学生の顔が手に取るようにわかります。

でも、これは、私たちの教え方、授業の進め方に何かが足りなかったことの証左にほかなりません。こちらも学生の間違え方を十二分に研究して、これからに備えて行かねばなりません。

今週末は、卒業認定試験があります。こちらの試験結果については、“これから”がありません。

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仲良し

2月20日(金)

TさんとGさんは仲良しで、教室ではいつも隣に座ります。ペアワークも2人でやります。いつも同じペアになるのは好ましくない点もありますから、この2人が組まないようにあえてクラス全体をシャッフルし、席の離れた学生と組ませることもあります。

授業中に仲がいいのは構わないのですが、この2人は欠席する時も調子を合わせているようです。本人たちに欠席理由を聞いてもそんなことは言いませんが、よく同じ日に休みますから、そんなことを疑っています。2人とも進学先が決まり、卒業式までの学生ですから、授業から何かを得ようという気持ちも薄れているように見受けられます。“楽しい勉強”に傾き過ぎているきらいがあります。

私たちは、進学してから困らないだけの日本語力をつけてもらおうと思い、授業や教材や教室活動などを考えています。そういうことをはっきり言うこともあります。理解してそういう方向に動いてくれる学生もいますが、左の耳から右の耳へ抜けていく学生もいます。TさんとGさんは、残念ながら、後者の典型です。KCPの教室の中ではそこそこできますが、進学先の教室ではどうでしょう。大きな大きな疑問符をつけざるを得ません。

卒業式までカウントダウンに入ったこの期に及んでは、もはや打つ手はほとんどありません。“合格=その学校の授業が受けられるだけの日本語力が保証された”と思い込んでいます。そう思い込んでしまった学生の信念を変えさせるのは、至難の業なんていうものではありません。2人は今から勉強しても手遅れかもしれませんが、そういうマインドだけは持ってもらいたいです。

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乗れるかな

2月19日(木)

今学期の学校行事は小旅行です。江ノ島方面へ行きます。江ノ島なんて、小学校の遠足とか、そのぐらい以来だと思います。少なくとも、社会人になってからは行っていませんねえ。だから、実際に行ったら、私も学生と大して変わらず物珍し気にあちこち見て回ったりちょっかいを出したりすることになるでしょう。

個人的には江ノ島の地形を詳しく見て回りたいです。朝から夕方まで、島の隅から隅までじっくり観察したいです。しかし、クラスの学生を引率することが第一の任務ですから、その気持ちは抑えて江島神社へお参りに行ったり仲見世通りを歩いたりすることになるのでしょう。

地学的興味を封印するとなると、江ノ電に乗って鎌倉方面に抜けるのが常道でしょう。問題は、江ノ電にスムーズに乗れるかです。週末は言うに及ばず、平日の日中でも観光客でだいぶにぎわっていると言いますから、KCPの学生3クラス分ぐらいが一度に乗ったら車内は立錐の余地もないほどになってしまうかもしれません。

そうなった場合、私は海沿いの134号線を歩いて鎌倉まで行くのも大歓迎ですが、学生たちは断固NO!でしょう。電車を1本か2本待つことになるのでしょうか。となると、江ノ電は14分おきの運転ですから、30分ぐらいあっという間に過ぎてしまいます。ちょっと頭の痛いところです。

学生たちはイマイチピンと来ていないような顔をしていました。江ノ島は、かつてのバス旅行の富士急ハイランドみたいに、だれもがかなりの程度共通したイメージが持てる場所ではありません。こちらが具体的に何物かを思い描かないと、学生たちを引っ張り切れません。研究しなくちゃ。

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性懲りもなく

2月18日(水)

今学期も、後半戦に突入しました。初日は、ぎりぎり遅刻2名、大遅刻1名、欠席2名。最初の頃は発言が少なく雰囲気が重かったのですが、授業が進むにつれて次第に口が滑らかになってきました。最後は質問が多く出て、かろうじて予定通りのところまで進められたというくらい、元気になりました。

いい気持ちで職員室に戻ると、3名の学生が私を待っていました。進学相談や面接練習なら気合も入りますが、この3名は学校周辺のよそ様の駐車場でたばこを吸っていたのを摘発され、説教を待っていたのです。喫煙所以外、殊に他人の敷地は、たとえ灰皿が置かれていても、たばこを吸いに行ってはいけないと指導し続けています。しかし、こういう不届き者が後を絶ちません。

なぜたばこを吸ってはいけない場所でたばこを吸ったのかと聞くと、喫煙所が遠いからだということでした。10時半の休み時間に喫煙所まで行くと、ゆっくりたばこを吸っている暇がありません。往復で10分ぐらいかかりますからね。だから、学生たちは手近なところで間に合わせようとするのです。

なぜたばこを吸うのか――たばこを吸うと元気になるそうです。頭がすっきりすると言いたいのでしょうか。中級以下の学生たちですから、こんな表現が精一杯です。夜更かしやハードなアルバイトで寝不足になり授業中眠くなったのなら、その解消のためにたばこを吸いに不法侵入された駐車場の側こそ、いい迷惑です。

3名にしたら、たぶん見つからないだろと踏んで近場でのんびりたばこを吸っていたら、運悪くKCPの教職員に見つかってしまったといったところでしょう。3名以外にも喫煙者がいて、蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったと捕まえた教職員は言っています。こういう学生たちに、よその敷地でたばこを吸ってはいけないことをわからせるにはどうしたらいいでしょう。

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挑戦は続く

2月17日(火)

先週のこの稿に書いたように、上級の選択授業「漢字検定に挑戦」の中間テストを行いました。予定通りの部首の問題と、漢字熟語の構成の問題を出しました。漢字熟語の構成とは、例えば”新年“は、“新”が“年”を修飾しているとか、“貯金”は“金”が“貯”の目的語になっているとか、“建築”は似たような意味の漢字でできているとか、そういったことを答えてもらう問題です。どちらも選択式にし、漢字が書けなくても点が取れるテストにしました。“仏の金原”の面目躍如です。

とはいえ、勉強してきた学生がいい成績になるように、勉強してこなかった学生は点が取れないように、部首の問題は選択肢を増やしました。これが当たったみたいで、勉強してきたと思しき学生はさっさと記号を書き入れ、30分の試験時間に対し10分ほどで終わってしまいました。勉強してこなかった組は、最初は頭をかきむしっていましたが、そのうちおとなしくなりました。あきらめてしまったのでしょうか。

授業後採点してみると、選択式ですから白紙かそれに近い答案はありませんでした。でも、部首の問題は差が付きましたねえ。満点が数名いた一方で、まぐれ当たりが何問かという学生も同じくらいいました。しかし、漢語の構成はまぐれ当たり組もちゃんと考えて答えた形跡があり、そこそこの成績が取れていました。その結果、不合格はごくわずかで、“この学生が不合格なのは当然だね”という面々でした。

部首が思ったより出来が良かったのは収穫でした。池袋の池はさんずい、飛球市民の地はつちへん…などと記憶を強化していけば、日本人の高校生並みになれると思います。漢字検定に挑戦のみなさん、ぜひ、挑戦してみてください。

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さえない学生じゃなくて

2月16日(月)

午後、明日の上級選択授業の中間テストの問題を作っていると、ロビーに誰か立っていました。何か用事があるんだけど、どうしたらいいか戸惑っている学生のように見えました。しかし、たまたま事務職員がみな席を外していたので、私が出て行きました。私の目には要領の悪そうな学生に映ったのですが、よくよく顔を見ると、卒業生のCさんではありませんか。思わずずっこけてしまいました。

CさんはM大学に進学し、4年間優秀な成績で通し、大学院にも進みました。大学2年生の時から日本語教育能力検定試験を受け、4年生の時に合格しました。外国人留学生が合格するのは、稀有のことです。さらに、昨年、登録日本語教員試験にも合格し、その合格証も見せてくれました。現在は都内の日本語学校で専任講師として日本語を教えるとともに、進学指導もしています。明日が春節で、その前後1日ずつが休みなので、こちらに顔を出してくれたとのことでした。

こぼす愚痴の内容も私たちとあまり変わらず、すっかり日本語学校の日本語教師になっていました。いろいろな公務を次から次と任されて、忙しくてたまらないとも言っていました。若手のホープだからこそ、仕事が回ってくるのです。“忙しい奴=有能な奴”という方程式があり、“大事な仕事は忙しい奴に回せ”とも言われています。有能な奴のところに仕事が集まるというこの状況を、“仕事の万有引力の法則”と私は秘かに呼んでいます。

国へ帰る気はないとCさんは言っていますが、国へ帰って日本語学校を立ち上げられるくらいの力はついたんじゃないかなあ。このぐらいいろいろな仕事をさせてもらっているのなら、早晩それだけの実力が身に付くはずです。どんどん鍛えてもらって、将来へと向かう道幅を広げておけばいいと思います。次に会うときは、日本語学校の校長先生でしょうか、経営者でしょうか…。

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朝の欠席届

2月13日(金)

朝、パソコンを立ち上げると、火曜日からずっと休んでいたXさんからメールが来ていました。昨日病院で検査してもらったところ、インフルエンザだと診断されたそうです。他のクラスにもそういう学生が出ています。1週間で患者数が2倍になったとか報じられていましたが、やっぱり流行っているんですね。

インフルエンザということは、出席停止です。学校へ来てはいけないのですから、休んでも欠席にはなりません。Xさんはすでに進学先が決まっていますから入試が受けられなくて進路決定に影響が出るなどということはありません。しかし、これから受験の学生はまだまだいます。国立大学に照準を合わせている学生にとっては、ここからの10日ほどが正念場です。Xさんの最大の仕事は、学校へ来ないことです。ゆっくり休んで、完全に治してから出て来てください。

Xさんは超級の学生ですから、病院へ行って日本語で症状を説明するくらいはできます。しかし、初級の学生にとっては、これは至難の業です。学校では国の言葉が通じる病院を紹介していますが、それでも学生には敷居が高いようです。国から持って来た薬や日本の薬局で買った市販薬を飲んで乗り切ろうとします。普通の風邪ならそれでもどうにかなるかもしれませんが、インフルエンザとなればそれでは非力です。病院へ行かなければインフルエンザの診断もなされず、だから出席停止にもならず、休めば休むほど出席率が下がります。それは困ると無理して出て来られると、学校中にウィルスをまき散らすことにもなりかねず、学校中が迷惑を被ります。

病院へ行きたくないのならせめて予防策を取ろうよ、と言いたいです。というか、折に触れていっています。でも、どこかからか拾ってきちゃうんですよね、学生たちは。私も、うがいと手洗いを励行し、学生たちの足を引っ張らないようにします。

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